86/368
085 狐と神狼、相まみえる
天に昇る“咆哮”。
その光景を遠くから眺めている人物がいた。
びしっとしたレディーススーツを着て、銀縁のメガネをかけたその女は、
「なにやってんだ……あいつら」
手元のタバコを口元に持っていくと、それを咥えた。頭を掻いて、一度、タバコの煙を噴かす。
ちらっと店先の女性店員と目が逢う。
店員がぺこりと頭を下げると、女もまた、少しだけ頭を下げて背後を向いた。
「なにをしでかすかと思ったが、ただの見舞いだったか。学校を抜け出してまで来るとは。やれやれ。恋ってのは人に行動力を与えるね~。無駄に」
ふっと微笑む。
とん。
女の背後で何かが飛び降りた。
「で?」
女は背中を向けたまま、
「お前は何してんだよ。かがり。わざわざあんな真似しやがって」
背後で座っていた狐は、女の問いに。
ずずずっとプラカードを前足で押して、示した。どうやら今は喋る力がないらしい。
プラカードには、こう。
『ひまだからちょっとあそんでた』
と、書かれていた。
それを見て、女が肺の底から全ての空気を押し出すような深いため息。
「ったく」
それから彼女は踵を返し、まっすぐと歩いていった。




