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ヴァンプライフ!  作者: ししとう
scene.5
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076 クラリス登場!

 それからしばらく経って、誰もいなくなった学校の屋上にタバコの煙がぷかぷかと立ち上る。そこに久遠くおんかなたの担任教師の八神環奈が立っていた。

 環奈は屋上の扉の傍に立ち、その上にある給水タンクがあるふちにはかがりが座り込んで。屋上の有様を眺めていた。

 やがて、環奈の方から。

「ちと……やばかったな」

 少しだけ焦ったような声色でそう言った。

「わん!」

 かがりはいつものように鳴くだけ。その様子を見て環奈が少しだけ笑う。

「オレだけかよ……そう思ったのは」

 へ、と。タバコの煙を噴かして、自分の未熟さにもう一度笑った。

 と。

 てりりりり。

 白衣のポケットに無造作に突っ込んでいたスマホが鳴る。

 環奈はタバコを咥えたまま電話に出る。

「はい、もしもし?」

 そう言うと電話の向こうから柔らか気な声が聞こえてきた。

『環奈ちゃん』

 環奈は軽くこめかみを押さえて、少しだけ謹厳さを乗せた声で、

「姉さんか。用は、って。まあ、決まってるか」

 すると相手は、

『とりあえず……二人とも無事。それは大丈夫。クドちゃんの方はなんともない。かなたくんも手を切ったりしてるけど、それぐらいの怪我だったらいつもみたいにすぐ治ると思う。でも、少しだけ風邪を引いてる。帰ってきてから風邪薬を呑んですぐに横になったから』

 その真面目な言葉に思わず笑ってしまった。

 風邪薬……ねえ。

 それは何かの冗談なのかと思ってしまう。

 やがて。電話の向こうの主が、

『単刀直入に聞かせて。まず初めに。誰と戦ったの? 生屍人ゾンビじゃないよね? 今は昼間。どっちかだと思う。吸血鬼か。それを狩るモノか』

「ん~?」

 環奈は屋上の壁に背中を預けながら、気楽そうに、

「結社の人間」

『そっか』

「どうやら“悪疫”のことを確認しに来たらしいぜ。ま、あれだけの力の持ち主だ。嫌でも伝わるさ」

 電話の向こうで小さく息を漏らす音が聞こえてきた。

『簡単には隠し通せるとは思っていなかったけど。もう。ばれちゃってるのか』

「言ったろ。この業界は狭いって。それに……格が違う。そんじょそこらの吸血鬼だったらなんてことないけど、“悪疫”はシャレにならないからな。月神結社(イガルクファランクス)も黙認出来ないさ。ま、そこは八神(ヽヽ)も同じだけどな」

 環奈は笑った。一度空を見上げて、タバコの煙を口から吐き出す。

『じゃ、次に』

 と、電話の向こうの声の調子が少しだけ変わる。

 やがて。


けしかけたの、環奈ちゃん?』


 スマホを持っている逆の方の手で頬を掻いた。

『かなたくんは誰かにケンカを吹っかけるようなタイプじゃないし、それはクドちゃんもおんなじ。だったら答えは二つ。その結社の人間が先走って“悪疫”に挑んだか、誰かさんの挑発を真に受けて特攻した子供。そのどちらか。これ、当たってると思うな。で、どう?』

「……せーかい。ちょっとやり過ぎたかなって少しだけ反省してる」

『……本当に?』

 え? と、環奈が聞き返すと電話の向こうの主は少しだけ考え込むように「うーん」と唸ってから、

『本当はこういう筋書きだったんじゃない?』

「筋書き?」

『うん。かなたくんとその環奈ちゃんに乗せられてしまった可哀そうなヴァンパイアハンターの子を戦わせて、かなたくんが忘れている(ヽヽヽヽヽ)戦い方を思い出させようとしたんじゃないの? そしてあわよくばクドちゃんの方も覚醒させたかった。それがキーとなってかなたくんも記憶の方も掘り返そうとして』

「まさか」

 環奈は笑った。首を横に振る。

「姉さん。オレはさ。一応教師なんだよ。だからさ、ほっとけなかった。そんだけだ。その結社から来た人間、聞いて驚くなよ。あのクラリス・アルバートって子だったんだ。歳は一五。普通なら中学生でクラスのやつらか何かとバカやっているようなそんな歳の子供を、よ。そんなガキが辛そうにしてるのを見て、オレはどうにもほっとけなくなっちまった。案外、この職業が性に合っているのかもな」

『それは……そうかも』

 と、電話の向こうから笑い声が聞こえてきた。

「ま。もし万が一にでもヤバそうになったらオレが飛び込んで無理矢理にでも止めようと思ってずっと見守ってはいたけどよ。久遠のやつがそれを止めちまったから、オレの出番はこなくて少し安心したけどな」

『そっか』

 き~ん~こ~んか~ん~こ~ん。

 と、そこで屋上の扉の奥から授業を知らせる予鈴の電子音が鳴り響いた。

『予鈴? もう時間?』

「ああ」

 そう言ってタバコを宙に投げ捨てると、

「わん!」

 かがりが給水タンクの上から飛び降りてきて、空中に放り投げられたタバコがかっと燃え尽きる。

「じゃ、そっちは姉さんに任せるな。まあ……何事もないとは思うけど」

『うん。かなたくんとクドちゃんのことは任せて』

 そう言って電話を切ろうとして、

「あ、そうだ」

 思わず言葉が零れ出た。

 笑いながら、

「お義兄にいさんにもよろしく伝えておいてくれ。今度店にも寄るってさ」

『うん。ちゃんと来てよ~。楽斗がくとくんも寂しがってるよ~』

「はは」

 電話の向こうと同じように笑う。

 電話を切って、一度髪を掻き上げる。

 白衣の中にスマホを滑り込ませると、かがりに向かって、

「お前も一応、あっちに行っておいてくれ。何があるかわかんねーからよ」

 と、言う。

 すると、

「わん!」

 と、一度吠えてからかがりが屋上の外へと向かって駆け、飛ぶ。そして、消えた。

 かがりが消えていった姿を眺めながら、そっと一言。

「まあ……。姉さんの言った筋書き。えがいてないって言うと嘘になっちまうんだけどな」

 そう呟いてから彼女は屋上の扉を厳重に施錠してから屋上を後にした。

ようやく人物紹介で出したキャラを出すことが出来ました。

長かった……。


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