初めての朝
「ちょっと話し過ぎたな。もう遅いから今日はここまでにして寝よう」
そう言われてふと時計を見ると午前0時になろうとしていた。
「そうだね、それじゃあおやすみ」
「ああ。明日ちゃんと起きろよ」
軽く会話を交わすと僕はベッドに潜り込んで眠りについた。
「おーい比嘉、そろそろ起きろよ。もう少ししたら朝食の時間になるぞ」
と門矢くんに言われて起きると時計は午前6時になろうとしていた。
「あぇ?もうそんな時間なの?」
「……お前思い切り寝ぼけてんな」
「うん」
軽く挨拶を交わし、身支度を済ませた後僕たちは食堂に向かった。
食堂の中はかなり広く、三つほどの大きな長机と長椅子が置いてあり、窓にはカラフルなガラスによって描かれた大きな絵のようなものがはまっていた。
「へえ、ここの食堂ってこんな感じなんだ」
「そうだぜ。俺もきてすぐの時はすげーびっくりした」
「あのガラスでできた絵みたいなのは何?」
「あれはステンドグラスって言うんだったっけな?古い西洋の建物に使われてるって聞いたな」
「そうなんだ」
とても綺麗だな、と思っていると
「さっさと飯食っちまおう。もう少し話す事があるから」
「うん、分かった」
門矢くんが何を話そうとしているのかは分からなかったけれど、僕は門矢くんに急かされるまま急いで朝食を食べた。
朝食を食べた後は自由時間と言われたので僕は門矢くんに連れられて裏庭に向かった。
「ここは皆あんまり来ないから1人で本を読んだりゆっくりするにはうってつけなんだよな」
そう言うと一本の木の木陰に歩いて行った。
(そう言えば、門矢くんに初めて会ったのもこの木の下だったな)
そんな事を考えていると僕の方を振り返って
「お前はどうしてこの孤児院が出来たと思う?」
と聞かれた。
「え?どうしてって、確か家族を失った子供を保護するためじゃなかったっけ?」
「ああ」
「ならどうしてそんな事聞くの?」
「俺にはどうしてもそれだけには思えないんだ。
昨日話しただろ、あの記憶の話。
あれがあったからどうしてもそれ以外にも何か目的があるんじゃ無いかって思ってな」
「でもここの人は皆いい人達だよ?流石に考え過ぎじゃない?
確かにあの記憶の話はかなり気にはなるけどさ」
「俺もあの記憶の話みたいなのがあってから疑うようにはなったんだ。
ただ、あれが一度だけならあんまり……まあ気にかからないのかって聞かれたらそんな訳は無いけどさ」
「え?ちょっと待って、あれって僕に話してくれたあの事だよね?
あれは一回しか起きてないんじゃないの?」
「いいや。神代さんから聞いた話だと、それに似たような事がそれを含めて三回あったらしい。
俺は一度も目の当たりにした事はないけどな」
近々、新しい読み切りの小説を書こうと思っているので、また上がったら報告致します