オムライスの巻
予備校から帰って来た俺はいつものようにエリの女神のような笑顔に迎えられた。
本当に良い妹だ。こんな美少女が甲斐甲斐しくお世話してくれるなんて俺はなんて幸せなんだろうか。
だが、俺はまだあの事件を忘れることができずにいた。
そう、
「くんかくんか事件」だ…
あの時のことを思い出すともう、なんというか、
ムズムズする。いくら俺がシスコンだからといって、俺の履いたパンツを、あんな…
いや、考え出すとおかしくなりそうだ。俺の妹は清純スーパーウルトラハイスペック聖人なんだ。
あんなことをするわけがない…あれは、幻想だったんだ…
そう思うことにした。
「兄さーん、ご飯出来ましたよー」
妹に呼ばれて俺は食卓へ向かった。
「おお、今日はオムライスか!いただきまーす」
「待って!」
俺はビクッとした。
「ど、どうした?手はちゃんと洗ったぞ?」
「ケチャップつけるのを忘れてました」
「あ、ああほんとだ。えっとケチャップは冷蔵庫かな…あれ?無いな」
「私がつけてあげるから大丈夫です」
妹がまるで用意していたかのように満面の笑みで懐からケチャップを取り出した。
「なんだ、エリが持ってたのか」
俺は違和感を感じた。
「いいよ、ケチャップくらい自分でつけるさ」
流石になんでもかんでも妹にやらせるのは申し訳ないという思いで俺は言ったのだが、
妹の顔が一気に暗くなった。今にも泣きだしそうな顔でこっちを見てくる。
「兄さんは、、、私にケチャップをつけられるのは嫌なんですか、、、?ぐすんっ」
えぇーーなにそれぇ…
しかし妹が泣きそうなのは良くない
「いや!お願いするヨ!兄さんエリにケチャップつけてもらいたい!」
なんだか変態みたいになってしまった…
そう言うとエリは今度は雲が晴れたようにパァーっと明るくなり、満面の笑みで頷いた。
そんなにケチャップをつけたかったのか…
エリは俺の真横に来てケチャップをかけ始めた。
ち、近い…
妹のいい匂いがする…
つい、妹の横顔に見入ってしまった。
「はい、出来ましたっ」
「ああ、ありがッ…?!」
そこにあったのは、大きなハートマークの中に「LOVE」と書かれたオムライスだった。
そして、唖然としている俺の耳元で妹は
「召し上がれ♡」
とささやいたのだった…