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ヴァンプライフ!  作者: ししとう
scene.10
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163 少女は狐を追いかけ、少年はシスターの服を脱がそうとする

 一方その頃、久遠かなたはと言うと。


「だ、ダメですわ……こんな場所で……」

「あの……」

「ああ……! いけません! いけませんわ! そんな……無理矢理だなんて……そんな……そんなっ」

「…………」

「ああ……もう逃げ場はありませんのね……。もう……逃げるのにも疲れました。さあ……どうぞ。お好きにしてください。エロ同人のように、お好きに乱暴なさい! でも……わたくしの心はあなたには決して屈することはありませんことよっ!」

「……さっきから何言ってんです、このばか……」

 セラさんの脚本による即興コントに巻き込まれていた。

「あら?」

「あら? じゃないですよ。さっきから一人で何をやってんですか」

 僕の言葉にセラさんが大きく首を捻る。

「こういうの……お好きじゃありませんでした? 和姦の方がお好みで?」

「あー……分かりました。もう何でもいいんで、とっとと服を脱いでもらえませんかね」

「もう、ノリが悪いですわね……」

「悪ノリに付き合うほど暇じゃないんで」

 がしがしと頭を掻く。

「あー、もう! いいから早く服、上着(ヽヽ)をとっとと脱いでくださいよっ!!」

「上着? え?」

 本当に意味が通じているのか疑問に思うほどセラさんが首を傾げた。

 つーっとセラさんが自分の服の上着に指を這わせ、

「上着?」

 と、尋ねてきた。

 ついでに胸がぷるんっと震えた。

 す、すごい……。

「あのー本当に上着だけですの? それとも下半身は着たままがお好きとか、そういうマニアックな趣味がおありで」

「何を訳の分からないことを……って……」

 と、言って。

「ち、違いますからね! そういうんじゃないです!」

 何か大きな誤解になってセラさんに伝わっていることにようやく気が付く。

「だ、だいたい……僕はセラさんのこと……こう言っちゃなんですけどね! 女の人だなんて思ってませんからっ!」

「あらまあ」

「変態が過ぎるんですよっ! 変態(いこーる)女の人という公式が僕の中には存在しないんですっ!」

 と、言いつつも僕の顔が少し熱くなっている。

 中身は著しく変態(アレ)だとしても、セラさんの見た目は結構ドキッとしてしまうほど美麗なのである。

 そりゃあ……ドキッとする。

 変態(アレ)だけど……。変態(アレ)だけど……!

「で、でも……どうして服を脱げだなんてことを……?」

「あー……」

 確かにいきなり過ぎたかもしれない。

 理由の説明は必要か。

「いや、何です? ぶっちゃけるとですね……」

 言いかけて。

 このまま普通に理由を話していいのか、少しだけ迷った。

 正直に言うと……僕は教会のお化け騒動の犯人がセラさんなんじゃないのかと思っている。

 ……というか確信している。

 さきほどのセラさんの反応を見れば、きっと誰もがこいつ犯人じゃね? と、疑ってしかるべきだろう。

 僕もそのうちの一人だ。

 でも……物証はない。

 なので……僕としては物証が欲しくてセラさんに上着を脱いで見せて欲しい次第である。

 だけど……素直にそのことを言って。

(さすがにそこまで……おばかじゃないよなあ……この人だって)

 と、考えるわけである。

 んー……どうしよう?

 色々考えて。

 考えに考え抜いて。


「あの写真の男の子がもう一度見たくなって」


 面倒臭くなって、直球をぶん投げた。

 僕の言葉にセラさんが絶句した。

(さ、さすがに捻りがなかったか……)

 感付かれた……と、僕がセラさんの反応に困っていると。

「ん?」

 セラさんの違和感に気が付いた。

 セラさんは僕の言葉に絶句して固まっている、と思っていたのだが。

 どうも様子がおかしい。

 固まっていると思っていたら。

 ぷるぷる。

 微妙に震えていた。

 そして、

「んまっ」

 がしーっと僕の両肩を掴んできた。

「マジですの!」

 がくがくと体を揺すってくる。

「ど、どの子に興味がおありで!」

 ばさっと。

 セラさんは何の躊躇ちゅうちょも見せずに上着を脱いだ。

 目をキラキラさせながら、

「この子! この子ですの! あ、それともこちらの子ですの? この子もよろしいですのよ。どの子も愛らしいですの。もう……久遠くんったら、もったいぶって。本当はこちらの世界に興味がおありでしたのねっ! もう意地の悪いお・ひ・と♡」

 片手で自らが着込んでいるトゥニカの生地を指差し、もう片方の手で僕の体を思いっきり揺さぶっている。

「あーうー」

 あまりにも激しい勢いに軽く脳震盪を起こしそうになる。

 だけど……やっぱりそうだ。

「や、や、や……」

「矢?」

「やっぱりアンタが犯人じゃないか!」

 たまらず叫んだ。

 彼女の修道服の下の秘密。

 トゥニカの全身にプリントされた写真の数々。

 その写真はどれもあどけない表情の少年の姿が写されていた。

 この写真を見るのは二度目だ。

 そして、確信する。

「この写真に写っている子供たち……」

 そんでもって、やっぱり叫ぶ。


「この子もあの子もどの子も……ぜ~んぶ! あの教会で見かけたぞ!」

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