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人間のなり方

作者: 出島優

ある日、とあるアリが「人間になりたい。」と思いました。

アリは人間になるために旅に出ました。


アリは花に会いました。

アリは聞きました。「どうしたら人間になれるかな?」と。

花は答えました。

「そうねえ、ここにある木や草をすべて引き抜いて燃やして、かたーいものを敷けばいいんじゃない。」

アリにはできそうにありませんでした。


アリはガゼルに会いました。

アリは聞きました。「どうしたら人間になれるかな?」と。

ガゼルは答えました。

「うーん、いっぱい生き物を殺して、その皮を着ればいい。」

また、アリにはできそうにありませんでした。


アリはイルカに会いました。

アリは聞きました。「どうしたら人間になれるかな?」と。

イルカは答えました。

「うん、この海を隅から隅まで汚して、そこを我が物顔で泳げばいいよ。でっかくてかたい魚でも使って。」

これも、アリにはできそうにありませんでした。


アリは疲れて座り込みました。

そして、あまり人間になりたくもなくなってきました。

自分がなんで人間になりたかったのかもわからなくなってきました。


そうやって休んでいたアリの前を、一人の人間が通りかかりました。

アリは「こんにちは。」と声をかけました。

人間は「おや珍しいね。どうしたんだい?」と答えました。

アリは人間に聞きました。「人間になりたくて旅をしてるんです。どうしたら人間になれますか?」と。

人間は驚いたような顔で立ち止まり、アリのことを見てこう言いました。

「人間になりたいだなんて、人間らしいことをいうものだね。ただ残念ながら、私もそのなり方とやらを探している最中なのさ。」と。

アリは言いました。「どうして?あなたはもう人間じゃないか。」と。

人間は、不意に空を見上げ、ゆっくりとこう言いました。



「人間というのはね、自分が人間かどうか、それがわからないんだよ。私たちは君たちより少し頭がよかった分、君たち生き物のすべてと違ってしまった。だから私たちは、自分が何者かわからないという孤独を抱えながら生きていかなくちゃいけないのさ。」


人間の頬に、一筋の涙がつたいました。

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