094 晴れのち再会、ところによって湯気
僕が住んでいる町、月城町のターミナル駅。ホームに滑り込んできた列車を見てクドが、
「お~」
と、感嘆の息を漏らした。
「知ってる。こら、知ってる! え~と、たしか……そうだ。デンシャ。電車とかいうやつだ」
列車を前にクドは大興奮している。
その隣で僕はリュックを背負ったまま、笑いかけた。
「そう。電車。よく知ってるね」
「絵や写真で何度か見かけたことがあるんだ。でも本物は見たことがないからびっくりした!」
「ははは、そう。じゃ、乗るのも初めてかな?」
「うん!」
そう言ってからクドが僕の手を取って、列車の搭乗口に向かって走る。
「ははは、大丈夫だよ。そんなに急がなくても。電車ってのは時間通りに動くようなシステムになってるから」
ちなみに今のクドは普通に他の人に見える状態だ。
今日は土曜日。
そのせいもあって駅のホームの中は旅行を計画した家族連れや休日に都会の街へと遠出しようとしている人たちでごった返していた。
はぐれないようにぎゅっとクドの手を握る。クドは少し嬉しそうにして、僕の手をぎゅっと握り返した。その意図は伝わってはいないだろうが、クドが喜んでいるようなのでよしとする。
クドの恰好は水色のひざ丈ワンピースに白のリボンがワンポイントになっている明るめの色調なラフィアハットというちょっとこ洒落ているもののどこかラフな感じのする恰好。
まるでどこかに出かけるみたいな恰好であるが、正にその通りである。僕とクドの二人は一泊二日の旅行に出かけようとしているところなのだ。
クドはとても旅行を楽しみしている。
一方で僕はというと。
少し気になっていた。
この旅行の提案者というのが、あの先生だということだ。
旅行の名目としては僕の風邪を完全に治すための湯治。いわゆる温泉療法ということになってはいるものの、ものすっごく怪しい……。
そもそも湯治が目的ならば日帰りでも十分なはずなのに、なぜ。一泊二日にしているのだろうか。
いや。いやいやいや。
そこは些細な問題である。一泊二日とか日帰りとか。そもそも問題にすらならないほど些細なことであった。
問題は。
唯一にして絶対の。無視できない案件。
この旅行の計画者が八神環奈。
あの。先生。
ああ……。憂鬱だ。不安だ。不安しかない……。
「……なに企んでるんだか」
は~っと息を吐く。
いくら考えてもあの人の考えが分かる訳でもなし。
というより。
あの人のことで頭の中をいっぱいにしたくない。なんというか。……したくない。
「どうした?」
と、クドが心配そうな表情で声をかけてきた。
その声で我に返ると首を大きく横に振る。
いかんいかん。何を考えているんだ、僕は。
「早く乗ろう!」
クドが急かすように嬉しそうな顔で手を引っ張って来るので、
「うん」
と、言い。その後に続いた。




