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ヴァンプライフ!  作者: ししとう
scene.42
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354 今、思うこと

 地下から地上へと戻ると空気が一変したかのような錯覚を覚えた。

 錯覚と言うのは過剰な表現かもしれないが、ビルの中に静けさが戻っているように感じたのは事実だ。

 恐らく人の気配が一気に減ったことによりそう感じたのだろう。

(このビルの中にいた人たちのほとんどがキャストの吸血鬼たちだったってことか)

 洗脳されていた吸血鬼のほぼ全員がこのビルの中から退去したことにより、ビルの中から人の気配を消してしまい、空気ががらりと変わったかのような錯覚を覚えたのだろう。

 こうまで人の気配が消えたビルの中なら、人とすれ違わないようにビルの中を進むこともそう難しくはない。

 僕はミセから受け取ったカードキーを見る。

(ビルの最上階に……クドが)

 ようやく掴みかけたクドの手がかり。

 確信はないがミセが最上階にレディがいると言っていた。クドも何となくだがそこにいるような気がする。

(クドを殺すために捕らえたのだったらあの地下にクドの死体が転がっていたとしてもおかしくはなかった。だけど……幸いにもクドの死体は何もなかった。だから……クドは大丈夫。大丈夫なはずだ)

 自分に言い聞かすような理由付けもあながち間違いでもないような気がする。

 そもそも殺すために捕らえるという発想そのものがとても効率の悪い発想だと思う。絶対に捕らえて殺すよりも捕らえずに殺してしまった方が手っ取り早いし、何より楽だ。

 だったら一つの疑問が浮かぶ。


 ――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


(『悪疫』を呼ばれるクドが人間にとって危険な存在であるという理由で殺そうとする理由は理解できる。納得はしないが動機を考えた場合に一応の筋を通して考えることが出来る。だけど捕らえる理由だけがどうしても思いつかない)

 殺すより捕らえる方がずっと難しい。

 なのにわざわざ殺さずに捕まえた理由って……?

 行けば分かるのか。このビルの最上階にいるであろうレディに問いただせば分かるのか。

 それは分からないがそれでも進まなければならないのだろう。

 それに僕はどんな理由があろうとも誘拐を肯定するつもりは毛頭ない。あるはずもない。その対象が自分の妹だとしたらなお更。

 僕は走った。

 出来るだけ戦闘を避けるように、出来るだけ早くビルの最上階へと向かうように、懸命に走った。

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