妹こわいの巻
雪野さんと勉強会をしていて今日はすっかり帰りが遅くなってしまった。未だに少し緊張している。明日からくれぐれも目線のやり場には注意しなくては…
なんてことを考えているうちに家に着いた。もう9時を過ぎている。
「ただいまー。ごめんエリ遅くなっ…?!」
そこには玄関に正座したエリがいた。
「おかえりなさい、兄さん。今日は遅かったですね。何をしてらしてたんですか?」
満面の笑みでエリが言った。確かに笑っているのだが…いつもの女神スマイルとは少し違う。
なんというか、黒いオーラを感じる…
「ええっと、友達と勉強会をしていたんだよ。ごめんな、連絡とかすれば良かった。」
「え、兄さんお友達いたんですか?!」
目をまん丸くしてエリが言った。
えぇー、、、そんなに驚かなくても、、、
「お友達と勉強会であれば仕方ないですね。ご飯出来てるので一緒に食べましょう兄さん。」
どうやらいつものエリに戻ったようだ。ホッ
「エリ、先に食べてていいんだぞ。俺の帰りなんか待ってなくても…」
「私は兄さんと一緒に食べたいんです。兄さんと夕飯を食べるために作ってるんですよ。」
「そ、そうか…ありがとうな。」
くぅ、可愛いすぎるだろこの妹っ。シスコンを隠そうにも、こんなこと言われてしまうと流石に照れる。
しかし、お昼の件といいエリの俺に対する態度はやはり変わった。2浪の兄に気を使ってくれているのだろうか。
シスコンとしては嬉しいのだが…
「あ、そうだ兄さん。」
「どした?」
「兄さんに限ってこんなことは無いと思うのですが、そのお友達は男性ですよね?」
夕飯を並べながら妹が笑顔で言った。
「え?」
サーっと血の気が引いていく。
「兄さん?どうして黙ってるんですか?」
エリの顔が曇る。
「ねぇ、答えてください。」
聞いたこともない低い声だ。
今までのエリからは想像も出来ない表情でこっちにゆっくりと近づいてくる。
それはまるでゾンビのような、はたまた幽霊のような、大きく目を見開いて全身の力が抜けたようにだらりとしている。
俺は思わず後ずさる。
「え、エリ?落ち着つこう?確かにその友達は女子だけどあくまで勉強仲間だし、同じ浪人生だしさ、それ以上の関係にはならな…!」
「やっぱり女の子だったんですねぇぇぇぇぇえええ!!!!!」
俺が言い終わる前にエリがものすごい形相で突っ込んできた。
「ぐえぇ?!」
勢いで押し倒されてしまった。
全身に痛みが走る。
馬乗りになったエリの顔はもはや俺の知っている妹のものではなかった。
そして壁ドンならぬ床ドンでその恐ろしい形相を浮かべた顔を俺の耳元に近づけて妹は言った。
「私以外の女と話したら殺しますよ?」
「…ハイ……。」
俺はもう何がなんだか分からなくなって、涙目になりながらぶるぶる震えていた。
するとエリがハッと目が覚めたようになり、
「兄さん?!ああ、私は兄さんになんてことを!
大丈夫ですか?兄さん?返事をして下さい!」
俺は、しばらくエリに反応することが出来なかった…