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その4 おそろしい三つ目入道と真夜中の便所

 ふとんにもぐりこんだ水助は、その間もおしっこを必死にガマンしています。でも、このままではおふとんの中でおしっこをしてしまいます。


「どうかお化けが出てきませんように……」


 水助はそう願いながら、暗やみの中をゆっくり歩きながら土間へ下りました。しかし、引戸の手前で水助は二の足をふんでいます。


「外にはお化けがいるかも……。でも、おふとんにおねしょはしたくないし……」


 どちらにするかまよっていた水助ですが、ここは勇気を出して外へふたたび出ることにしました。水助は、庭にお化けがいないことを期待して引戸を開けました。


 そこで目にしたのは、水助が期待していたものとは全くちがうものでした。


「さ、さっきよりも人だまの数が多くなってる……」


 不気味な青白い人だまに、水助はすぐに家の中へ入ろうとします。ところが、さっき開けたばかりの引戸がいつの間にかしまっています。


 水助はその引戸を開けようとしますが、なかなか開けることができません。ありったけの力を入れて開けようとしても、その引戸はびくともしません。


「家の中へもどることができない……。ど、どうしよう……」


 こわい人だまが飛び交っている中、水助は家へ入ることができずに思わずなき出しました。おしっこのほうも、はらがけをおさえながらガマンを続けています。


 そんな水助にせまってきたのは、昼間にはすがたを見せなかったあのお化けです。


「フヒヒヒヒヒ……。真夜中の便所へようこそ……」


 暗やみに広がる不気味な声が耳に入るたびに、水助はあまりのこわさで体がふるえています。そこへ現れたのは、やみの中から体の大きそうな男のすがたです。


 これを見たとたん、水助はものすごいさけび声を上げました。


「うわあああああああああっ! 顔が、顔が本当にこわいよう……」


 水助の前には、三つ目でおにのようなおそろしい顔を持つお化けです。しかし、そのお化けのおそろしさはそれだけではありません。


 真夜中にひびきわたる不気味な笑い声は、おしっこをしたがっている水助をさらにこわがらせています。


「わしの名前は、三つ目入道という者だぜ。フヒヒヒヒヒ……」

「わわわわっ! こっちへこないで! こないで!」


 あまりのこわさに、水助はかけ足で便所のほうへ走って行きました。ところが、便所の手前へやってきたその時のことです。


「フヒヒヒヒヒ……。三つ目入道が1人だけと思ったら大まちがいだぞ」

「う、う、うわあああああああああああああっ!」


 水助は、便所の前に現れた三つ目入道を見ると大きな声でさけびながら後ずさりしています。後ろをふり向くと、別の三つ目入道が水助を見ながら待ちかまえています。


「うわあっ! うわああっ! うわわあああああああああ~っ!」


 三つ目入道がいるかぎり、便所へ行くことも家へもどることもできません。その間も、水助はおしっこをガマンしようとはらがけの下をおさえています。


 その様子を、三つ目入道が見のがすはずがありません。三つ目入道は、2人がかりで水助を両手で強引につかみました。


「こ、こわいよう……。早くここから放して……」

「フヒヒヒヒヒ……。わしらは、ここでおとまりする男の子がおねしょやおもらしをするのが一番の楽しみなのさ」


 2人の三つ目入道によって、水助は両手も両足もつかまって身動きが取れません。三つ目入道のおそろしい顔を見るたびに、水助は何度も大声でさけんでいます。


「本当にこわいよう……。顔をこっちに近づかないで! 近づかないで!」


 水助が何度もさけんでいると、三つ目入道は急にすがたをくらましました。お化けがいなくなってホッとした水助ですが、庭のほうに数多くの人だまが飛んでいることに変わりありません。


「も、もうガマンできない……」


 水助はわき目をふらずに、暗やみの中にある便所のとびらを開けました。板ばりのゆかに足をふむと、不気味な音が水助の耳に入ってきます。


「暗くて本当にこわい……。こわいよう……」


 真っ暗やみで体がふるえる水助ですが、それでも何とか板ばりのゆかにあなが開いているところへしゃがもうとしています。


 ところが、その目の前に現れたのはおそろしいあのお化けのすがたです。


「フヒヒヒヒ……。わしのいる前でおしっこをすることができるかな」

「うわわっ! うわあああああああっ!」


 三つ目入道は水助の太ももを両手で無理やりつかむと、そのままさかさにして持ち上げました。


「うわああああああっ! じいちゃん、ばあちゃん、助けて! 助けて!」

「どんなに助けをよんでも、だれもここにはこないぞ。フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……」


 水助は三つ目入道にさかさにされて、なきながらさけび続けています。すると、三つ目入道は不気味な笑い声でさらにこわがらせようとします。


「はらがけがめくれて、ちんちんがまる見えだけどいいのかな、フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……」

「う、う、うわああああああああああああああああああっ!」


 おそろしい顔つきで笑う三つ目入道のすがたを見て、水助はついにおしっこのガマンができなくなってしまいました。


「これほどまでにこわがるとはなあ……。わっ、わわわわわっ!」


 水助はおそろしさのあまり、ついに三つ目入道の顔におしっこを命中させてしまいました。あれだけこわそうな三つ目入道も、水助のおしっこが自分の顔にかけられてたまらない様子です。


 そして、水助は今までガマンしていたおしっこがいっぱい出たのでホッと一息をつきました。でも、便所にいるのになぜかおしりのほうがつめたくなっていることに、水助はすぐ気づきました。

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