014 変態シスター現る
お昼。一時半ぐらい。昼食を終えてからしばらくして。
僕と母さん、クドも交えてある話題が持ち上がっていた。
「お母さんね、さすがにどうかと思うの」
「はい」
「???」
少し強めの、しかしぽわわんとした口調で僕は母さんに窘められていた。クドはよく分からないといった様子でその場をじーっと眺めていた。
「よく見たらクドちゃん、何もつけてないじゃない? かなたくんがそういうの好きでも女の子に押し付けちゃダメ」
「いや……僕が無理矢理そうさせているわけじゃ……」
「めっ」
めって……。一六歳の息子に、めって……。いや……うん、分かるよ。分かる。
そう、ある話題とは。
クドの下着問題だ。
忘れているかもしれないが、現在クドの服装は僕の制服の下に着るYシャツのみ、となっている。つまり裸にYシャツを一枚羽織っているだけということになる。ブラジャーもパンツも穿いていない。ほとんど素っ裸に近い。
で。なぜかそのアブナイ服装を僕が無理矢理クドに着せているということになっている。
問題となったきっかけは、クドが言った、
『ん? この服か? カナタに着せてもらったらしい。どうやらわたしが寝ている間にカナタが勝手に着せて、わたしの着ていた服をどこかにやってしまったらしい』
という嘘偽りゼロの言葉であった。
初めて母さんにじとりとした逆三角形みたいな目で睨まれた。
で、現在に至ると。
「さ、出してかなたくん」
「え……何を……」
「何って決まってるでしょ。クドちゃんの下着」
「いや……」
「むぅ。こんなに言っても出してくれないの」
「だから……」
「…………そっか。かなたくんも男の子だもんね。……そっか」
何かを納得したようにして母さんが遠い景色を見る。
絶対、ぜ~ったいに! 何かを誤解している! しかも親子の関係にヒビが入ってしまいそうなほど、生涯を掛けても修繕が不可能なほどの亀裂が!
「ち、違う……!」
僕は慌てて立った。
「ううん。いいの。いいの、かなたくん」
ふるふると首を横に振って母さんが笑う。
「かなたくんは……かなたくんだもんね」
声はとても優しい。
だけど、だけど!
「さ、クドちゃん。こっちにいらっしゃい。新しい服に着替えて新しい服を買いに行こ。大丈夫。かなたくんは思春期だからってだけ。ね、かなたくんのこと嫌いにならないでね」
「う、うん?」
優しい顔で、とても朗らかにクドの手を引いて、リビングを去っていく。
しばらくして。
「ち」
半ば涙目の僕は、
「違うんだあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
リビングで一人絶叫。
だが、とても言えなかった。
クドは逢った時から下着を身に着けていなかったという真実を。
最悪だった……。