4 一等親キャラ編
ラスト!
日本、愛知、名古屋のちょっと西のどこか。
男は困惑していた。
一頭身に…なっている!?
車が追突され、バイクが盗まれ、自転車がパンクする…など例年より少しばかり運の悪いことが続いていた男は流石に自身が一頭身になることを想定はしておらず、昔流行った携帯できるお世話ゲーのようになってしまった自分の風貌が確かに自分であることを認識するのに多少の時間が必要だったことは納得してもらえると思う。
しばらくして、やっと炎天下にさらされたバケツの水程度には冷静になった彼だが、それでも蒸発寸前なことには変わりがない。
とりあえず自身のこの姿のことはいったん忘れて、やっとのことで戻ってきた自分の愛車を洗車することに彼は決めた。
意気揚々と準備していた洗車道具をバケツに入れ、陽気な日差しと穏やかな気候の中、明らかに現代日本では似つかわしくない一頭身の男は洗車をするために家から飛び出してしまった。
奇跡的にも彼はどこぞの宇宙人よろしく連れされれはしなかった。
もはや原型のないフォルムの男だが、道行く人にあまりに軽快に挨拶をするので
「もしかしたらおかしいのは俺かもしれない」
と通行人や知人に有無を言わせない同調圧力がかかっていたようだ。
それに気合いを入れれば案外伸びる手足に男は便利さを見出し、自身の胃袋とかそういうのがどうなったのかを不思議に思わない程度に休日の余暇を楽しんでいた。
しかし、その平穏も終わりを告げる。
きっかけは何気ない一言だった。
洗車を終わった時に彼は言ってしまったのだ。
「ふー、やっぱおれの車は最高だぜ!!」
「…いま、「最高の車」といったな?」
振り返ると自分より一回り小さな小人が、ドスの利いた低い声で自分に聞き返したのだ。
それに反応すらさせず間髪入れずに
「あったぞ、「最高の車」だ!!! 急げ急げ!!!納期が差し迫っているぞ!!!」
「車はどうする!?バラすか!? 後で元に戻すし、本人に了承を取ればよかろう!!!」
「めんどくせぇ!!!! 連れて行こう!!!」
「「「「「よし、 簀 巻 き だ !!!!!!!!」」」」」
次々にやってくる機材に小人たち。
陸上自衛隊のレンジャーに匹敵する錬度で丁寧に男は簀巻きにされた。
人間、いろいろ予測できない事態に遭遇すると冷静になるらしく、その時、彼は
(明日、有給をとっといた方がいいのかな?)
などのようなことを考えていたという。
というわけでイントロダクションの最後につながります。