僕の新しい始まりのために
白いカラスがどこかに飛び立ってしばらくあっけにとられていると、
「おい比嘉、どうしたぼーっとして」
と聞いてきた。
僕はカラスから聞こえたあの声の事を伝えようか迷ったけれど、伝えるのは結局やめた。
「ううん、急にカラスが来てびっくりしただけ」
「ああ確かにあれは驚いたな。それでお前は大丈夫か?怪我とかはしてないか?」
「うん、僕は何ともないよ。それよりさっき言ってた……」
そうさっき話された記憶のことについてもっと聞こうとした時、
「あ、もうこんな時間だ。これから夕食の時間だからもう戻った方がいい。……もしさっき言った記憶の話が気になるなら、部屋に戻ってから詳しく教えるから」
そう言って門矢くんは歩き始めたので、僕も後ろからついて行った。
夕食の時間に僕は、ここのみんなに顔や名前を覚えてもらうために自己紹介をする事になった。
「さーて、この子が今日から新しくここに来た比嘉くんでーす。それじゃあ比嘉くん、自己紹介よろしくね」
と、弧門さんから言われて僕は自己紹介をした。
「ど、どうも。今日からみんなと一緒に暮らす事になった比嘉 翔太郎11歳です。よろしくお願いします」
かなり緊張したけれどそう言うとみんなから拍手が送られた。
そして夕食の後お風呂に入り、部屋には僕と門矢くんだけになった。
「さてと、じゃあ昼間に話した記憶の話の続きをするぞ」
「うん」
「さってと、さっきどこまで喋ったかな。確か記憶を取り戻すとこまで喋ったよな。なら、そこからの続きだな。
実はお前が来るよりも前に俺と一緒の部屋だった神代さんってゆう人がいたんだ。俺よりも少し年上。今はここにいない人なんだけど、その人が俺に話してくれたんだ。
神代さんは12歳の時にここに来たらしいんだけど、来てしばらくの間はここに来るまでの記憶が無かったらしい。
ただ15歳になった頃くらいから少しづつここに来るまでの記憶を取り戻してたんだって。
記憶自体あんまり鮮明ではないけど、どんな事をしてたのかくらいは思い出せたって聞いた」
「そうなの?じゃあ、なんでその事を弧門さん達は話さないの?」
「多分記憶を取り戻せるのが確実じゃあ無いからだと思う。変に期待させておいて、取り戻せなかったらかわいそうだろ。
俺もその辺の事は神代さんに聞いてみたんだけど、神代さんの友達の人で、ここを出るまで記憶が取り戻せなかった人も何人かいたらしい」
「そうだったんだ」
「まぁ、急に記憶が戻り始める方がよっぽど驚くけどな」
そう門矢くんは笑って話を続けてくれた。
ただ、この後聞く話は今までに比べてとても衝撃的だった。