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ヴァンプライフ!  作者: ししとう
scene.39
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339 甘さor優しさ

 心配はないと思っていたとしても実際に確かめるまでは安心しきれない。

 そう考えているのは僕だけではなく、メアさんとアサギさんも同様のことを思っていたらしく、僕たちは一斉にミセがいるところにまで駆け出し、傍にまでやって来ると眠っているミセの顔を覗き込んだ。

「ミセ?」

 そう言って真っ先に駆け寄ったのは洗脳が解けたアサギさん。

 自分でミセを追い詰めてしまった張本人。

 たとえ洗脳下にあったとはいえ、自分が直接手を下したことを覚えていたのならば心情は察するにあまりある。

 アサギさんがミセの顔を心配そうな表情で覗き込んでいるとミセの眉がぴくりと動き、ゆっくりとまぶたが開いた。

「…………あ、さぎ……?」

 ミセは体の節々の痛みを堪えながらも目を覚ます。

 生きていた。ミセがちゃんと生きていた。

 その事実を確認すると僕たちは一斉に胸をなでおろす。

 反応はそれぞれ。

 僕とメアさんの二人は互いに顔を見やり、微笑んで。

 アサギさんは申し訳なさそうな顔でミセを見下ろしていた。

 そんな中のミセの第一声が、

「……へんなかお……」

 だったもので。

「なっ」

 アサギさんは頬を紅潮させ、僕とメアさんは空気に耐え切れずになって思いきり噴き出した。

 緊張と緩和が生み出した絶妙な空気。

「あ、貴女ねえ……」

「まあまあ仕方ない仕方ない。アサギ、貴女が気にしているほどミセも私も気にしていないって言うことなのよ。こんなことはたまにあるぐらいで丁度いいんだから。人生ってそんなものよ?」

 ふん、と言いながらアサギさんが顔を逸らす。

 その横顔を見てミセが笑ったのを僕は見逃さなかった。

(本当は嬉しいくせに……ま、これは言わぬが花かな?)

 代わりに大事なことを伝えておこう。

 ミセが気絶している間に一体何があったのかを。

「ミセ、もう安心していい。桜井智の問題はもう解決したから。運がよかったんだ。レディが桜井智を見捨てて、桜井智は僕が倒したから。その証拠にアサギさんの洗脳もばっちり解けているでしょ?」

「倒して……?」

 片目を瞑り、ミセが訝しそうな目でこちらを、というよりは何かを窺うように、

「すみません。それはどういった意味で倒した、なのでしょうか? ゲームじゃないんだからスライムを倒した、なんていう曖昧な表現はやめませんか? ずばり聞きますけど、()()()と捉えてもいい?」

 と、聞き返してきた。

 なので僕は、


()()()()


 と、頷き返す。

 ミセは両目を瞑り、そして一考ののち、

「……そうですか」

 と、小さく頷いた。

「ま、ミセが無事だってことが分かって安心したよ。ほら」

 そう言って僕は彼女に手を差し伸べるとミセがその手を取ってゆっくりと立ち上がる。

 立ち上がった時に少しよろけたが、それでも生きているのなら万々歳だ。

 ミセは立ち上がるとゆっくりと壁にもたれかかり、メアさんとアサギさんに向かってある提案を持ち掛けた。

()()()()()()()ということは分かりました。これが一体どれだけの幸運なことかと感謝します。ですが、その幸運にさらに甘えてしまうのが今は利口でしょうね。アサギの洗脳が無事に解けているのなら、きっと、恐らく。他の皆の洗脳も解けているのかもしれませんから。だったら早々に行動を起こすべきかと」

「合流?」

 意図を真っ先に汲み取ったメアさんが一言言葉を漏らす。

「ええ」

 言葉にミセが頷き、

「私たちの最大目標はキャストの救出なのですから。ここに長居をする必要はありませんよね? とっとと合流してとっとと退散しましょう」

 と、会話を締めくくった。

「幸運に便乗するのも悪くないわね」

 メアさんがミセの提案を名案だとばかりに力強く頷く。

 別に彼女たちが弱いとは言わないがこの『結社』の大ボスであるレディを倒す必要はない。だったらミセの言う通り、やることだけをさっさと済ませてさっさと立ち去る方がいいに決まっている。

「ミセ、貴女は……」

 そうアサギさんが尋ねるとミセが小さく「うっ」と呻いた。

「ごめん……アサギ。私、まだ本調子とは言えなくて。悪いけど」

 と、辛そうな顔でミセが言葉を続けようとしているところにアサギさんが言葉を遮るように、

「いいの。分かっているから。……手伝えなんて言わない。そんなこと、言える訳がない。しばらく休んでて。私たちが他の皆を連れてくるから。こんなビルをくまなく探すくらい貴女がいなくても私とメアでどうとでもなるわ。……待ってて」

 と、言ってメアさんと共に頷いて地下の階段の方へと駆け出していった。

 それを見送るようにしてミセが小さく息を吐く。

「あの様子なら……大丈夫みたい。すっかりいつも通りのアサギだもの。……本当によかった」

 安堵しきった吐息を漏らしてミセが両の目を瞑る。

 本願を達成し、ミセは心の底から喜んでいた。

 が、それも束の間、再び目を開けたミセが僕のことを鋭い視線で見つめてきた。

「さて」

 鋭い、とは言ってもそれは眼光と呼ぶには程遠く、どちらかと言うとジト目のようなものだったが。

「人払いは済ませました。あの二人が素直だったことに感謝しつつ、久遠かなたに言いたいことが一つ」

 僕は。


 観念することにした。


「このうそつき」

 ミセはそう言いながら僕の方を見つめていた視線を僕から、遠く離れた位置で倒れている桜井智の方へと向けた。

「情報共有……お願い出来ますよね?」

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