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第七十四話:旅の始まり

「貴方のその剣は何処で手に入れたのですか?」


 翌日、授業開始前にロゼッタが俺に質問をしてくる。

 どうやら俺の質問に対する答えを見つけたようだ。

 まあ、少し考えれば解る問題ではあったが……。


「この剣は偶然手に入れた物だ。特に参考になるような答えをあげる事は出来ないよ。それで、その質問をしてくるという事は自分なりの回答を見つけたという事か?」


「魔道具を使うという考えなら私にもありました。ですが、それを入手する事が出来れば苦労はありません。私が望むような物はどれだけお金を積んでも手に入りません」


 ロゼッタが俺の剣を羨ましそうに見ながら言う。


「ああ、そうらしいな。俺も事情に疎いんでその辺りは最近知ったんだ。だから、既存の物を探すのでは無く、作ればいい」


「不可能です。作り手も……、少なくともこの国には居ません。聞いた事がありません。仮にいたとしても、素材だってどれだけの物を用意すればいいのか……」


 ロゼッタの声が徐々に小さくなる。

 きっとこの辺りの事は当に考えた事があるのだろう。


「作り手には心当たりがある。材料も手間と時間を掛ければ入手可能だ」


 俺の答えにロゼッタが驚きの表情を見せる。


「だが、その為には今から言う事をすべてクリアしてもらう。それが絶対条件だ」


「……どれぐらいの物を作る事が出来るのですか?」


「人一人吹き飛ばせる威力の魔力弾を撃てる。回数制限はあるがな……」


「条件を……、どんな条件も飲みます。お願いします、教えて下さい。どうすればいいんですか?」


 ロゼッタが必死の表情で俺の服にしがみつく。

 俺はそんなロゼッタの頭を軽く撫でてやる。


「落ち着けロゼッタ。まず一つ目は、材料集めにはお前さん自身も同行してもらう。魔法使いになりたいという願いはお前さんのものだ。ならば、そうなる為の努力も自身でして貰わなければ意味が無い」


 俺の言葉に真剣な表情で頷くロゼッタ。

 

「その為に、ロゼッタには魔法以外の戦い方を覚えてもらう。材料集めには危険が伴う。ただ俺が戦ってお前さんはついてくるだけでは意味が無い。当然戦いもして貰らう。その為に武器の扱いから覚えてもらう」


「ですが、今から覚えていくとなると時間がかかり過ぎるのでは?」


 今まで静かに成り行きを見守っていたアデリシアが言ってくる。


「ああ。だから短時間で習得可能な武器、銃を使えるようになってもらうつもりだ」


 この辺は爺さんと相談して決めた事だ、この世界で銃は比較的新しい武器らしい。扱いやすく威力もあるが、金がかかる武器でもある。だが、金持ちのロゼッタならその点は問題ないだろう。


「銃なら使い方を覚えれば比較的簡単に実戦に出れるだろう。金銭的にはかなりかかると思うが……」


「問題ありません。お金なら大丈夫です」


 ロゼッタが言う。


「よし、なら二つ目だ。二つ目の条件は、お前さんの親を説得する事だ。今回の素材集めは結構な危険も伴う。学校的には校外学習という名目で許可は下りるが、その為には保護者の同意が必要だ。最悪死の危険もある。保護者の同意が得られなければ、今回の話自体無かった事にする」


 ロゼッタはコクリと頷く。


「よし、じゃあ早速保護者の同意を貰ってこい。貰えたら教頭の所に行け。教頭の知り合いの武器商が銃も扱っているらしい」


 ロゼッタは返事をすると寮に向かって走って行く。その足取りは軽く、浮かれている様がよく見える。


「それで……、私たちは如何すれば良いのですか?」


 アデリシアが走り去っていくロゼッタを見送りながら聞いてくる。

 ロイもその横で頷いている。


「如何したい?」


「私はついて行きたいですわ」


「ぼ、僕も行きたいです」


「なら、お前たちも保護者の許可をとってこい」


 俺の言葉に頷く二人。


「あ、あとアデリシア」


「はい? 何ですか先生」


「旅の間は俺を狙うのは禁止だ」


「……そ、そんな……」


 信じられないといった表情を見せるアデリシア。

 というか、こいつそれが目的だったんだろうな……。


「当然だ。学校内とはわけが違う。俺だって余裕は無い。小さなミス一つが死に繋がるんだ」


 悔しそうな顔をするアデリシア。正論なので何も言えないのだろう。


『主様よ』 


 と、シェルファニールが俺に囁いてくる。


 ……まあ、そう言えと言うなら言うが……。

 

 俺はシェルファニールに言われた事をアデリシアに伝える事にする。


「アデリシア。もし、俺との約束をきちんと守ったらご褒美をやろう」


 俺の言葉にアデリシアが顔を輝かせる。


「な、何を下さるのですか? 血ですか? 血ですよね?」


「いや、まあ……、そいつは秘密だ。楽しみは後にとっておけ……」


 シェルファニールも秘密じゃと何も教えてくれないので言葉を濁す。

 こいつ……、本当に大丈夫なのだろうか……。まさかとは思うが、俺を……。


『くっくっく。まあ、心配せんでよいぞ。主様よ』


 そうは言うが、何も教えてくれないのは不安でしょうがない。

 

「解りましたわ。約束します」


 アデリシアが笑顔で約束する。

 その後、ロゼッタ同様保護者の許可を得る為に二人とも寮まで走って行く。


『あの女子はともかく、坊主を連れて行くのは危険ではないのか? 足手まといが二人と言うのは負担が大きいのではないかのぉ』


 シェルファニールが危惧する。


「ああ、それは俺も迷った。でも、ロイだけ置いていくと言うのもアレだし……。それに、旅をする事で成長する事も期待している。案外旅の間にトラウマ克服という事もあるかも知れないしな。危険だけど冒すだけの価値はあると思う。それに、保護者の許可が下りると決まった訳でもない。すべてはそこからだよ」


 俺の答えに成程と納得するシェルファニール。


「さてと、俺も旅支度をしないと。すぐに出発と言う訳ではないけど、気ままな一人旅と言う訳でもないしな。爺さんに注意点とか必要な物とか事前に聞いとかないと」


 俺はそう言い、職員室へ向かって歩き出した。

 すべての準備が整うのに二週間ぐらいといった所だろうか?

 

『楽しそうじゃな。やはり一所におるのは詰まらぬか?』


「ああ、そうだな。折角異世界に来たんだから、色々な所に行きたいよ。特にドラゴンとかちょー見てぇし」


 ドラゴンといえば、見てよし、素材でよし、戦ってよしのファンタジーの定番生物だ。楽しみ過ぎて少し浮かれている自分に気づく。

 

『くっくっく、随分浮かれておるのぉ』


「ああ。ドラゴンは男のロマンだからな」


 俺はシェルファニールの言葉に笑顔で答えながら、また始まる冒険の旅に心を躍らせた。  


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