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第七十三話:魔道具を作ろう

「なあ、シェルファニール。俺も魔力は無いが、お前と契約したから魔法を使えるようになった訳だが、同じような事をロゼッタも出来ない物なのか?」


 部屋のベッドで寝転がりながら俺はシェルファニールに問いかける。

 

「……出来なくはない。魔人またはそれに類する者と契約を交わせば、何かしらの形では使えるようになるじゃろうな。だがお勧めは出来ん。我がお主を好いておるからこそこのような関係が築けておるが、迂闊な者と契約を交わすのはかなり危険じゃよ」


 中央のテーブルでお茶を飲みながらシェルファニールは忠告する。

 言われれば、シェルファニールは無償で力を貸してくれているのだ。そのような物好きが他にいるとは考えにくい。いいように騙されて酷い目に遭う可能性もあるのだ。


「契約なぞ考えず、魔法の武器やアイテムを使えばもっと手っ取り早いのではないのか?」


「ああ、それも考えた。だが、爺さんに聞いてみたらそう言ったアイテムは滅多に手に入らないらしい。切れ味上昇や軽量化なんかの地味な魔法武器なんかはある程度金を積めば手に入るらしいが、ロゼッタが望む姿はそういう物じゃないだろうな」


「買えないのなら作ればよいのではないか?」


「作れる者も滅多にいないらしいし、そもそも作る為の材料がなかなか手に入らないものばかりらしいんだ」


「材料さえ集めてくれれば、我が作るぞ?」


「……作れるの?」


「作れるぞ」


「早よ言えやぁぁぁぁ!」


 俺はベットから起き上がり叫ぶ。


「済まぬ。我も忘れておったのじゃよ。そもそも我には不要な物じゃからな」


「ちなみに、どれ位の物が作れるんだ?」


「まあ、大した物は無理じゃよ。魔力弾を飛ばして、精々人一人を粉々にするぐらいじゃ」


「……いや、十分過ぎるぞ。俺も欲しいわ」


「お主には不要じゃよ。魔法障壁を張られれば弾かれる程度の威力じゃし、そもそも回数制限がある。魔剣に比べれば子供騙しもいい代物じゃよ。逆に聞くが、その程度の物であの女子は満足するのかのぉ?」


 シェルファニールの問いに俺はしばし黙考する。


「……恐らくだが、大丈夫だと思う。昨日話した感じでは、どちらかと言うと本人も諦めていた節があった。それを認めたくないとの病的な拘りから今の状態にあるみたいだからな。形的に魔法使いらしい事が

出来るだけで満足すると思う」


 まったく使えないと言う状況が変わるのだ。例えるなら、かめはめ波を撃ちたくても撃てなかった奴が道具使ったらどどん波が撃てたみたいな……。うーむ、自分で言ってて意味が解らんがそんな感じだと思う……。


「良かったのぉ。これであ奴が何時答え合わせに尋ねて来ても回答する事が出来るのぉ」


 シェルファニールの言葉に、俺は昨日の事を思い出していた。


 この学校に来てから一か月程が過ぎた。

 俺は素手で槍を持つロイを相手に手合せをした後、木陰で休憩を取っていた。

 ロイは取り敢えず走らせている。最近のロイは文句を言わず素直にいう事を聞くようになった。

 それなりに教師として認められたのかも知れないな……。


『あの者も、相手が素手なら問題なく戦えるのだな』


 シェルファニールが手合せの感想を言う。素手とは言え、魔法で身体強化をしていたので武器を持つのと変わらないレベルで手合せをしたのだが、十分な腕だった。


「心の問題だけだな。如何にして克服する気にさせるかだが……、考えがある」


『ほう、どうする気じゃ?』


「うまく行くかはやってみないとわからないが、あいつの男としてのプライドを少し刺激してみようかなと」


『男のプライド?』

 

「ああ。現状、ロイ・ロゼッタ・アデリシアの三人が問題児として集められている。これは言い換えれば同じような連中が集まってぬるま湯に浸っているようなものだと俺は思うんだ。だから、他の二人の問題を解決してしまえば……」


『……成程のぉ。一人取り残されれば焦りもするという事か……』

 

「ああ、元々ロイはこの学校に来た当初は直す気があったらしいし、その時の気持ちを取り戻すんじゃないかと思うんだ」


『ふむ。狙いはわかったが、具体的に残りの二人の問題を如何する気じゃ?』


「アデリシアに関しては、今のままでいいかも知れない。ロイはあいつに惚れているんだから、格好悪い姿を見せたくはないという気持ちがあるはずだ。それに、アデリシアは嗜好に問題はあるが、能力的にはこの学校でもトップクラスだ。だからロゼッタの問題をクリアしてしまえば、ロイもかなり焦ると思うんだ」


『自分と同じような落ちこぼれがいなくなれば、心中穏やかではいられないじゃろうな』


「まあ、そこまでしてもダメならもう見込みは無いだろうな」


 その時は見捨てても良い気がする。冷たいかも知れないが、本人にやる気がないなら周りが何をやっても無駄だ。


『そうじゃな。ところで主様よ、気付いておるか?』


「ああ、背後の茂みを音を立てずに近づいてきてるな。しかし……、凄い技術だな。魔法で強化してなければ絶対に気付けなかったと思うぞ」


 俺は気付いてない振りをしながら、剣を持つ手に力を込める。

 暫く目を閉じて寝たふりをしていると、突如茂みから何者かが飛び掛かってきた。


 ガキィーン!


 飛び出した何者かが持つ幅広のナイフを俺は剣で弾き飛ばす。

 完璧に隙を突いたと思っていた何者かは、空になった手と俺の顔を見ながら驚きの表情を見せる。


「何か用かい? アデリシア。俺の記憶が確かなら、今日は体調不良で欠席すると聞いていたんだがな?」


 俺は襲撃者に対してにっこりと笑う。


「こんにちわ、先生。先ほど元気に回復しましたので、真っ先にご報告しようかと飛んできました」


 襲撃者……、アデリシアもにっこりと笑う。


「ああ、本当に茂みから飛んできたね。驚いたよ」


「ええ、木陰で隙だらけ……、いえ休憩している先生の姿を見つけたら、嬉しさのあまりつい……」


「残念だったね、アデリシア。俺は休憩中も常に周囲を警戒してるんだよ。知らなかったかい?」


「ええ、ですが私が欠席していると油断されているかと思いましたので」


「先生は君が病気になるなんて考えた事も無いよ。僕は君がいつも元気一杯な少女と信じているからね」


「あら、嬉しいですわ。ですが、私もか弱い乙女なんですのよ」


「はっはっはっは。アデリシアは冗談が上手いな」


「それ程でもありませんわ」


 はははははっと笑いあう二人。


「それで、今回の私の敗因は何ですか?」


 アデリシアが真顔になり聞いてくる。

 以前のような怒りや憎しみのような感情はまったく感じない。最近のアデリシアは俺の事を乗り越えるべき壁と思っているようだ。

 

「そうだな……、まず今回アデリシアは策を弄してきたけど策はばれている時点で無意味になる。だから今回のような病気で欠席などと言う理由は疑わしい時点で策になっていない。むしろ策とばれている事を逆手に取る方がまだ上策だっただろう。二つ目は、上手く気配や音を消していたけど、相手が五感を強化出来る時点でその努力も無駄だ。どれだけ頑張っても人は気配も音も完全には消せない」


 俺のダメ出しにうぅぅっと呻くアデリシア。

 行動は困った子だけど、最近のアデリシアは素直で可愛らしい面を多々見せる。結構俺の事を先生と認めてくれている感じがする。


「それでは……、例えば先生ならどういった方法を取りますか?」


「……その質問は、『どうやったら貴方を殺せますか?』って聞かれているようなもんだと思うんだが……」


「いいじゃないですかぁ。可愛い生徒の質問なんですから、答えて下さいよぉ」


 アデリシアが上目使いで可愛らしく言ってくる。


「いやだ。執拗に俺の頸動脈を狙ってくる生徒は可愛い生徒では断じて無い。それに考えるのも授業の内だ」


 恐ろしい事に最近のアデリシアの攻撃はすべて俺の頸動脈狙いだ。

 何度も撃退されるうちに、ただ刺すだけでは満足出来ず、派手に血の花咲かせる勝利を目指しているようだ。


「うぅぅ、先生のケチンボ……」


 頬を膨らませるアデリシア。その可愛い仕草に絆されそうになるが……。


 危ない危ない、唯でさえ最近の攻撃はかなりヤバいレベルなのだ。敵に塩を送る余裕はない。


「べぇーだ。先生のケチ」


 アデリシアがあっかんベーと舌を出してこの場を去ろうとする。


「あ、すまないアデリシア。ロゼッタが何処にいるか知らないか?」


 俺は去っていくアデリシアの背中に向けて声を掛ける。


「ロゼッタなら教室で本を読んでいましたわよ?」


 アデリシアは俺の声に振り向いてそう答える。

 俺はアデリシアに礼を言うと、教室に向かって歩き出した。


『ちなみに、先ほどの質問の答えに我も興味があるんじゃがな……。お主ならどういう手を使うのじゃ?』


 シェルファニールが問いかけてくる。


「……まあ、俺ならまず相手を自分に有利なフィールドに誘き寄せるか又は待ち伏せるかだな。その方法としては相手がその場所に来ざるを得ないようにするか、相手の行動を調べてその行動に合わせるかって所かな。気配に関しては単純に人混みに紛れるよ。俺ならね」


『成程のぉ。確かに成功率は高そうじゃな』


「とは言え、俺も実際に試した事はないから上手く行くかは想像でしかないんだけどね」


『なんじゃ、それならいっそのことあ奴に試させればよかろうに』


「あのなぁ……、上手く行って血の花咲かせるのは俺なんだから……」


 それもそうじゃと笑うシェルファニール。

 二人でそんな会話をしながら俺は教室へと向かって歩いた。

 教室に着くと、ロゼッタが椅子に座って本を読んでいる姿が見えたので、俺はそんなロゼッタに近づき声を掛ける。


「やあ、ロゼッタ。何を読んでるんだい?」


 俺はフレンドリーに話しかける。

 未だ俺とロゼッタの関係はあまり上手くいっていない。基本的にロゼッタは俺の授業をボイコットしている。アデリシアの協力のお蔭で完璧に無視される事は無いが、逆に言えばアデリシアがいないとコミュニケーションが取れない状況だ。

 案の定、ロゼッタはこちらを見ようともしない。

 俺は本のタイトルを見てみようと覗き込んでみる。


「ただの小説です」


 本を読みながらではあるが、珍しく答えてきた。


「へぇー。どういった小説なんだ? 俺も昔はよく小説を読んでたんだ」


 ラノベだが……。


「魔法を使えなかった主人公が魔法使いになる話です」


「凄いな、ロゼッタにピッタリの本じゃないか。その主人公はどうやって魔法使いになるんだ?」


「……突然何かに目覚めて……」


「そんな本読むの止めちまえよ……」


 クソノベルじゃねぇか……。


「貴方には関係ないです。黙っていて下さい」


 ロゼッタはそっけなく言ってくる。

 

 さて、どうするか……。

 俺に興味を持ってもらわないと先に進めそうもない。こうなると……、もうこれしかないな……。


「なあ、ロゼッタ」


「…………」


 完全に無視してくるロゼッタ。気紛れはもう終わったようだ。

 だから、俺は無視できない事を言う事にする。


「俺も以前は魔力が無かったと言ったらどうする?」


 ビクッと俺の言葉に素早く反応するロゼッタ。


「……いい加減な事を言わないで下さい」


 暫くして、少し不機嫌そうに言ってくるロゼッタ。

 どうやらからかっていると思っているようだ。


「いい加減な事……、ねぇ……。お前さぁ、本心では諦めてるんだろ? 出なければそんな答えが出てくる訳がないと思うぞ」


 俺の言葉にギッと睨み付けてくるロゼッタ。


「じゃあ、どうやれば私も貴方みたいに魔法が使えるようになれるんですか? 教えて下さい」


 ロゼッタは俺を睨みつけたまま、不機嫌な声で言う。


「……おいおい、お前もアデリシアも楽しようとするなよ。何でも簡単に聞くのではなく、自分で答えを見つける努力をしろよ。その答えに採点をするのが俺の仕事だ。」


 ロゼッタは相変わらず俺を睨みつけたままだ。


「まあ、取り敢えずその下らねぇ小説を読むのは止めておけ。突然何かに目覚めるのを期待するよりもっと現実的な答えを探せ」


 俺はそう言って教室を出ようとする。


「自分なりの答えが見つかったら俺の所に来い。採点をしてやる」


 最後にそう言って手を振ると俺はそのまま教室を後にした。

 

 これらの出来事が昨日の事だ。

 

「あぶねぇ……。あれだけ格好つけて答えられなかったらヤバい所だった」


「くくくっ。信頼度が更に下がっただろうな」 


 これ以上信頼度が下がったら会話も出来なくなっていたかもしれん。

 

「まあ、これでロゼッタの今後の方向は決まったんだが……、取り敢えず材料集めの事を考えるか」


 俺はベットの縁に腰掛ける。


「どう言った材料が必要なんだ?」


「……そうじゃな、まずは……、魔人の血かのぉ……」


「魔人の血ですか?」


「うむ、高位で強く気高く美しくナイスバディな女魔人の血が必要じゃな」


「……肩をお揉みしましょうか?」


「……全身隈なくやってもらおうかのぉ」


 俺はシェルファニールをベットにうつ伏せに寝かせるとその上に跨ぎ、肩から腰にかけてマッサージを始める。


「力加減は如何ですか? シェルファニールさん?」


「うむ、良いぞ……。あ、そこはもっと強くじゃ」


 シェルファニールは気持ちよさげに言ってくる。

 

「他に何かご要望はありますか? シェルファニール様?」


 俺はさらに下手に問う。


「そうじゃな……。今度街にデートに連れて行ってほしいのぉ。いつも剣の中では詰まらんしのぉ……」


「……わかったよ。近いうちに連れて行く。約束するよ」


「くっくっく、約束じゃぞ。まあ、要望はこれぐらいにしといてやるわ」


「ああ、それぐらいでいいなら助かるよ。済まないな、シェルファニール」


 俺はシェルファニールの体を揉み解しながら謝る。

 本当に俺は此奴に助けられてばかりだ……。

 

 他に必要な物を聞きながら、俺はシェルファニールの体を揉み続ける。


「まあ、必要な物はこれぐらいじゃな。恐らく人間にとって一番手に入れにくい魔人の血がすでにあるのじゃから、あと難しい物はドラゴン系の素材ぐらいじゃな」


「ああ、その辺りは今度爺さんに色々聞いてみるよ」


 金で手に入る物と、自力で入手する必要がある物とを確認しながら今後の事を考える事にしよう。

 取り敢えずの方針が決まりホッとする。後は、苦労を掛けてばかりのシェルファニールにサービスするべく、俺は全力で彼女の体を揉み続ける。


「しかし、こうしてると魔人も人もあまり変わらない気がするんだがな……」


 俺は普通の女のように柔らかいシェルファニールの体を揉みながらそう言う。

 

「今、我は肉体に魔力を全く使っておらんからのぉ。今の我の体は人間の女と変わらん状態じゃぞ」


 魔人の強い肉体も永遠の寿命も全て魔力によるものらしい。


「魔人と人の一番の違いは魔力の使い方じゃよ。魔人は強大な魔力を自由自在に操る事が出来るが、人は例え魔人同様の強大な魔力を持っていても、それを限られた事にしか使えん。それが人の限界なんじゃよ」


「へぇー。そう言うもんなんだ……」


「ああ、そうじゃよ。じゃから……、今なら簡単に我を殺す事も出来るんじゃぞ?」


 今なら魔人殺しの英雄になる事が出来るんだぞと言ってくるシェルファニール。

 それを聞いた俺は……。


 パシーン!


 思いっきりシェルファニールの尻を引っ叩いてやった。

 大きく柔らかい尻が激しく揺れる。


「きゃん! な、何をするんじゃお主……」


「『何をするんじゃ』じゃねぇよ。詰まらねぇ事を言った罰だ。言っとくけどな、お前は俺の大切な相棒なんだからな。俺は俺より先にお前を死なせるような事は絶対にしねぇ。冗談でもそんな事は言うな」


 パシーン!


 取り敢えず、何か気持ち良かったのでもう一回尻を叩いておく。


「わ、わかった。我が悪かった。謝るから尻を叩くのをやめてくれ。お主がどんな反応をするか見てみたかっただけじゃ。ほんの悪戯心なんじゃ……」


「まったく……」


 パシーン!


 名残惜しかったので最後にもう一発尻を叩く。

 叩くと同時に「ひゃん!」と悲鳴が聞こえる。


「これで許してやるから、もう詰まらねぇ事言うなよ」


 俺はそう言って、太股から脹脛にかけて揉んでやる。

 

「うぅぅ、すまぬ……」


 弱々しい声で謝るシェルファニール。


 シェルファニールが俺の前で魔力を使ってないという事は、それだけ俺の事を信頼してくれているという事だ。

 俺はその信頼を裏切るような真似は絶対にしない。


 まったく……。


 何と無くお仕置きが物足りない気がしてきたので、取り敢えず足裏マッサージは力一杯やる事にしよう……。


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