3 シンデレラ編
少しまじめテイストに
少女は当てもなく歩いていた。
道化師のような振舞いの風船の彼と並び、あの世界、この世界と本や空想の世界をただひたすらに。
自らの心臓の鼓動を、感情の揺さぶりを、そして最後に笑いあえるように。
これはそんな彼女の物語のほんの一部。
彼女が訪れたた世界。
それはヒロインのいないシンデレラの世界。
途方に暮れた王子ざまとその家臣たち。
煌びやかなシャンデリアが施されたカボチャの馬車は走りだすことのないまま、ただそこに佇むことしかできない。
そんな中、彼女はてを差し伸べた。
だがその掌に愛しみはなく、道化師や王子様の願いのまま、頼まれるまま代役を務めることになったのだ。
物語は進んでゆく。
灰まみれの少女にも贈られた招待状。
踏みにじられひどい仕打ちを受けていても彼女は何も感じない。
魔法を受け、美しいドレスを身にまとっても、道行く人に羨望のまなざしを向けられても彼女は何も感じなかった。
嶮しい騒動を抜けて、王子が待つ舞踏会へ向かう道中、アフタヌーンティー香る車内で一息ついたときに窓から星と月が見えた。
シンデレラの世界で決して会いまみえない彼をふと思い出し、口元がほころんだ。
少女は踊る。
身にまとった魔法のドレスに劣らない美しさで。
しかし、可憐であれどその姿は雪のように儚く溶けてしまいそうに見えた。
舞踏会は終わりふと、遠く小さくなっていくガラスの靴を見つめていると涙がにじんできた。
彼女の涙は終わりに近づいた物語に落としたものか、久しくあっていない友に向けたものか。
それは誰にも分らなかった。