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ここが最初のプロローグ

よろしくお願いします。頑張って更新していきます

 いつもと変わらない自宅のマイルームに入ると、ベッドの上に金髪の少女が立っていた。


 その少女とは一度、会社から自宅へ帰宅するまでの道中にある公園で遭遇し、意味深な捨て台詞だけ吐かれて去っていかれた事がある。


 少し息を切らして、何やら焦ってる様子も見て取れる少女は突然俺に告げた。


「死ぬ事を代償に、私が世界リビルドしてやるからお前の人生神ゲーにしてみろ。出来ないなら永遠にこの世界でクソゲーやって生き続けろ。どっちにするんだ?」


 この一言で俺の人生は、まさに敷かれたレールから脱線するかのように道を外す。


 生きていて損しているわけじゃない。


 世界が悪いわけでもない。


 でもこの世界で俺は、自分の人生を素晴らしきものだと言えるのかと問われたら間違いなく首を縦には振らないだろう。


 むしろ縦に振れる人間の方が少ないのではないのか?




 俺は一呼吸入れて頷いた。


 金髪の少女はにっこりと微笑み呪文のような言葉を小さな声で呟き始める。



「勝利の権限を用いて世界の主導権を我の意思により変更する。


 現世界での魂は一度光に戻り次なる世界の誕生まで深い眠りにつけ。


 貴様らの魂は次に繋がることをここに約束しよう。森羅万象全ての根源を変更する。


 常識は次なる世界が新たに設ける。


 また我の目の前に現れた少年の魂を一度ここで捧げる事により次なる世界への我が化身として挑戦させることを命ずる。


 制限は七つ。


 発動は化身が全て決定次第執行する。


 神位シンイ級魔法、リビルド。」




 少女が呟き終えると、俺の視界はテレビの電源を切った後のように黒く何も見えなくなった。






 ーー意識だけはある。



 ここを例えるならば無の世界と言っても過言ではないだろう。


 思考だけは働くが、体を動かそうとしても動いているのかどうかもわからない。


 力を入れているつもりだが実際に入っている感覚は全くない。

 この不思議な状況下で俺は改めて今までの人生を振り返った。






 特に大きな障壁もなく成長し、大学卒業と同時にそこそこ有名な企業に就職。結婚し子供にも恵まれた。



 しかしそもそも俺はクズだった。


 振り返れば他人の人生を背負うほどの器のある人間ではなかったと改めて思う。


 社会人に成り早々に酒、タバコ、ギャンブルにハマり、大好きなゲームに巨額のお金を使った。

 独り身であれば金なんてサラリーマンやってれば最悪死ぬことはない。借金さえ気をつければ特に不便はなかった。


 どこかで守る存在が有れば…つまり結婚さえすれば変わると思っていたが、俺は変わらなかった。


 人は簡単には変わらない。

 辞めようと思っても抑えられない欲。


 中途半端にマトモな会社に勤めている安堵感。


 クソみたいな金遣いを辞めさえすればありきたりな家族のようにちょっと貧乏な生活をすれば普通に戻れる、だから大丈夫だと思い、また欲に負ける。様々な事に理由をつけ欲を優先した。


 借金だけはしなかったし、最低限の生活費は渡していたから家族の生活が貧しいとまではいかなかったが、貯金なんてなかった。


 じゃあ何が問題がある?何が不満なのだ?何が許せない?


 自分の心だ。


 欲との葛藤。

 自己嫌悪の日々。


 他者から見れば全て自業自得。さらに言えばそんな事で…と鼻で笑われる程度の話だろうが、そもそも精神的苦痛ってのは人それぞれ物差しが違う。


 家族の生活を支える為に働く。

 働いた金が自分の欲に使えず苛立つ。

 我慢できず欲に逃げる。

 無くなった金を見て家族への罪悪感。

 無くなった金を稼ぐ為に働きに出る。


 まさに最強のスパイラルだ。




 助けて欲しいと叫びたい。


 自分の精神の弱さであることは間違いない。だからこそ叫べないこの迷宮の迷路みたいな状況の中、俺は何度も人生のやり直しができたらと願った。


 挙げ句の果てには、言い訳と後悔だけをぶら下げて怠惰に生きていく事がある意味で自分らしいとさえ思い込む始末だ。


 クズでクソみたいな人生だと思っている。


 こんな事で?と思うかもしれないが、先程も言ったがそこは各々の物差しなのだ。悩みを客観的に大小設定して考える事は無意味な思考である事は身を染みた。



 結末は全て自分のせいだからこそ余計に苛立つ。



 大好きなゲームでこんな物語の主人公だったらバッドエンドを迎えるのにふさわしいだろう。


 プレイヤーからしたら正にクソゲーそのものだ。


 こうすれば良くなると答えを分かっていながら欲に負けるという状態異常に常に掛かって望んでいない物語を記す哀れな主人公。


 初めてこの金髪の少女に出会った時にも似たようなことを言われた。「お前の代わりにお前の人生を仮に歩めというゲームがあったらそんなクソゲーやりたくないわ」と。


 あの時はクソガキに知ったように口を聞かれ腹を立てたが、振り返ればど正論で反論出来なかったらから苛立ったのだなと反省した。






 ーー



『間も無く執行完了となります。契約に基づき一度貴方の魂を無へ変換。その後改めて魂の欠片を回収し貴方の人格を復元、次の世界へ移行させます。尚、化身の平等性を保つため年齢は統一。17歳と設定。名前は各々元の名を使用。その他次の世界の秩序に関して言えば事前に通達は無し。以上』


 突然暗闇の視界に文字がパソコンで入力したかのように次々現れ、それを機械音声のような声で淡々と語りかけてくる謎の声。



 そして声が聞こえなくなった瞬間、まるで海の奥底に放り込まれたかのように息ができなくなり酸素の供給が止まる。



 苦しく悶えながら徐々に意識が遠のく。



 これは馬鹿でも理解できる。


 俺は今、死ぬ。





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