僕が僕であるために
あれ?僕なんでこんな事になってるんだろう?
左腕と腹が焼けるみたいに痛い。ゆっくりと拭うと濡れていた。紛れもなく僕の血だ。僕が何をしたってゆうんだよ……なんで……
「さて、見えてきたよ。ここが君の新しい家だ。みんな優しいからすぐに馴染めるはずだよ」
そう言われて車から外を見ると、のどかな農道の先に林がありその隙から灰色がかった壁に囲まれた白い大きな校舎のような建物が見えた。
ただ僕は隣の男の人の話がほとんど頭に入ってこなかった。そして、どうしてこんな事になっているのかの理解に脳が追いついていない。何故なら僕は自分が誰なのかがわからないのだ。
遡ると3日前、気がつくと僕はとある繁華街の裏路地で
気を失っていた。そして、訳が分からないまま2日間歩き回り、途方に暮れていた所を隣で車を運転しているこの男の人が『じゃあうちの孤児院に一時的にでもきてみるか?』と言って連れてきてくれた。
自分が全てを忘れている事に気がついたのはその少し後の事だった。
今考えるとどうしてこの人について行っているのかも分からない。ただ、何故かこの人と一緒にいると安心できる。
そしてこの人は僕の敵じゃない。そう直感した。
(でも、本当に僕は誰なんだろう?さっきヒガってゆう名前が頭の中に浮かんできたけど、僕の名前なのかな)
そんな事を考えているうちに、建物の前の大きな扉が開き、敷地の中に入っていった。そして促されるままに車から降りて周りを見ると、僕と同じか少し年上くらいの何人かの少年や少女達が遊んでいた。
すると、向こうもこっちに気づいたのか、少し驚いた表情をしていた。僕も少しドキッとしたけれどそれもお互い様かなと思った。
急に入ってきた車の中から見ず知らずの子供が出て来たら驚くに決まっているだろう。
そして僕を連れてきた男の人が
「これからある所まで行くからついてきてね」
と言って建物の方に歩いていったので慌てて後ろについていった。
ついていくと男の人は僕が何も喋らない事を考えてか話しかけてくれた
「そう言えばここの説明をあんまりしてなかったね。ここに来る前にも少し話したけど、ここは孤児院なんだ。その名も『始まりの家』
ここには君くらいか少し年上くらいの子供達が暮らしているんだ。確か今20人くらいだったな。みんな家族を無くした子たちばかりなんだよ。でもみんな元気で楽しく生活してるよ」
そうか、ここが新しい僕の家なのか。
僕が一体誰なのかひょっとしたら分かるかもしれない。そんな思いが頭をよぎった。
これから始まる生活に少しワクワクしながら、僕はゆっくりと歩みを進めた。
初めての小説なので、感想などが貰えたら幸いです