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第七話:盾と奴隷

「試して見たい戦い方があるのですが、よろしいですか?」


 訓練開始二日目、準備運動を終えた俺はフェリス様にそう願い出た。

 それを聞いたフェリス様は興味深げな顔をしながら了解してくれる。

 無事に許可を得た俺は、準備を整え訓練場中央で待つエリーゼ様の元へ向かう事にする。


「剣はどうしたのです?」


 盾しか装備していない俺に、エリーゼ様が怪訝な顔で尋ねる。


「私が持っても役にたたないので置いてきました」


 尚も何かを言いたげなエリーゼ様だったが、


「気にせず始めなさい、エリーゼ」


 エリーゼ様は後ろにいるフェリス様のその一言で黙り、俺に対し剣を構える。

 俺もそれに合わせて盾を正面に構えてエリーゼ様の動きをじっくりと観察する。


 これが昨日思いついた戦法だ。

 考えは単純。


 ゛守る事に特化させる゛


 という事だ。

 力も無く、技術も無い。そんな俺が複雑な事をしようと思うのが、そもそもの間違いなのだ。

 盾のみを両手で持ち、とにかく守り時間を稼ぐ。

 思えば、奴隷兵士の役目は魔法発動までの時間稼ぎであり、自らが相手を倒す必要はないのだ。

 選択肢が増えれば、それだけ判断に時間がかかる。迷いも出る。

 ならば、それらを減らせば減らすほど動きに無駄が無くなる。

 そう、所謂いわゆる゛肉壁゛というやつだ。


 ガンッ、ギャリンッ!


 エリーゼ様の振るう模擬剣が容赦なく俺を襲う。

 身体強化の魔法もあり、その一撃は早く重い。

 昨日はそれについていけず散々に吹っ飛ばされたのだが……。


 思った以上にいける!


 俺はエリーゼ様の攻撃を必死に受け流しながらもそう確信した。

 手加減されているという事もあるが、盾だけなら相手の動きを落ち着いて見れば、ついて行くぐらいは俺にも可能だ。ならば、後は恐れず相手の攻撃を盾に当てれば良いだけだ。下手に剣を持つから、相手に翻弄されてしまうのだ。

 だが、当然欠点もある。

 この方法は、当たり前の事だが攻撃力がゼロに近いのだ。

 ゼロでは無い。盾自体が鈍器のような物なのだから、相手によればダメージを十分与える事が出来るだろう。

 だが、それを考えれば途端に隙も多くなる。戦いに慣れるまでは、基本耐える一択にしなければならない。 

 この戦い方で行くという事は、どれだけ相手の殺意に耐えられるかという事だ。

 恐怖に負ければそこで全てが終わる。


 だが、それしか無い。

 少なくとも戦いに慣れるまではこれで行くしか無いだろう。

 俺はそう決意し、エリーゼ様に立ち向かう。

 

 それなりに善戦は出来たと思う。昨日に比べれば、驚くほどに長時間戦えたのだ。 

 まあ、最終的に空を飛んだ結末は一緒だったのだが……。


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