第六十三話・勝幡城攻防戦~終戦~
少し駆け足気味になってますがこれで勝幡城攻防戦は終了です。
俺は敵兵がいないことを再度確認すると息を大きく吐くとその場に大の字に倒れ込む。周りにはボロボロの味方がちらほらと居るがその数は明らかに少なかった。両手……では数えきれないだろうが確実に二桁程度しかいないはずだ。それだけ激戦であり何度も死ぬと思ったほどだ。
敵の大男を倒した後は確かに勢いはこちらにあったが途中で混乱から立ち直ったようで最初ほどではないが大量の兵が襲い掛かってきた。この時に味方は半数が死亡してしまい俺も大小さまざまな傷を負ってしまった。
しかし、そのすぐ後に忠政殿たち水野家の兵が大暴れを始めた。晴具を討ち取ったのか、それとも逃がしてしまったのかは分からないが晴具の姿は戦場にはなく総大将を失った事で最後に残っていた士気もが開始て逃げ出し始めたのだ。それを後方から討ち取っていき先ほど漸く最後の一人を切り捨てたのである。他の伊勢連合軍も北畠軍の瓦解を見て撤退していった。一万二千対二千五百で始まったこの戦はこちらの勝利で終わった。正確には分からないが四千ほど倒したと思う。
「殿!ご無事ですか!?」
「利昌……」
俺が大の字になり地面に横たわっていると騎乗する利昌がやってきた。返り血と思われる真っ赤な血が鎧に付着している他右手に持っている槍は血どころか肉まで付着していた。正直、今は見たくない光景だ。
「一応無事、だが少し傷を負い過ぎた。すまないが勝幡城まで運んでくれるか?」
「勿論です!誰か!殿に肩を貸してやれ!」
利昌の指示で出て来た二人の兵の方に手を回し俺は勝幡城に向かって歩く。一歩進むたびに体に激痛が走るが無理しすぎた結果だな。と言うかこれを見たら雪が卒倒するんじゃないか?もしかしたら泣きながら怒って来るかもしれない。その時は甘んじてそれを受け入れよう。あり得ないとは思うが逆の立場だったら俺はそうするかもしれないからな。
「あ、利昌。残った兵を集めて敵の再襲撃に注意してくれ。ないとは思うが念のためにな」
「はっ!お任せください!」
利昌に指示を出した俺は寡兵にて守り切った我が家を見ながら笑みを浮かべるのだった。
「……ふん」
氏興はつまらなそうに息を吐く。彼の全身は返り血で真っ赤に染まっており途中、敵兵から奪った刀は根元から折れており周囲には似たような状況に陥っている刀や槍が転がっていた。彼だけで襲ってくる兵の半数を返り討ちにしており信秀や幾人かの兵が生き残れた一つの要因となっていた。
そんな彼だが数に物を言わせて攻めてくる北畠軍を見て急激に冷めていた。その前に戦った大男の茂康が強かっただけに雑兵の弱さが際立ってしまいただただ無表情で敵を殺していったのだ。そんな彼の姿は敵兵から見れば化け物以外の何物でもなく最後の方には彼に向かって行く勇気ある兵は誰一人としていなくなっていた。
「……帰るか」
氏興は持っていた刀を捨て一度だけ西の方を見るとそう呟きふらふらとその場を離れていった。勝幡城に拠ることはなく自分の居城である名護屋城に帰っていく。信秀がボロボロになっているのは知っているがあれくらいでは死なないであろうと思い顔を見せる事はしなかった。態々そこまでする必要もないなと考えているからである。
結局、氏興がいないことに気付いた時には名護屋城に戻っており戦況確認の為に一度来て欲しいと言われるまで彼が勝幡城に来る事はなかった。




