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なりたくない女  作者: 山口 結衣
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1.現在:色気皆無のプロポーズ

 人生の起承転結の結は、一体いつ訪れるのだろう。


 死ぬ時――というのは除外するとして、何か区切りが付いた時だろうか。例えば、子供の頃描いた「将来の夢」が叶った時とか。



(「将来」って、今、なのかな……)


 珍しく真剣な面持ちをした彼氏の顔を見つめ返しながら、私はそんなことを思った。

 今、私は所謂プロポーズというものをされたらしい。


「……え?」

「もう一回言えって? だから、結婚しない?」


 なんとも軽いプロポーズに何と返したらいいか逡巡していると、彼はさらに続けた。


「同棲でもいいけどさ、既婚の方が家賃補助も出るし。それぞれで家賃払ってるよりも、その方が得だろ?」


 そりゃあ、バブル期のような"夜景の見えるレストランで給料三か月分の婚約指輪をパカッ"なんてプロポーズを期待していたわけじゃない。でも、あまりにも現実的過ぎる理由でロマンのかけらもありゃしない、と思ってしまう程度には、ちょっとは気の利いたシチュエーションを心の奥底では望んでいたらしい。


 今、私と彼は布団に潜ってはいるものの、一糸纏わぬ姿であった。ただ、それも特別ロマンチックなものではなく、いつも通りのスケジュールを淡々とこなした後、という表現の方がしっくりくるような、日常的なことだった。

 同い年で二十代も後半になった私たちは、付き合って二年になる。趣味が合うことから仲良くなり、何事も等しく友達のように付き合ってきた。彼の調子のいいところも、こちらも気負わず自然体でいられて楽だった。喧嘩だって、特にしたことはない。


 もし彼と結婚したら、このまま友達の延長にあるような、仲良し夫婦になれるだろうか。


「……うん、考えてみるね」

「あれ? 即答だと思ったのにー」


 すぐにイエスの返事を返せなかったのは、プロポーズのせいなのか私自身にある漠然とした迷いのせいなのか。私は再び目を閉じ、布団に潜りこんだ。


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