第十六話:最強の父現る
コンコン、と扉をノックする音が聞こえる。
いや、正確には扉の無い入口から何故かノックの音がする。
入口を見ると、白髪の老人が一人立っている。格好から見るに執事といった所だろう。
しかしあの老人、どうやってノックした……。
「ここは奴隷部屋ですから……。用があれば勝手に入って下さい……」
俺がそう言うと老人は失礼致します。と一礼して部屋へと入り、俺の前にやってくる。
「貴方様が高志様で御座いますか?」
老人は丁寧な口調でそう尋ねる。
「そうですが、貴方は?」
「これは失礼を致しました。私はセドリック様の執事をしておりますセバスと申します。主より、貴方様をお迎えに上がるよう仰せつかりました」
丁寧に一礼する。
「えっと、セバス様……」
俺が何か言おうとすると
「様は不要でございます。高志様」
「えっと、俺にも様は要りませんよ……」
「そう言う訳には参りません」
「…………」
なにか特別なこだわりでもあるのだろうか?
「では、セバスさん。俺はこれから訓練に行かないといけないんですが」
「問題御座いません。すでにそちらの了解は取り付けております」
「…………」
なんだろう、この根回しの良さ……。
「えっと、セドリック伯爵様が俺のような奴隷にどんな御用が?」
用など一つしか考えられないが、あえて尋ねる。
「はい、主様が是非一度貴方様とお会いしてゆっくりとお話しがしてみたいと、そう申しております」
「…………」
俺に拒否権は無い……。無駄な抵抗はやめるか……。
セバスさんの後ろをついていく。足取りは重い。
セドリック・オーモンド辺境伯。ローゼリア王国最強の魔法使いであり、アラストア大陸でも五本の指に入る使い手とも言われている。
そして、フェリス様の父親でもある。
可愛い娘に纏わりつく蠅に対してセドリック様はどう反応するのだろう。
ここで対応を間違えると、最悪居場所が無くなるかもしれない。
何この状況、魔獣と戦ってる方が楽なんだけど……。
「高志様、こちらでございます」
セバスさんが地下への入り口を案内する。
……地下? 俺何処に連れて行かれるの?
薄暗い階段を降りていく。周囲から、ピチョンピチョンと水滴の音が響く。
おかしい……。この環境はどう考えても客を招待する物ではない。いくら俺が奴隷とは言え、こんな薄暗い地下に連れて行かれるとか……。
不安に思っている内に小さな部屋へとたどり着く。
セバスさんが扉を開けて入るように促す。中へ入ると、石造りの暗い部屋の中央に小さな机と椅子が置かれている。
なに……、この取調室みたいな部屋……。
周囲には、なぜか色々な拷問器具らしきものが置かれている。
ふと見ると視線の先に石抱きが見える。
こういうのは万国共通なのね……。
ふう。と俺は溜息を付いて気を落ち着ける。
やばい。これは想像以上にやばい……。
無駄だった。まったく落ち着かない。この環境で楽しい会話が出来ると信じる事が出来る程俺は前向きではないのだ。
「えっと、セバスさん?」
「どうぞ、こちらにお掛けになってお待ち下さい」
有無を言わせず、椅子を勧めてくる。
取り敢えず椅子は普通の椅子だ。拘束具とかも特に見当たらない。
椅子に座ると、何処からか豪華なティーセットを取り出し、俺にお茶を入れてくれる。
正面にあるアイアンメイデンらしき拷問器具と目が合う。
アイアンメイデンと向い合せにお茶を飲むとか……。
シュールすぎる……。
しばらくするとコツン、コツンと足音が聞こえてきた。
セバスさんはすかさず扉の前に移動し、扉の前に気配が来ると同時に開け一礼すると、その前を男がゆっくりと歩いてくる。
セバスさんは、男が前を通り過ぎるのを見計らって外に出て扉を閉める。
男、まあセドリック様だろうが……、は机の反対側へと向かい、俺に背を向けて立つ。
最強の魔法使いと聞いていたが、見た感じ体も大きく筋肉質な男だ。フェリス様と同じ黒い髪を短く切りそろえ、どちらかというと拳法家といった見た目をしている。
男は何も言わない、俺も何も言えない。気まずい沈黙が続く……。
「我が名はセドリック・オーモンド。この城の主である」
前振りもなく、自分の名を告げる。
「あ、私は……」
「不要!」
突然言葉を遮られる。
「奴隷ごとき名、覚えるに値せん」
厳しい言葉を投げかけられる。
それなら、そもそも俺を呼ぶなよ……。
理不尽な対応に気分を害するが、まあこれが本来の貴族というやつなのだろう。
「噂を聞いた。私の可愛い娘に近づく不埒な男がいると」
有無を言わさず買われたんですがねぇ……。
「その男は、娘に取り入り、あまつさえ我が家に伝わる家宝の盾を貢がせたと」
いや、まあ、そういう捉え方もあるか……。
「それだけでは飽き足らず、こともあろうに、我が国の騎士エリーゼにまで手を出す始末」
なんか……、いや、確かに否定しにくいが……、悪意があり過ぎだろ……。
「その男が、奴隷という卑しき身分と聞く」
それに関しては、確かにあんたの心配は解るよ……。
セドリック伯爵はそこまで言うと俺の方を向き、机に両手を付く。
「私が何故貴様をここへ呼んだか、解るな……」
解りたくは無いんだが……。
「私は……」
「貴様は!」
またも俺の言葉を遮る。取り敢えず黙り込み、続きを聞くことにする。
「貴様は、わが娘、わが愛しき娘フェリスの事をどう思っているのだ」
「私は……」
「貴様は!」
いや、しゃべらせろよ。
ここまで来ると、俺にしゃべらせる気が無い事に気付く。
まあいい、それなら最後まで聞き手に徹してやるさ。
「貴様は卑しき奴隷だ。わが娘、わが愛しき女神フェリスは伯爵家の令嬢。その身分の差がどれ程のものか……。それは貴様自身よく理解しているだろう」
「それは……」
「私は!!!!!」
はいはい、黙ってます。すみませんでした……。
「私は、いやオーモンド家は、愛を重んじる。愛こそがすべて、その前に他の事など些末な事……」
セドリック伯爵はまた後ろを向き悦に浸っている。
なにこの臭い三文芝居……。
「そもそも、オーモンド伯爵家を起こした初代当主は、一介の冒険者であった。当時行われていた人間と魔人の戦争。魔人に追い詰められ、滅びる寸前のローゼリアを救い、ついには魔人達を魔の森奥深くに追い払った最強の魔法使い、それが我がオーモンドの初代当主だ」
それはこの城にあった書物で読んだな……。確か、以後の魔人の侵攻を警戒してこのオーモンド辺境伯領が作られたとか書いてあったはずだ。
「初代当主は、戦いが終わった時、この国を去るつもりだった……。だが! ローゼリア国王は伯爵の称号と、当時身分違いの為結ばれる事を諦めていたローゼリア国王女との仲を認めこのオーモンド辺境伯領を与えたのだ」
当然だろうな。そんな力もった奴が他国に行くとか国として認められんだろう。
美談ぽく言ってるが、体よく娘渡して番犬にしただけだろ……。
で、断ったら暗殺とか……。
てか、そうなるとオーモンド家には王家の血が混じってるのか。
「やがて二人に息子が生まれた。残念ながら一人だけであったが、その子もまた強大な力を継いで生まれてきた」
嫁さん可哀想に、生めよ増やせよ言われただろうに……。
まあ、どうせ側室だの妾だのハーレム作って兵器増産してたんだろ……。うらやまけしからん。
「初代当主は王女をとても愛していた」
何? 他人ののろけ話?
「周囲から側室、妾など大量の話が持ち込まれたが、すべてを拒否。生涯を王女と二人だけで過ごしたのだ」
許されるのか? それ……。
「時が経ち、その息子が周囲から持ち込まれる、多くの見合い話に嫌気がさし城を飛び出すと、初代当主はそれこそ大量の非難を浴びた。゛今からでも側室を作れ゛゛子を増やせ゛とな」
まあ、そりゃそうだろうな。
「そんな周囲の声に対し初代当主は言い切ったのだ。゛血が絶えるならそれでも構わない。その時はこの領地を王国直轄地とするもよし、相応しい者がいればそいつに統治させればいい。゛と……」
それ、貴族としての義務の放棄だよね。
まあ、もともと貴族じゃないし、多分不本意だったんだろうな、貴族になるのが。
「さらに時が経ち、王女が病に倒れた時、城を飛び出して行方知れずだった息子が戻ってきた。嫁と三人の子を連れて。初代当主も王女も久しぶりに会えた子とその嫁、孫たちに会えた事に大層喜んだそうだ」
ほうほう、なんか段々興味が湧いて来たな……。
「その嫁は平民の娘だった。無論周囲はそのような下賤の血はと大層騒いだそうだ」
あー、そうなるよなぁ。
「だが! そのような言葉もすぐに消える事となる。何故なら、三人の孫たちもまた強大な力をもっていたからだ」
「初代当主は息子に後を継がせると、早々に隠居して病から回復した王女を連れて国を出た」
それ、絶対押し付けて逃げたんだよね、初代当主……。
「その後、三人の孫たちが年頃になると、またも周囲から見合いの話が大量に湧き上がる」
うーん、デススパイラル……。
「それに嫌気がさした孫たちは全員城から逃げ出した」
まあ、なんとなく想像ついたけど……。
「それからしばらく時が経ち、三人の孫たちが城に戻ってきた。それぞれに夫、嫁、孫を連れて」
それも想像ついたよ、あと続きも……。
「三人の孫それぞれの夫や嫁は身分の低い者だった。だが! 生まれた子達は皆強大な力を持っていた!」
セドリック伯爵の声が一段大きくなり力も入る。大分乗ってきたようだ。
「その時、ローゼリア王国に一つの掟が生まれた! それはオーモンド家に見合いを進めてはならないと!」
逃げるからな。
「オーモンド家の者たちは、皆自身で伴侶を決める。それを何人たりとも邪魔してはならないと」
逃げるからだろ。
「そしてもう一つ、生まれた伝説がある。それは、オーモンド家の者が選んだ伴侶から生まれた子は皆強大な力をもって生まれる、という事だ」
正直眉唾だが、実績があるから信じられてるんだろうな。
「今日まで続いたオーモンド家の歴史の中で、力を持たずに生まれた子は一人もいない」
おおー、そいつはすごい。羨ましい話だ。
で……、俺なんでそんな話を聞かされてるの?
「私の妻も、平民の出だ」
あ、今度は嫁自慢ですか……。
「妻は冒険者でな、その美しさと強さから女王蜂とあだ名されておった」
そのあだ名……、ほんとに美しさと強さからか?
「当時の妻は男嫌いで有名でな……。男を一人も寄せ付けず、周りにはいつも女を侍らせておった」
百合ですね。
「偶然町で彼女を見かけた時、私は一目惚れをした。私はそれから毎日彼女の元に通い愛を告白した」
あんたは良いかもしれんが……。嫁さんいい迷惑だったろうに……。
「彼女からは、散々に罵倒され、時には蹴られる事もあった。周囲の人間からは頼むから仕事をしてくれと泣かれた事もあった。だが! 私は逆境にも負けず愛を囁き続けた!」
仕事はしてやれよ、可哀想だから……。あと逆境は明らかに周囲の人間だから。
「一年程時が経ち、彼女から罵倒の声も聞かなくなり、周囲の人間たちも独自の判断で仕事をこなし出した頃……」
どんだけ嫁さん追い詰めたんだよ。あと周囲の人間はそれあかんやろ……。
「彼女にどうすれば結婚してくれるかと問うと、彼女は『全裸で土下座して町の中央広場で一日中愛を叫び続けたら考えてやる』と答えたのだ」
やったんだろうな、このおっさん……。
「私はすぐさま全裸となり、部屋を出て中央広場に行こうとした。だが、何故か彼女は急に私を止めだしてな……」
あ、嫁さん結構優しい人やったんやね。
「お前にはプライドが無いのか! と彼女が言うのでね、私はお前が手に入るならプライドなどいらぬわ! と答えてやったよ。なおも彼女は、もう解ったからとか、そんな事しなくてももういいから、とか言って私を止めてね、一悶着の末、彼女が泣きながら下着だけは付けてくれと頼むので、仕方なく下着を履いて中央広場へ向かった」
もう嫁さんデレてるよね、土下座いらないよね。
「私は中央広場で土下座をし、彼女への愛を叫び続けた。周りを騎士達が警護してくれたので、いらぬ邪魔は入らなかったが、遠巻きから私をあざ笑う声は聞こえてね、正直つらかった。それに、叫び続けるうちに喉が涸れてきてね、声がだんだん出なくなってきたんだが、幸い強い雨が降ってくれてね。雨水を啜って喉を潤をしながら叫び続けたよ」
ワイルドだねぇ……。
それさぁ、あんた以上に嫁さんの方が恥ずかしかったんじゃね?
「一日が経ち、私は彼女の部屋に向かった。彼女は私を見て、じゃあ取り敢えず友達から、とか言うので、そのままベッドに押し倒した」
嫁さん、女王蜂とか言われる割には純情やったんやね。
あと、あんたそれレイープと変わらんのとちゃうか?
「そしてその時出来た子が長男ロイドだ! ロイドにその話をした時は、感動のあまり言葉を無くしておったな」
俺はまだ見ぬロイド様に同情する。そんな話聞かされたらトラウマもんだろ……。
「そしてその後、アリシア、フェリスと二人の娘が生まれたが、三人とも強大な力を持っておる。私もまたオーモンドの伝説を証明したのだ」
あー、そういう事、嫁自慢とか武勇伝自慢じゃなかったのね。
「今一度問う、貴様はわが娘、わが愛しき天使フェリスをどう思っている」
セドリック様の問いに俺は疑問する。
ここまでの話を考えると、オーモンド一族は自分の伴侶を自分で決める。その出自も気にしない。
ならば、仮にフェリス様が俺を伴侶と選んだとしてもオーモンドとしてそれを反対出来ないし、むしろ強い子が生まれる相手として認めるしかないという事ではないのか。
もし、セドリック様がそれを反対しているのなら、今までの話をする必要がない。
むしろ、これって……。
バァッン!!
と突如扉が開きフェリス様がすごい形相で部屋に入ってきた。
「お父様!!」
怒りのオーラが俺にも見える、これめっちゃ怒ってるぞ……。
「フェ、フェリスちゃん、どうしてここが……」
突然情けない声を出すセドリック様……。え? さっきまでの威厳は何処に?
「どうしても何も、セバスが高志を連れて行ったって聞いて探したら、ここに入って行った所を見た連中がいたのよ」
「くっ、誰にも見つからないようにとあれほど……」
セドリック様がそう呟くが……
セバスさん、ここにくるまで色んな人と話してたぞ、あれ絶対隠す気なかったぞ……。
「お父様……。義兄様の時、もう二度とこのような真似はしないと約束したはずですよね」
フェリス様が低い声でそう問いただす、というかこれ二回目なのか……。
「で、今回はどんなバカげた事をしていたの?」
「いや、その、話せば長くなるのだが……」
とセドリック様がしどろもどろ言っていると、セバスさんがそっとフェリス様に本のようなものを渡す。あれは、もしかして台本? そんなもの用意してたのか。なんか芝居がかってる気はしてたが……。
だから、俺の言葉を遮ってたのか。台本通り進める為に……。
フェリス様が渡された台本をペラペラめくり読んでいる。
と、突然台本を机の上に叩きつけ
「あ、愛を叫ぶとか何させるつもりだったのよ! バカなの!」
と真っ赤になって怒り出す。
「大体。なんなのよ、あの悪趣味な拷問道具。どっから持ってきたのよ」
「い、いや、その、ちょっと部屋の飾りにちょうどいいかなと……。出入りの商人から……」
「まさか、国庫からお金を出してないわよね」
「と、当然だ。これは私個人の金で買ったものだ」
「そう、こんなもの買う余裕があるんだ……。お母様に言っとくわ」
「ま、まってくれフェリスちゃん。そ、それだけは、それだけは」
セドリック様がフェリス様の足にしがみつき嘆願している。
そんなセドリック様をフェリス様は懇々と説教している。
俺はふと、机の上に置かれた台本に興味をもち、ページを捲ってみる。
一ページ目から読んでみると、セバスさんが扉を開く所から始まり、自己紹介、オーモンド一族の説明などと、俺が今まで聞いていた内容が書かれていた。所々に、゛最初は冷たく威厳を出して゛とか、゛ここは少し力を込めて゛とか注釈が書いてある……。
読み進めると、ちょうどフェリス様が乱入してきた辺りに差し掛かる。
そういえば、あの後俺はどんな事をさせられる予定だったのだろう……。
私「彼がフェリスちゃんをどう思っているか問いただす」
彼「気持ちを答える」
……注釈……もし愛以外の感情の場合、力づくで愛と答えさせる。
……注釈……ここで愛の言葉を二十種類以上言わせる。
更に読み進める。色々試練なんかを与えられた後、最後は城の屋上で大声を出して愛を叫び、セドリック様と泣きながら抱き合ってエンディングだったようだ。
なに、この恥ずかしいお芝居……。
「ちょっと、こんな如何わしい物を読むんじゃありません。やめなさい!」
俺が台本を読んでいる事に気づいたフェリス様は、すかさず取り上げ投げ捨てる。
エロ本を取り上げるおかんみたいだ。
「大体ね、私と高志はそういう関係じゃないわ。勘違いしないで。こいつは私の奴隷で、ただのおもちゃよ。ただそれだけなんだから」
フェリス様が俺を指さしそう言う。
うん、解ってたけどはっきり言われると悲しいな……。
「でもね、フェリスちゃん。あの時アリシアちゃんも同じような事言ってたけど、あの後しばらくして、子供が出来たから結婚するわって言ってきたんだよ。父さん婚前交渉とか出来ちゃった婚とか、よくないと思うんだよね」
あんた、自分の嫁に何したか思い出せ。
「わ、私は姉さんとは違うわ!!」
またもフェリス様が激昂する。
血圧が心配だ。
「とにかく、もう二度とこのようなバカな真似はしないで!」
帰るわよ、とフェリス様が俺の手をつかむ。
俺はフェリス様に引かれながら、セドリック様に一礼し部屋を出る。
「フェリスちゃん、頼むから母さんには黙っててくれぇぇぇ!!」
セドリック様の叫びが聞こえるが、フェリス様は何も答えない。
しばらく歩くと、
「ごめんなさい、迷惑を掛けたわね」
とフェリス様が俺に謝る。
「いえ、気にしないで下さい。セドリック様も悪意があったわけではないですし」
「悪意がなければいいわけじゃないわ! まったく、義兄様の時にお母様が、お父様専用拷問具であれほどお説教したのに……。全然堪えてないんだから……。お父様程になると無詠唱で身体強化とか魔力障壁とか出来ちゃうから物理的なお仕置きが効果ないのよね……。お母様は、『物理がダメなら心を折るしかないわね』って言ってたんだけど、どうすればいいかしら……」
気になる単語が出るがスルーする。あまり深く考えない方が良さそうだ……。
「二度目との事ですが、以前もこのような事があったのですか?」
つい気になったので質問する。
「ええ、姉様と義兄様が結婚する前の事よ、義兄様が家の前で複数の男に拉致されたと近所の人が通報してきてね。警備隊総出で街中を捜索したわ……。姉様なんか半狂乱で大変だった……。それでね、散々探し回った挙句……、数時間後に、城の屋上で愛を叫んでる義兄様を保護したわ……」
エンディングは使い回しだったのか……。




