第12話 『Former Rain Date?』
日曜日、相変わらず日の出と共に起きる。空に雲はない。今日も晴天になりそうだ。
シャワーを浴びる。たまには浴槽にも入りたくなるだろ? と言われても否定する。別に身体を温める為だけならシャワーで十分だ。専門家やらの皆さんは「浴槽に浸かることで身体と心の疲れを落とすことができる」とか言っているが、僕にとって身体の疲れは寝ること、心の疲れは読書と音楽を聴くことで落とせる。汚い、と言われるかもしれないがシャワーでしっかり綺麗にしている為、決して汚いということはない。
シャワーから上がりオーディオのスイッチを入れる。前方後方右方左方からピアノの曲が流れる。髪を乾かしながらピアノの音を聞き分ける。「今のはGだったかな? それともG#か?」などと考えながら音に耳を傾ける。
髪を乾かした後は読書だ。昨日、一昨日読めなかった分今日はたっぷり読んでやる。ピアノはその後だ。昨日久しぶりにたくさん弾いたため左手薬指は少し切れている。右手も指筋肉通というのだろうか、その状態になっていた。だから今日はギター、ピアノは控えめにして読書を楽しむことにした。僕は読み続けると何時間でも読むことが出来る。何冊も可能だ。読書にページ数は関係ない、といわんばかりにページをめくっていく。三時間ほどたっただろうか、本は本日三冊目に入っている。これを読み終えればもう読む本がない。買いに行かねばならない。繰り返し読むのもいいが時間がもったいない、もっと新しい世界を読みたい、そういう気分なのだ。
三冊目の中盤に差し掛かった時、僕の携帯が震えた。これは他人からだ、迷惑メールとかの為に音はなしにしている。また迷惑メールだと思い携帯を開く、新着メッセージ一件、とりあえずメールのアドレスを見る、k_ori.forex@……誰だろうか? メールを開く。
「おはよ~☆ショーゴはもう起きてるよね? 起きてたら、いや寝ててもここに掛けて~ヨロシク~顔文字010-****-****」
……かおりか? この命令さは。とりあえず掛けてみる。受話器音が耳に聞こえる。そして彼女は出た。
「もしもーし、ショーゴ? おきてるー?」
やはりかおりだ、朝なのにテンションが高い。
「この番号は現在使われておりません、番号をご確認のうえ……」
「なんで掛けてきた方の番号がないのよ! さては寝ぼけてるわね」
なかなかのツッコミだ。
「いつも通り太陽と共に起きてるよ。ところで何の用?」
「朝から冷たいのねショーゴは」
「用件は?」
手短に話を進めよう。本の続きが気になる。
「十二時にいつもの場所に来て! 行きたいところあるの」
「はい? 今なんて?」
「十二時に来い」
口調が怖い。
「行きたい場所なら行けばいいじゃん? 自転車あるんでしょ?」
「ショーゴと行きたいの」
なにか変なことになりそうだ、とは言って断ることは出来ないだろう。ついでに本も買えばいい。
「わかった、わかった。十二時ね。じゃ忙しいから後で」
「ちょっ……待って、人の話を……」
一方的に電話を切った。十二時まであと一時間ちょっと。本を全部読んだら出かけよう。そうしないと気分的になにか悪い。僕はやや早いペースで本を読み終えた。時間は十一時四十分、たまには早く着いてやろう。どうせ部屋から監視されていることだし。
適当で暑くない私服をチョイスし家を出る。家の鍵は一応閉める。相棒にまたがりかおりの家方面へハンドルを切る。