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第十五話:だって男だもの

「人とは素晴らしい生き物だ。例えどのような環境でも時間と共に適応していく力を持っている」


「お、おう……」


「俺は今日まで不慣れな奴隷生活を続けてきた。喜び、怒り、悲しみ、様々な出来事を超えて今ここに居る」


「お、おう……」


「厳しい訓練を乗り越え、幾多の戦いも越え、今生きている」


「お、おう……」


 モリスはさっきから同じ事しか言わない。何故だろう、本題に入る前に少しでも共感を得ようと熱く語っているのだが、逆に引かれている。

だが、ここで諦めるわけには行かない。


「日々の生活に慣れて来たからこそ、新たな問題が発生するのだ」


「問題? なんだその問題って」


 モリスがやっと俺の言葉を受け止めてくれた。


「……ぶっちゃけ、女とやりたい」


 モリスが爆笑する。


「何言い出すかと心配して損したぜ。持って回った言い方するなよ、まったく……」


「こっちは笑いごとじゃないんだ、モリス。日々、フェリス様やエリーゼ様のお色気にさらされて大変なんだぞ」


 俺はモリスの両肩をつかんで揺さぶる。


「なら、フェリス様やエリーゼ様に頼んでみろよ」


 モリスが笑いながら言う。


 フェリス様の場合……。


「フェリス様」


「何かしら?」


「あなたのせいで、俺の息子がエレクチオンしまくりで困っています。責任とって下さい」


「あら、殿方って大変ね。でも大変な部分が無くなればもう大変じゃあないわね。私が大変な部分を大変にしてあげるわ。そうしたらもう、あなたは大変じゃあなくなるでしょ。うふふっ……」


「きゃぁぁぁぁぁっ」


エリーゼ様の場合……。


「エリーゼ様」


「何ですか?」


「あなたのせいで、俺の愚息がレッツパーリィーです。責任とって下さい」


「あら、殿方って大変ですね。ではその大変な所を私の剣で切り落としてあげましょう。手元が狂うと危ないので動かないように。ちなみに動かなくても手元が狂いますが、どちらにせよあなたは大変ではなくなるので、問題ないでしょう。うふふっ……」


「きゃぁぁぁぁぁっ」


「俺を殺す気かモリス!!!」


「じょ、冗談だ、冗談。解ってるって。まったく……」


 落ち着けとモリスは言う。冗談でもやめてくれ。想像だけで下半身が痛く感じる……。


「とは言えなぁ……。ここじゃあ、町で買い物する自由なんか無いし、そもそも給料も無いから金もないし……」


「そんな事はわかってるさ。娼館に行けたら解決する問題なのは……。それが出来ないから相談してるんだ」


 俺は若干声を落とし呟く。


 異世界の娼館……、きっと凄いんだろうな。獣耳っ娘とかエルフっ娘とか天使っ娘とか悪魔っ娘とか……。ああ、夢の世界……。


「なら、奴隷同士でやるしかねぇな。お前が望むんなら紹介してやるぞ」


「な、なんだってぇ! それを早く言えよ」


 俺は再度モリスの両肩をつかみ揺さぶる。だがまて……。何かがおかしい……。

俺は揺さぶるのを辞める。


「モリス」


「なんだ」


「俺はここで女の奴隷を見た事がない」


「だろうな、ここには女の奴隷なんかいないからな」


「では、お前は誰を、いや何を紹介するつもりなんだ」


「決まってるだろ、ナニがついてるやつを紹介するんだよ」


「モーリースー!」


 俺はまたもモリスの両肩をつかみさらに激しく揺さぶる。


「お、落ち着け。だが、ここじゃあそういう奴も多いんだ。実際お前みたいに耐えれんようになった奴が行き着く先なんだよ。ある意味ではそれも幸せな結末なんだよ」


 欲求解消にもなり、子供も生まれない。軍も暗黙の了解で見逃しているらしい。


「まさか? お前も……」


 俺は飛び退きモリスから離れる。


「心配すんな、そっちの趣味はねぇよ」


「生憎と俺もそっちに行くつもりはない。却下だ」


 俺は男らしく断言する。


「だいたい、モリスはどうしてるんだよ……」


「聞くなよ、だいたい解るだろ……」


 モリスはそう言うと、己が右腕を天高く上げた。


「やっぱそれしかないのか……」


 俺は跪き両手を床に付けうなだれる。


「解ってたよ、解っていたさ。俺は奴隷なんだ、自由なんかないんだ」


 ふうっとモリスが溜息をついた。呆れているのだろうが、気にしない。


「大体なぁ、ここは奴隷にとっちゃぁ天国みたいな環境なんだ。特にお前さんはフェリス様やエリーゼ様に可愛がられているんだ。それだけでありがたいと思わないと他の悲惨な奴隷達が可哀想だぜ」


「解っているさ、自分が贅沢を言ってる事なんて。でも言わずにいられなかったんだ。だって、あの人らいっつも俺をからかって遊ぶんだもの。エロ方面で……」


「ま、まあ……、それに関しちゃぁ同情するが……」


「そうさ、きっと俺はあの二人のお色気攻撃に負けて命を落とすか、欲望に負けてあっち方向に行ってしまい、男としての命を落とすんだ……。きっと……」


 俺はワザとらしく落ち込む。


「わかった、わかったから、取り敢えず、お前さんに希望を与えてやるから、それで満足してくれ」


 モリスの言葉を聞き、俺は素早く立ち上がりモリスの両肩を掴んだ。


「信じてたよ、モリス。あなたなら俺の期待に応えてくれると」


「まったく……。まあ、正直特別な事を言うわけじゃあない」


 と前置きしてから


「解放奴隷を目指せ」


 と言った。


「あるのか、その制度が」


 俺はモリスに尋ねる。


「ああ、というか知ってたのなら言えよ。勿体ぶった俺がバカみたいじゃないか……」


「いや、すまん。だが知識として知ってただけでこの国にその制度がある事は知らなかったんだ。それにどうやれば解放されるのかも知らない」


「本当に変わった奴だなお前は……。まあいい。解放される為には、一つは功績を上げる事だ。小さな功績なら沢山積み重ね、大きな功績ならそれ一つで認められるだろう。大切なのは誰しもが納得する功績でなければならない事だ。なにせ国の了解を得なければならないからな」


 俺はふむふむと頷く。


「二つ目は、当然ながら持ち主の承諾だ。持ち主が国に申請をし、了解を得る事で初めて解放される。本来ならこっちの方が難しいんだが、お前さんの場合はそうでも無いだろう。フェリス様なら功績を上げて願い出れば必ず叶えて下さるよ」


 確かに、持ち主にとって奴隷解放は何のメリットも無い。普通の持ち主なら簡単には許さないだろう。

 俺は恵まれている。


「功績を上げて、フェリス様にお願いして、解放されたら娼館にいって望みを叶えて来いって事だ」


俺はモリスの手をつかみ


「ああ、モリス。俺頑張るよ。頑張って自分の手で夢を掴むよ」


「お、おう……」


 若干引いているが気にしない。

 だって男だもの……。みつ〇


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