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異世界戦国記  作者: 鈴木颯手
第二章・当主織田弾正忠信秀
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第十九話・稲葉平野の戦い・狂気と一騎打ち

「押せ!押して押して押しまくれ!」


「敵を柵の中に入れるな!槍で突け!」


「矢はなるべく後方へ飛ばせ!あまり前方に放つと味方に当たるぞ!」


氏興軍の突撃から始まった稲葉平野の戦いは正面から突撃する氏興軍の優勢であった。今のところどこも突破されてはいないがその分死傷者が多く出ており段々人手が足りなくなっていた。


「く、くそ!誰かこっちに兵を…ぎゃっ!」


「ひ、ひぃ!」


「一人強い奴がいるぞ!気を付け…ぐはぁ!」


今川氏興自らが前線に立ち荒れ狂う龍の如く兵を片っ端から切り捨てていた。既に彼だけで二十は殺しておりそれ以上にけが人を作っていた。その為近くで戦う氏興軍は異様に士気が高く死傷者を増やし続けていた。


「アハハハハハハハハハハっ!信秀の軍勢はこんなに弱いのか!?俺が出てきた意味がなくだろうがっ!」


氏興は目を見開き奇声とも、笑い声ともとらえられる叫び声をあげながら織田兵を次々に殺していく。先程まで愛刀を眺め静かだった氏興は既に存在せず今はただ、目の前の敵を殺す化け物となっていた。その姿を見たことで織田兵は士気が崩壊寸前まで下がり氏興軍は士気を上げた。


「どうしたどうしたどうしたどうしたどうしたどうしたどうしたどうしたどうしたどうしたどうしたどうしたどうしたどうしたどうしたどうしたどうしたどうしたどうしたっ!!!!!織田ぐぅぅぅぅぅぅぅんっ!!!かかってこないのかぁ!?骨のあるやつはいねぇのかぁ!」


氏興は狂ったようにそう叫ぶも織田軍は近づこうとしない。それどころか無意識のうちに下がり始め柵から離れてしまう。その隙を付き氏興は柵を破壊して奥へと進み氏興軍もそれに続いた。その姿はまるで地獄の番人の様であり織田兵の士気は崩れかけていた。


そんな織田兵を見た氏興はがっかりしたような表情を作ると呟いた。


「貴様ら織田兵には猛者はいないのか…。残念だ。なら、いつも通りに全員の四肢を切り落とすか」


氏興のつぶやきに織田兵は恐怖で顔を真っ青にするがそこへ一人の男が現れ叫んだ。


「今川氏興!俺と勝負しろ!」


その声に氏興は反応しその声の方へと顔を向ける。声の主は気負うことなく織田兵の間から出てきた。一般歩兵よりも上等な鎧を身に着け陣羽織を付けた青年を見ると氏興は口角を限界まで上げた。


「いいねぇ。一騎打ち。こういうのは何回やっても興奮するんだよぉ!」


氏興は精神に異常があるとしか思えない瞳をしながらも左手を上げる。それを見た氏興軍は急いで後方へ下がり空間を作った。織田兵も意味を察して後方へ下がり小さいながらも一騎打ちの土俵が完成した。


「さぁて!命知らずな若者のぉ、名前を聞いておこうかぁ?」


「…織田信秀の弟、織田信康」


氏興と相対する青年、信康はそうなのり氏興は意外そうな表情をする。


「へぇ、当主の弟が来るとはなぁ。てっきり重臣の息子かと思ったよぉ」


「織田は弱くないといういい証明になるからな」


氏興の言葉に信康はそうかえしつつ手に持った槍を構えた。それを確認した氏興は自分の愛刀を構えると背を低くして突進の構えを取った。


「それならせいぜい」


瞬間氏興は飛び、信康に迫った。


「期待させてくれよぉ、信康ぅ!」


型にはまらない無茶苦茶な剣筋だがそのすばやい切りつけを信康は槍で防ぐ。氏興はそのまま休むことなく二の手、三の手を繰り出し信康は冷静に見極め対処していく。しかし、氏興の腕力と遠心力の加わった一撃一撃をしっかり防いでいたため槍が真っ二つに折れてしまう。その隙を氏興が逃すはずもなく大振りながらも渾身の一撃を放つ。


「これで終わりだぁ!」


ガスッ!


その様な柔らかいものを切った音が聞こえてくる。氏興は視線を剣先に向けるとそこには土があり右横には剣に触れるか触れないかと言うところで氏興の方を向く信康の姿があった。更に運が悪いことに氏興の体はかなり前のめりになっているため現状信康に首を差し出しているように見えた。


「…あ」


氏興は直ぐに後方下がろうとするも信康の鋭い膝蹴りが氏興の顔面を襲った。


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