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異世界戦国記  作者: 鈴木颯手
第五章・加納口の戦い
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第八十四話・加納口の戦い10

「ち、父上……」


 信元は自身の父の登場に困惑する。何しろ忠政がいたのは信元の後方、左隣に陣を敷いていた柴田権六よりさらに左斜め後方だったのである。それが何故ここにいるのか信元は不思議でならなかった。

 そんな信元の疑問に答えるように忠政は言った。


「何、お前達ならこういう判断を下すだろうなと思ったまでだ」


 そう言う忠政は一切遠山景前から視線を逸らすことはなかった。景前は若干自軍の後ろに戻っており戦闘が始まっても安全と言える場所にいた。


「ほう、まさか水野家の当主直々のお目見えとはな」

「そう言う貴様こそ今頃斎藤家につくのだな。あと少しで稲葉山城は陥落するぞ?」

「ふん、そんな事はあるまい。現に、稲葉山城の反撃を受け貴様等は総崩れになっているだろうが」


 実際、斎藤家の夜襲で総崩れになりかけているのは事実だった。何しろ信元が率いていた軍勢はほぼ壊滅し佐久間信晴は総崩れに、その後方にいた織田信康と岸信周が一騎打ちをしているのが現状だった。更に、山口教継や織田三位、橋本一巴などの陣営には日根野弘就が、土田政久には不破光治が攻め込んでいた。

 そして、外部からは遠山景前と佐藤忠能が援軍として駆け付けており戦況は織田の圧倒的有利から斎藤家の優勢へと切り替わりつつあった。このままでは日が昇る前に全軍撤退となりかねなかった。


「それに、我らへの援軍要請をしたのが斎藤利政なら我らは動かぬつもりだったが高政殿の頼みなら話は別だ」

「随分と、斎藤家の嫡男を気にかけているのだな」

「当然だ。あの方は土岐家の血を引いている可能性(・・・)がある。頼純は越前に逃れ、頼芸も大垣城周辺にまで領土を削られている。それにどちらも仕えるには値しない無能だ」

「おいおい、そんなはっきりと言うのかよ」

「構わないだろう。我が兵たちに告げ口する者はおらぬしそなたらにはここで死んでもらうのだからな!」


 景前はそう言うと同時に兵に合図を送る。兵たちは忠政に一斉に襲いかかるがそこへ少し遅れて到着した水野家本陣の兵たちが割り込んでくる。


「よし! こちらの兵も到着した以上互角に戦える。お前ら! 敵は遠山景前とその兵だ! ここで遠山景前を討ち取る気でかかれぇい!」

「「「おおぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」


 本陣の兵たちは忠政の言葉に雄たけびを上げ遠山家の兵に襲いかかる。その様子を少し離れたところで茫然と見ていた信元の元に忠政がやって来る。


「信元、お前はこの場を離れ信秀殿の下に迎え。それが出来ないのなら刈谷城に戻れ」

「なっ!? 父上はどうするのですか!?」

「勿論この場に残り遠山景前の首を盗る」

「ですが……!」

「それにお前は兵を持っておらぬだろう。そんなお前がここに居ても出来る事は無い。邪魔だからサッサと行け」

「っ!」


 父の言葉に信元はショックを受け歯を食いしばるが忠政の言う通りという事と父の真剣な表情を見て無理やり自身を納得させる。


「……分かりました。ご武運を祈っています」

「おう、景前の首を獲って信近の前に差し出してやるわ!」


 忠政はそう言って豪快に笑うと戦場へと向かって行く。信元はそれが父の最後の姿に思えてならなかったが自分の心を押しとどめてその場を離脱する。

 戦場に戻ってきた忠政は手始めに近くにいた遠山家の兵を槍を振り下ろす事で叩き潰す。ゴシャッ!という音と共に地面にめり込んで即死する兵士。それを見る忠政の瞳には憤怒の炎が宿っていた。


「倅の手前、隠したがもう我慢ならん! 遠山景前! 我が大事な息子を殺した罪! その命で償ってもらうぞ!」

「はん。できるものならやってみたまえ。返り討ちにして高政殿への手土産にしてくれるわ!」


 忠政はそう叫ぶと景前の返事など聞かずに襲い掛かって来る兵たちを槍で振り払った。


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