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その3 真夜中のお庭にあらわれたお化け

 太陽が西にしずむと、そろそろおふとんに入ってねる時間がやってきました。


 板の間には、水助がねるためのおふとんが用意されています。


「ぼうや、スイカをいっぱい食べたことだし、ねる前に便所へ行かないといけないぞ」

「う、うん……」


 水助は、おじいちゃんが切ってくれたスイカをたくさん食べたことを思い出しました。おねしょをしょっちゅうしてしまうとあって、水助は少し不安を感じています。


 水助は、外にある便所へ行こうと引戸をおそるおそる開けました。すると、暗やみに包まれた庭の風景が目の前にあらわれました。


「お、お化けがこわい……」


 暗やみの中を歩こうとする水助ですが、木々からはガサガサと不気味な音が耳に入ってきました。あまりのこわさに、水助はかけ足で家の中へもどりました。


「じいちゃん! おしっこをしてきたからね」


 水助は便所に行けなかったのに、おじいちゃんの前でうそを言ってしまいました。すぐにおふとんの中に入った水助を見て、おじいちゃんとおばあちゃんはやさしい声をかけました。


「ぼうや、おやすみなさい」

「いいゆめを見て下さいね」


 水助は、そのままねむりの中へ入って行きました。このとき、水助は長い夜の中でとてつもなくおそろしいことに出くわすなんて考えても見ませんでした。




「う、う~ん……」


 真っ暗やみの中、水助は急に目を覚ましました。かけぶとんをめくると、思わずはらがけの下をおさえようとしています。


「お、おしっこがもれそう……」


 おしっこがしたくなった水助は、板の間のまわりを見回しました。しかし、ねる前までいたはずのおじいちゃんとおばあちゃんがここにはいません。


「じいちゃん、ばあちゃん……」


 ひとりぼっちになった水助は、2人をさがそうとゆっくりと歩き出しました。暗い中で歩くのは、子供でなくても不気味であることに変わりありません。


「こ、こわい……。こわいよう……」


 水助は、こわいお化けが現れるのが不安で足元がふるえています。それでも、何とか便所へ行こうと土間へ下りて行きました。


 いよいよ、引戸を開けて庭へ出ようとするところです。水助は、早くおしっこをしたい気持ちとお化けに出会いたくないという気持ちの間でゆれています。


「早くおしっこをしたいけど、外にはお化けが……」


 はらがけをおさえながらおしっこをガマンする水助ですが、早く便所へ行かないと大変なことになります。水助はあまりのこわさに体をふるえながらも、思い切って引戸を開けることにしました。


「外はこわいけど、早くおしっこに……」


 真夜中の庭には、数多くの青白い人だまがうようよ飛んでいます。これを見た水助は、すぐにでも家へもどりたい気分です。


「ここでもどったら、おふとんにでっかいのをやってしまう……」


 水助は、はらがけの下を右手でおさえながら便所へ向かって歩こうとします。すると、おばあちゃんの後ろすがたが見えました。


「ばあちゃん、おしっこしたいからいっしょに……」


 水助の声に、おばあちゃんはすぐにふり向きました。その顔を見たとたん、水助は思わず大きな声で悲鳴を上げました。


 なぜなら、おばあちゃんの顔には目も鼻も口もないからです。


「出たあああっ! の、のっぺらぼうが出たああああっ!」


 水助はあまりのこわさに、そのまま後ずさりしてしまいました。


「早くおしっこがしたい……。でも、おばけが……」


 人だまが飛び交う中、水助は何とかして暗やみの庭を進んでいます。そのとき、見たことのない女の人が水助の目の前へやってきました。


 水助は、おしっこをガマンしようとその場でジタバタしています。


「お、おしっこしたいからいっしょに便所へ……」


 こわい便所へ行けない水助にとって、女の人の正体がだれなのか考えている時間はありません。そんな水助に、女の人は首をのばして自分の顔を近づけようとします。


「う、うわあああああっ! ろ、ろ、ろくろ首が……」


 水助は、ろくろ首に追いかけられながらも何とか家の中へもどりました。すぐに引戸をしめると、急いで自分のふとんの中に入ろうとします。


「のっぺらぼう……。ろくろ首……。本当にこわいよう……」


 水助はあまりのこわさに、そのままふとんの中にもぐりこんでしまいました。

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