僕が記憶を取り戻せば……
話を聞き少し笑ってひと段落ついた時に、門矢くんが急に改まった口調で
「……なあ比嘉、またさっきの話に戻るけど……今までした話よりもかなり重い話になる。
周りが信用出来なくなるくらい。それでもお前はここからの話を聞きたいか?」
そう言われて僕は少し息を呑んだ。
(ここまで念押しをして話す事ってなんだろう)
そして僕は少し考えたが、何故かとてもこの話を聞かなければいけない気がして、静かに首を縦に振った。
「そっか。まあその表情からして決意はできてるっぽいな。じゃあ話すぞ」
そして門矢くんはまたぽつぽつと語り始めた。
「これはお前が来るよりもかなり前、俺もまだここに居なかった時の話なんだ。
その日もいつも通りみんな遊んだりして過ごして……わかりやすく言えば何の変哲もない1日だった。
ただ、その日の夜遅くに急にある1人の男の子が部屋で大声で泣き叫んでいたらしい。
しかも表情からしてかなり錯乱していたらしくて、他の部屋の子達も慌てて見に行った時には驚いたらしい。
その子が暴れたせいか部屋の中がかなり酷く荒れていたらしい。
家具は殆どがボロボロで壁紙も破られてて、それだけでもかなり驚くんだけど、1番驚いたのはその子自身だった。
顔は泣いていたんだけど、何かが悲しくて泣いたと言うより何かに怯えたような表情を浮かべていた。
しかも自分で引っ掻いたのか、全身に酷い傷があって、血が滲んでいたらしい。
それに、強く引っ掻いたせいで手の爪も剥げていたって。
ただその子はそんな事はまるで気づいて無いみたいに怯えていたって聞いた」
門矢くんはそこまでひとしきり話して、少しため息をついた。
「門矢くん大丈夫?無理ならもう喋らなくてもいいよ」
「いや、続けよう」
門矢くんの表情は少し優れなかったけれど、まだ大丈夫と言って再び話し始めた。
「……それで子供達があまりにも騒ぐから職員が何人か来たんだけど、その光景を見て唖然としたんだって。
中にはショックを受けてただ立ち尽くしていた人もいたって聞いた。
結局その錯乱してた子は、弧門さんが何とか抑えて騒動は収束したらしい」
「そうなんだ。
……え?でもちょっと待って、確かにその話は怖いけどその話と記憶を取り戻す話とどう関係してるの?」
「それに関してなんだが、神代さん曰くこの錯乱した原因と記憶の2つが実はかなり密接に繋がっているらしい」
「え?じゃあその記憶との関係って……」