表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァンプライフ!  作者: ししとう
scene.5
73/368

072 クラリス登場!

 ぷちんと何かが切れる音。

 鋼糸ワイヤーとはまた別の。

 何かが。

 クラリスの中の何かが決定的な音を立てて。

 切れた。

 とにかくこの少女。ひたすらまでに負けん気が強かった。

 自分は常に勝者であり続けなければならないと信じ込み、妄信し、こだわっていた。

「何をそんなに焦っているの?」

 そして。

 何よりその言葉が許せなかった。

 上からの物言いに。

 自分より弱いはずの存在に見透かされているかのような言葉が。

 何より。

 その言葉に動揺してしまった自分が。

 心の内がかき乱される。

 その乱れを否定するように鋼糸ワイヤーが切れた片方の手の腕を横に振るった。

「片方が切れたってね!」

 そして逆の手を巧みに操って、鋼糸を辺りに巡らせる。

「こっちがあれば十分!」

 本来、クラリスは中距離から遠距離で戦うスタイルが得意であった。しかし近距離で戦うことを選んだのは完全な自分の慢心。確実に勝てると思ったから、自分が最も苦手とする近距離で戦ってしまった。その点は認めよう。自分が思っているよりもこの変態が強かった。それは認める。

 だが。

 許せない。

 と、クラリスはそう思う。

 クラリスは怒りに震えていた。

 負けるわけがない!

 自分が。

 こんなヤツに。

 絶対負けるわけがない!

 歯噛みし、

「勝ち誇ってんじゃあない!」

 鋼糸をかなたの腰に巻き付けた。その鋼糸が繋がったままの自分の腕に力を込めたまま、かなたの足元を走り抜け、反対側に思いっきり引っ張る。すると、かなたはどうっと仰向け状態で倒れ込んだ。絶好の好機チャンス

 とんっと跳躍。

 そして、そのままの勢いで足を大きく上げてかかと落としの体勢。

 霊力の限りを宿らせた必殺の蹴りを落とす。これで終わる。避けられない。避けられるわけがない!!

 にやあっと笑って、

「これで終わりよ!」

 体を鋼糸で巻き付けているから動けるわけがない。

 勝った!

 クラリスは完全にそう思った。

 すると久遠かなたという少年は。

 戦いの最中で、しかも自分の危機に直面しているというのに。

 何とも呑気に。

 しかし、申し訳なさそうにして。

「え~っと」

 目を伏せて。

 少し照れながら。


「く、熊だ……」


「は?」

 訳の分からないことを言った。

 熊……?

 何のこと。

 と、思いかけて。

 仰向け状態で倒れ込んでいるかなたの視線を辿る。かなたは確実にクラリスを見ていた。それは全然不思議ではない。かかと落としをくらわそうとしているのだから、そりゃ見る。

 と。

 そこで何かにふと気が付く。

 自分は制服姿。

 当然、穿いているのはスカートだ。他の学校の制服よりもやや短い。

 対し、かなたは仰向け状態でほとんど動けない状態。

 再び蘇るローアングルの構図。

 足を大きく上げて、おっぴろげになるスカートの中身。

 クラリスの大好きな熊の絵がプリントされた中学生にしては少し子供っぽい絹の下着。

 というか。

 パンツ。

 熊の。

 熊。

 熊だ……。

 熊田。

(まさか……こいつが私のことを熊田って呼んでいた理由って……!!)

「は、はあ!?」

 かっとクラリスの頭に血が上った。

 こ、殺す!

 殺そうと思った。

 本気で。

 殺そうと思って、霊力がさらに強まって、ぶばっと霊力が溢れて足に力が入る。

 が。

 それが裏目に出てしまった。

 力が。

 入り過ぎた。

 適度に力を抜くことでコントロールが上手くいくところが、全力全開のかかと落としは力み過ぎて狙いが狂ってしまう。

 だから。

 久遠かなたが少し体を転がしただけでかかと落としは外れ、がこんっと屋上の床にひびが入るだけで終わる。

 そのあまりにも予想外で信じられないような攻撃の避け方に。ごろごろと転がって体を引っ張られ。

 クラリスは尻餅をついた。

「!?」

 自滅。

 普通に考えればクラリスが勝手に力んで、勝手に自滅したように見えた。事実、クラリスもそう思っていた。

 しかし。

 たった一人だけ。

 これがクラリスの自滅ではなく。

 久遠かなたが狙ってやったのだと信じてやまない少女が。

「うまいぞ。カナタ!」

 給水タンクからの歓声。

 それは“悪疫”の声。クドと呼ばれていた少女の声。

 たまらず、

「“悪疫”!」

 跳ね起きる。クドラクを睨みつけ、

「何がうまいだ! これは避けたんじゃない。当たらなかっただけだ! たまたま! 偶然!」

 激した口調でそう叫んだ。

 納得がいかない。

 こいつも。こいつも同じだ。あの女と同じで、こいつを評価する。私ではなく。こいつを!

「ラッキーがそんなに続くものか!」

 そして睨みを効かせたまま、そのまま飛び、

「なんなら! あんたで試してやる。本気の本気。あんたを殺す(ヽヽ)ことで私が偶然こいつに負けたように見えたっていうことを!」

 右手を振るって、指輪に繋がっている鋼糸を高速でクドラク目掛けて走らせた。


「Once it becomes chopped!(こま切れになっちゃえ!)」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ