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異世界戦国記  作者: 鈴木颯手
第二章・当主織田弾正忠信秀
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第十四話・恨む者

「織田信秀めぇ!」


清州城を居城とする織田信友の機嫌は極限まで低かった。理由はたまたま氏豊の那古野城で行われた連歌の席で信秀に出会ったからである。席を離すという配慮はされていたもののそんな事は関係なく視界に入った時点で親の仇を見るような眼で信秀を睨みつけていた。


清州城に戻った現在でも機嫌は治らず周りの物に八つ当たりをしていた。家臣たちも最初は宥めていたがあまりの形相に宥めることを諦め信友のいる付近には近づかないようにしていた。その為清州城の物品が被害を受け続けていたが命には代えられないと放置していた。


「あいつさえいなければ今頃勝幡付近は俺の物となっていたのにぃ!それどころか俺に恥をかかせやがってぇ!」


信友は憎悪の言葉を口にしながら暴れ続ける。公家が仲介に入って以来織田信秀の弾正家の評判は上がっており逆に敗者の清州織田家の評判は下がっていた。そのせいで織田良頼がいる藤左衛門家は完全に独立状態となり犬山織田家の織田信安が度々領内に侵攻してくるようになっていた。


最近はこの対応に追われる日々が続いており信友の感情は荒れるばかりであった。


「くそ!どうやったら信秀をやれる?…そうだ」


信友は少し考えると何かを思いつくと机に向かい紙を取ると何かを書き始め書き終わると小姓を呼んだ。いくら何でも小姓である自分まで逃げる訳にはいかなかった彼は直ぐに信友の呼びに反応した。


「お呼びでございますか?」


「これを、氏豊の家臣に渡してこい。決して誰にも気づかれるなよ」


「こ、心得ました」


信友の鋭い睨みを受けて小姓は恐怖で顔を染めると大急ぎで部屋を後にした。再び一人になった信友は先ほどまでとは違い落ち着くと今後の展開に一人邪悪な笑みを浮かべるのであった。




















「信光、信次。準備は出来たか?」


「はい、兄上」


「いつでも出発できます」


氏豊に招待されて那古野城で定期的に行われる連歌会に向かううち俺も何とかそれなりの物が詠めるようになってきた。最近では教養を持ってほしいと思い弟たちを連れて行っている。今日は信光と信次を連れていく。信康は今日は勝幡城で留守番だ。


そう言うわけで俺はいつものメンバーとなった数名の護衛を連れて那古野城へと向かった。今日は利昌と信晴は信康の手助けをしてくれている。何回も足を運べば自然と慣れて来るもので最初に来た時よりも早く到着することが出来た。


そして門では相変わらず氏豊が出迎えてくれる。


「お待ちしてました、信秀殿」


「氏豊殿、いつもいつも門で出迎えなくてもいいと思うのだが…」


「それだけ信秀殿を認めているのですよ。さ、向かいましょう。良頼殿はすでにきておりますよ」


そう言って氏豊が案内してくれる。…そう言えば今日は何時もの視線を感じないな。


「信友殿は今日はまだ来ておられないのですか?」


「いえ、今日は欠席だそうです。何でも流行り病にかかったそうで。今日は代理として信友殿の家臣が参加なされます」


成程、さすがにあんなに俺の事を恨んでちゃストレス溜まって病になっちまうだろうな。いい加減忘れてほしいのだが。だいたい、そっちから攻めておいて負けたからと言って逆恨みとは器の小さい男だなぁ。


そう思っているといつもの部屋に到着した。確かにメンバーはそろっているし信友がいつも座る席には別の人物が座っている。


「皆さん、お待たせしました」


「気にするな。俺も先ほど就いたばかりだ。それに参加者の中で信秀殿が一番遠いのだ。この位問題ねぇよ」


俺の言葉にそうかえしたのは俺の母いぬゐの父親だ。俺の父と大して変わらない歳だが母上が死ぬ以前の活発だった父よりも若く見え、覇気が流れ出る武人だ。


父も戦場で戦う時には一番手ごわかったと言っているからな。こう見えて多彩な教養の持ち主なんだよな。見た目からは全然想像できないな。


「それでは早速始めましょうか」


俺と氏豊が席に座り一息つくと氏豊がそう指揮を執り今日の連歌会が始まるのであった。


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