057 クラリス登場!
少女は不敵な笑みで僕を見下ろしていた。
「ふん。なんであんたみたいなど素人がこんなところにいるの?」
冷たい声。
彼女は特徴的で、一目見たらきっと忘れないだろうなと思った。
ショートのサイドテールのブロンド髪も、真っ白な女子制服みたいな恰好も、一目で可愛らしいと男に思わせてしまう整った顔立ちも。何もかもが目に惹く。指はめられた一〇本の銀の指輪も何もかもが、特徴的であった。胸は慎ましいが、それがすらりと綺麗なフォルムを強調していて、とても可愛らしい。
事実、僕は目を奪われていた。
そんな僕の視線に気が付いた少女は、ふん、と鼻を鳴らしてから髪を掻き上げる。
「なに見てんのよ」
「あ……いや」
「まあいいわ」
僕は半分上の空だった。少女の言葉が耳に届かない。
どうやって生屍人を撃退したのかすら分からなかった。吹き飛ばされた生屍人がまるで何かの力に引き留められたみたいに止まった。まるで魔法みたいな光景だったが、どうにも魔力や霊力といった力の類は感じ取れなかった。クドや栗栖さんのような豪快さはないが、何かの技法のようなものは感じた。
しかし……それは一体何なんだろうか?
やはりあの指にはめられた一〇本の指輪が何かのタネになっているのか。
と、現実逃避をし始めたが。
やはり……。
気になる……。
彼女の強さとか美貌とか。そういうものに目を奪われているとか……そんな言い訳が聞かないほど、僕は動揺していた。
でも、いい加減言わなければならないだろう……。
その……男として!
「あ、あの……」
恐る恐る彼女に声をかける。
「なによ。礼でも言うつもり。は! そんなものが欲しくてあんたを助けた訳じゃない。あんたらの、あまりに不様な光景に嫌気が差したの。あんたらどこの所属? 信じらんないわ。そんな弱くて。よくも、まあ……いけしゃあしゃあと生屍人狩りなんてしてるわね」
「え……え……」
「これに懲りたら雑務でもやってることね! あんたらみたいな弱いヤツはそれぐらいしか能がないのよ。能無し。生きる価値すらないわ!」
「あ~……いや、そういうことじゃなくて、ね」
少女の瞳に冷ややかさが募る。
「言い訳? まったく、ほんとこれだから能無しの弱者は嫌になるわ! はん! やっぱりあんたらなんて無視して生屍人に食い殺されるべきだったのよ。能無し! 能無し! 不様に言い訳をするなら、もっと強くなってからにしなさい!」
僕はどうして怒られているんだろう……?
って! そういうことじゃなくて!
問題はそんなことじゃないんだ!
「ま、言い訳なんてのは弱いヤツが自分を甘やかすために言う詭弁なんだから、私みたいな強いものは絶対に言わないけどね。あーやだや」
「じゃなくて!」
僕はそこでやっと声を張り上げた。
少女が不機嫌そうに眉をひそめる。
そこで僕はそっと横を向いて、ぽっと顔を赤くする。
そして、ぼそりと。
「ぱ、パンツ……見えてるよ」
「え」
と、少女はようやく自分と僕の立ち位置について気が付いたらしい。顔をぽうっと赤くして、ばっとスカートを押さえる。
僕は生屍人に当たって倒れてしまってずっと仰向けの状態だった。
対し、彼女はそんな僕の目の前にスカートを押さえることもなく、堂々と立っていた。
なので逆さではあるものの、僕の前には彼女の白いスカートの奥に見える可愛らしい印象の白い下着が露わになっていたのだ。しかもスカートの裾が何かに引っかかってめくれ上がってしまっているので、もう……何というか見放題。パンツも、白い足も。何もかもが決算大サービスってな具合で。
見えまくってた。
内股気味でスカートの裾を押さえていた彼女が、
「この!」
ぎん! と涙目で僕を睨みつける。
僕はたらりと冷や汗を流す。
「い、いや……その、ご、ごめんなさい! で、でも……し、仕方ないんだ。そ、その……び、びっくりして!」
謝ってはいるものの。
“さっさと立てばいいのに”
という発想は今の僕の中にはなかった。
あまりの衝撃で。
現実的な発想は何一つ出てこなかったのだ。
と。
「死ね!」
彼女は激昂して、僕の顔面目掛けて、情け容赦のない踏みつけ攻撃。
からの。
「死んでしまえ!」
顔面目掛けての膝蹴り攻撃!
げしげし!
「ぶば! ご、ごめんってばぶ! わ、わざとじゃないごべ! ろ、ろーぷろーぶべ!」
顔がぼこぼこになっても彼女は攻撃を止めない。もうとっくに泣いているのに止める気配すらなかった。
ちなみに。クドはあまりの彼女の勢いにおろおろして止めることが出来なかった。




