このちっぽけな世界が終わろうと
初めて書いて、設定とか全く考えてなく書いたので割と駄作ですが、暇つぶし程度にどうぞ一読お願いします。
ふと目が覚めると、針は北北西を指していた。だが僕は慌てない。なんせ今日、この世界が終わるからだ。
あっけない人生だった。こんなことならやりたいこと全てをやるべきだった。バンジージャンプや海外旅行、コミケ徘徊や林さんへの告白……。数え上げればきりがないほどだ。今まで本当に何をしてきたのだろう。思い返すと、恥ずかしく居た堪れない気持ちになっていく。でもこの気持ちも全て今日消えると考えると、少し悲しいような微妙な気持ちになるのだ。「死ぬ前ってみんなこんな気持ちなのかな。」誰もいない家の中、独り天井に手を伸ばしてみた。ーー手を伸ばせば何かに届きそうな気がして。
テレビを付けてみると、ニュース番組は慌ただしく騒いでいた。「今日地球に超大型太陽フレアが激突します。テレビの前の皆さん、やりたいことはやっておきましょうね!続きまして天気予ーー」僕は嫌になってテレビを消した。
僕は地球が滅びる正午までに一つ、一つだけやりたいことをしようと心に決めた。林さんへの告白だ。林さんはクラスの人気者で僕の天使だ。これさえできれば、まだ気持ちよく死ねるだろう。すぐに学校へ行く準備をした。
教室には二人の人影があった。一人は林さん。もう一人は雅樹だった。雅樹は僕の幼馴染で、この近くでは有名な不良。小学生の頃は仲が良かったが、中学に上がってからは全く話さない。幼馴染なんてそんなもんだ。それに僕と雅樹では住む世界が違いすぎる。マンハッタンと三重県くらいに違う。そんな彼と彼女は二人、誰もいない学校の教室で幸せそうな笑顔で話していた。ーー僕には何も届かないな。僕はそっと、帰路へ向かった。
死ぬ前に何もできないのは勿体無い。バンジージャンプだけでもしようと思い、橋の上に立っている。高さ約40メートル。ここらで1番の高低差だ。ーー死ぬ前は笑顔がいいな。僕はニコッと口角を上げて、フラッと倒れるように飛び降りた。すごい勢いで風を切りながら落ちていく。今なら何かに届きそうな気がして手を伸ばしてみる。ーーどこにも掴めるものなんてないのに。そのまま勢いよく川へ落ちた。
苦しいと思って目覚めると、そこには泣きながら僕の胸を叩いている林さんがいた。「ちょ、痛い!痛いよ林さん!てかなんで君がいるの!?」僕は動転した。「生きてるの…?生きてるのね!山下君!!」彼女が満面の笑みをこぼした。時計の針を見ると、北北北北北北北西を指していた。「林さん…!あと少しで死ぬのになんで僕なんかを助けてくれてるんだよ!君のやりたいことをしなよ!」「私がしたいことはこれなの!私は山下君の…山下君の隣にいてたいの!!」泣きながらそう叫ぶ君に、僕はなんで言葉が出ないのだろう。なんて言葉を出せばいいのだろう。分からない。何も、分からないのだ。ただ僕は彼女を強く抱きしめた。この時が永遠に続くように、続きますように……。
僕の死ぬ直前、君の笑顔があり、君のぬくもりがあり、そして、君の手を強く握っていた。ーー手を伸ばさなくてもそこにいる人。僕は神にこれ以上何も望まないや。
わっしょい。