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第三十一話:新たなる祭りの始まり

 冒険者……。

 異世界ファンタジー物ではありがちな職業である。

 俺のいるこの世界でも、例にもれず冒険者が存在する。

 この世界での冒険者の主な役割は、探索・討伐・護衛といったこれもまたありがちなものである。

 冒険者になる為に必要な事は、冒険者管理組合、通称冒険者ギルドへと登録する事だ。

 ギルドに登録すると、まず冒険者の身分を証明する魔法の指輪を渡される。

 この指輪には特殊な魔法の仕掛けがあり、専用の魔道具を使う事で内容の登録から情報の表示までが出来るようになっている。

 次にパーティーの登録だ。

 無論一人でも構わないが、基本は複数名のパーティーを組む。

 パーティーの登録がなされると、そのパーティーにランクが付けられる。

 最初はFランクから始まり、仕事の達成など功績によりE→D→C→B→A→Sと上がっていく。

 ランクはそのパーティーの実力の目安ともなっているので、これにより引き受ける事が出来る仕事が増えていく。

 後は日々ギルドから仕事を受けるか、ある程度知名度が上がれば直接依頼を受けるかなどしていくのだ。

 ギルドを通さず仕事を受けるのも可能だが、その際はギルドのサポートを受ける事が出来ないので、報酬の未払いなどトラブルも多いらしい。

 また、ランクの上昇もされないので基本的にはギルド経由で依頼を受ける方がいいとエリーゼ様は言っている。

 そして、最後に注意する事は、ギルドに登録する際には身分の証明が必須であり、その後更新する為には仕事の実績とその他義務的な仕事があり、それらを怠ると資格がはく奪されるらしい。


 俺達は今王都ローゼスの宿屋に宿泊している。三人部屋の一室を長期契約で借りて拠点としている。

 当初部屋を二部屋借りるべきと俺は主張した。


「俺の国の言葉で、男女七歳にして席を同じうせずというものがあります。これは七歳にもなれば男女の違いを理解させ同じ場所に座らせてはならないという意味です。私たちはもういい大人です。言いたい事が解って頂けると思いますが」


 俺はハッキリと主張する。

 美人二人と同部屋、他人からすれば羨ましいと思うかも知れないが、本人からすれば常に気を遣い続けなければならない状況という事になる。特にこの二人となると、混ぜるな危険の表記が必要だ。俺は、俺自身の心の安寧を守る為、ここは譲ってはならない所だと決意した。


「ほう、なかなか良い言葉ですね。ですがそれは貴方の国の言葉ですので関係ありませんね」


「なに? あんた私たちに何かするつもり?勇気は認めてあげるけど、お奨めはしないわよ。一応気を使って、優しい表現を使ってあげるけど、人間って、極限まで恐怖を与えると死ぬのよ」


 無駄な行為だった。


「だいたい、その様な非効率的な事をしていられません。私たちは今後もこのパーティーで活動するのですから。大体、ここに来るまで野宿などでいつも一緒にいたではないですか。何を今さら……」


「そうよ、第一お金だってもったいないじゃない。私もエリーゼも気にしないんだから、問題ないじゃない」


 そこに俺の意見が入っていないのが問題なのだが……。

 結局俺の意見は聞き入れられず、三人部屋での生活が始まる事となった。


「さて、では荷物の整理も終わった事ですし早速ギルドへと行きましょう」


 暫らくの休憩後、エリーゼ様が立ち上がってそう言った。

 向かうギルドは王都にある冒険者ギルドローゼリア本部。この国のギルドを束ねている所だ。

 少し大きな街には大抵ギルドはあるのだが、かつてエリーゼ様が冒険者をしていた頃、拠点としていたのが王都であり、ギルドに未だ顔見知りが多くいる事もあり、俺たちは取り敢えずの拠点を王都に決めたのだ。

 ちなみにこの宿もエリーゼ様がかつて拠点としていた所だそうだ。


 宿を出て少し歩くとレンガで作られた四階建ての大きな建物が見えてくる。

 あれが冒険者ギルドらしい。

 拠点からかなり近い。

 よくあの宿で部屋を借りれたものだと感心する。

 これだけ良い立地条件なら、借り手は山ほどいるだろうに。

 エリーゼ様は、伝手を使えば如何とでもなりますよ。等と言っていたが。

 どんな伝手を使ったんだか……。

 未だ謎の多い人だ。


 入口の扉を開き中に入ると、受付が見える。

 エリーゼ様がそこに向かって真っすぐ歩いていく。


「ログナー殿にお会いしたい。エリーゼ・テリアスが来たと彼に伝えてもらえるだろうか」


 エリーゼ様が受付の女性にそう言う。

 受付の女性がエリーゼ様の顔をしばらく見つめた後、少々お待ちくださいと言って席を離れて行った。

 離れてすぐに戻ってくると、俺達を奥の部屋へと案内してくれた。


 部屋に入ると白髪にながい白髭を生やし、ゆったりとした紫色のローブを着た老人が笑顔で迎えてくれた。


「久しぶりだな、剣鬼。何年ぶりになるかな」


「お久しぶりです、ログナー。四~五年といった所でしょうか……。あとそのあだ名で私を呼ぶのを止めなさい」


 エリーゼ様は表情を変えずにそう言い、俺達をログナーさんに紹介する。


「こちらがフェリス・オーモンド辺境伯令嬢、その横の男が小野寺高志。これから私とパーティーを組んで冒険者として活動する予定の者たちです。今日は冒険者登録をお願いに来ました」


「ほう。復帰するのか、お前さん。これは嬉しい知らせだ。初めましてフェリス殿、小野寺殿。私はこのギルドの本部長をしておるログナーと申す。エリーゼとは古い付き合いでな。以後よろしくお願いするよ」


「初めまして、ログナーさん。私の事はフェリスでいいわよ」


「初めまして、俺の事も高志と呼んで下さい」


「ふむ、では双方堅苦しい付き合いは抜きと行きますか、ワシの事もログナーと呼んで下され」


 俺達は互いに挨拶を交わして、部屋中央のソファーに座る。

 ログナーさんが魔道具と指輪を持って対面にすわり、登録の準備を始める。

 指輪を魔道具にセットして、ログナーさんが手を翳す。

 すると、魔道具が光を発し様々な文字を空中に浮かび上がらせる。


 パソコンみたいな感じだ。


 行き過ぎた科学は魔法と変わらないという事と同じように、魔法も突き詰めると科学と変わらないのかもしれない。


「パーティーランクはどうする?以前のお前さんのランクで登録するのか?」


 ログナーさんがエリーゼ様に問いかける。


「いいえ、二人は初心者ですので最低ランクからでお願いします」


 少し考えた後、エリーゼ様はそう答えた。


「ふむ、そうじゃな。最初は退屈かもしれんがその方が良かろう」


 そう言うとまた作業に入りだした。


「フェリス嬢ちゃんは魔法使いで登録するとして、高志の職業はなんだね?」


 ログナーさんの質問に俺は奴隷と答えた。


「ほう、お主奴隷じゃったか。しかし、お主らを見ているととてもそう見えんがのぉ」


「ええ、彼はフェリス様の奴隷ではありますが、大切な仲間でもあります。ですから、登録に際し奴隷の条件はすべて無くして頂いて構いません。通常の条件で登録をお願いします」


「通常の条件?」


「ふむ、説明した方が良さそうだのぉ。通常奴隷を登録する際には、多くの罰則や条件を付加するんじゃ。例えば、報酬に関しては全額主人の物だとか、逃亡など何らかの罪若しくは禁止事項を犯した際の罰則などをな。それらは基本主人の意向がそのまま反映される。緩い者もおれば、厳しい者もおる。お前さんの場合はそれらの罰則や条件を一切付加せん。まあ、早い話同等の扱いという事じゃな」


 その説明を聞いて俺は二人を見る。


「なによ、当たり前じゃない。でも、あんたが私の奴隷って事は忘れるんじゃないわよ」


「そういう事です。まあ、貴方が私たちの玩具……、いえ奴隷という事は貴方自身が骨の髄まで解っていると信じていますから。もし解っていなくても、罰則や条件など必要ありません。私たちが直接解らせれば良いだけですからね」


 あんたら、偶には真っ当に感謝させてくれ。

 そんな俺達のやり取りをログナーさんはニコニコとしながら見ている。


「お主、随分と変わったのぉ」


 作業をしながら、ログナーさんがそう言う。


「黙りなさい。変な事を言わないで下さい。私は昔からこんな感じです。ボケたのですか?」


 エリーゼ様が珍しく焦った声を出す。


 俺とフェリス様は顔を見合わせニヤリと笑う。

 珍しい、この連携は初めての事ではないだろうか?


「昔のエリーゼってどんな感じだったの?」


「俺も気になります。やはりこれからパーティーを組む上で、相手の過去を知る事は重要だと思います」


 俺達は二人でログナーさんに質問する。ログナーさんもそんな俺達をみてニヤリと笑う。


「余計な事を言う必要はありません、ログナー。あと高志はそのセリフを言う資格はありません」


 珍しく余裕が無い。よっぽど昔を知られたくないのだろう。

 だが無駄な抵抗だ。


「こやつはな、常に一人で行動しておった。人が自分に近づくのを随分と嫌っておってのぉ。じゃが、昔から見た目が良いから、いろんな連中がこいつにちょっかいを掛けてな。その都度力づくで相手を吹き飛ばしておったよ。無表情で不機嫌、邪魔な者はすべて剣で排除する。ついたあだ名が剣鬼じゃ」


 エリーゼ様はそっぽを向いている。


「へぇ~。でも確かに出会った当初のエリーゼってそんな感じだったかなぁ?」


「そうじゃ、ワシは一度聞いてみたかったんじゃ。お前さん、どうやってエリーゼを騎士にしたんじゃ? こやつが人に仕えるなど、ワシはあの頃想像もしておらんかった。ワシは、きっとこいつは結婚も出来ず一人寂しい老後を迎えるとばかり思っておったんじゃ」


「ずいぶん失礼な事を思っていたのですね」


 突っ込みに何時ものキレが感じられない。

 ダメージがかなり大きいようだ。

 よく見ると、顔が少し赤い。


「別にぃ? スカウトして断られたから、決闘して私が勝ったら騎士になれって掛けをしただけよ」


「お前さん、こやつと決闘して勝ったのか? 驚きじゃな」


「待ちなさい、その表現は正しくありません。卑怯な手で私を罠に嵌めただけではありませんか」


「……罠?」


「うふふっ、べーつにぃ。ただ、こっちの手の者を審判にして、私の詠唱が終わるまで開始の合図を出させなかっただけよ」


 なるほど。普通にやれば瞬殺でエリーゼ様が勝つに決まっているが……。エリーゼ様もそう思ったから決闘に乗ったんだろうな。


「なるほどのぉ。じゃが、今のお前さんを見ておるとそれで良かったと思えるぞ」


「否定はしませんよ。昔の事はあまり思い出したくありません。若気の至りです」


 エリーゼ様はかなり恥ずかしそうにしている。

 人に歴史あり。

 今の姿を見ていると昔のエリーゼ様の姿が想像出来ない。

 フェリス様に散々振り回されて、角が取れて丸くなったって所か。

 サドい所は昔の名残りみたいなもんか……。


「高志。骨の髄まで理解していると思っていたのですが、どうやらまだまだ私は甘かったようですね」


 エリーゼ様が俺を見て小さくそう呟く。

 だが、顔を羞恥で染めているのでそのセリフは寧ろ可愛いく感じる。


「さて、指輪の登録はこれで完了じゃ。今日からお主らは冒険者となった。良き冒険に出会える事を祈っておるぞ」


 俺達は指輪を嵌める。

 楽しみだ。

 いったいどんな冒険が俺を待ち受けているのだろう? 


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