066 クラリス登場!
朦朧とした意識の中、二人の女の子の声が聞こえてきた。
一つは、
「大丈夫か? カナタ?」
という聞き慣れたもの。
確認するまでもなく、この声はクドだ。耳元で僕の安否を尋ねてくる声が響いている。
僕はなんとかそれに掠れた声で答えた。
「だ、だいじょうぶ……」
痛みはあったけど、何とか意識はあった。
でもなぜか立ち上がれない。
階段の下で腹這い状態。
どうやら階段から落ちた時のショックで腰を強く打ち付けてしまったせいで、足腰に力が入らなくなってしまっているらしい。
「もう、なんなのよ……」
と、そこで僕はクド以外の女の子の声を聞いた。
声は頭上から聞こえてきた。
「!」
足をばたつかせる。
僕は信じられないものを見るかのような目で。なおかつ、絶望に満ち満ちた顔で。階段の上を見上げた。
そこには階段の中段付近で尻餅をついている、昨日の晩に逢ったばかりで名前も定かではない少女の姿があった……。
彼女は昨日と同じ真っ白なセーラー服を着ていた。
白を基調にしたセーラー服に紺のスカーフが特徴的な、一目見たら忘れられないような清潔感に溢れたキレイで可愛らしいセーラー服。
当然、女の子がセーラー服を着ていたら。
当たり前のことだがスカートを穿いている。そして、そのスカートはなぜか標準よりもわずかに短い。
腹這い状態の僕は視線が否が応でもローアングルで固着されていて、必然的に。
なんというか。
本当に……、その。
なんというか!
熊田さんのスカートの中身が。
生白い太ももと。
さっきまで追いかけてきていた男子生徒が命に代えても拝みたいと心の底から願ってしまってもおかしくないほどの純白な。
無地で木綿的な。
下着が。
羨望の眼差しを浴びることもあるようなお嬢様学校の。
女の子のパンツが。
目の前にあった。
「や!」
少女は一度、信じられないぐらい可愛らしい声を漏らしてスカートの裾を慌てて抑えた。その声でようやく僕も自分が一体何をしてしまったのかを理解して、慌てて顔を逸らす。
が。
何もかもが遅かった。
「この……」
怨嗟に満ち満ちた声。少女はさっきまでの可愛らしい声と同じ声帯の持ち主とは思えないほど低い声を出して僕を睨み、
「三度目よ……」
ぷるぷると怒りに震え、
「わざとやってんじゃないでしょうね! ええ!」
さっと立ち上がって、指をこきこき鳴らす。
「い、いや! とんでもない! えっと」
何かを言わねばと頭の中で試行錯誤する。
そして、何をとち狂ったのか、たはっと笑って、
「か、可愛いパンツ穿いてるね?」
腹這いのローアングル状態で笑って誤魔化そうとした。
その瞬間。
少女が上から降ってきた。
「ぐほ!」
少女はなんと、コーナーポストから攻撃を仕掛けるプロレスラーよろしく、空中からの情け容赦のない膝蹴りをお見舞いしてきたのだ。
後頭部。
直撃。廊下の地面が少し割れるほどの威力。
少女はさらに僕の頭を掴んで膝をがんがん入れた。
本気の涙目で、
「こ、殺すわ! もう勘弁ならない! あんたを殺して私の記憶からあんたという存在を抹消してやるわ!」
叫ぶ。
「死ね!」
少女は最後に渾身の踏みつけ攻撃をお見舞いして、僕を気絶させたのち、僕の体をずるずると引きずっていった……。




