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第百二十二話:第一回 新しく手に入れた武器の能力を確認するついでに魔の森で狩りをしてどうせならそれを料理して対決しよう大会の開催

「第一回! 新しく手に入れた武器の能力を確認するついでに魔の森で狩りをしてどうせならそれを料理して対決しよう大会ぃぃぃぃ! ドンドンドン、パフパフ、イェェェェイ!」


 まだ日も昇らぬ早朝に右手右膝を上に上げた態勢のフェリスさんがやたらハイテンションな声を出している。そんなハイテンションなフェリスさんを他の面々が眠そうな顔でボォーッと眺めている。


 それは突然の出来事だった。

 いきなり朝早くに叩き起こされ詳しい説明も無い中、私達は屋敷の玄関前に集合させられたのだ。


「……エリーゼさん。これは一体?」


 私はフェリスさんと同室のエリーゼさんに小声で尋ねる。


「私にもよく解りません。昨夜フェリス様は風呂での一件を未だ引きずっておられベッドでゴロゴロ転がっていたのですが」


「は、はぁ……」


「あまりに煩かったので、「どうせ何れは見せる物でしょう。早いか遅いかの違いでは無いですか?」と言った所さらに回転が三割増しになったので取り敢えず放っておいたのですが」


「放っておいたのですか……」


「あ、私はこう見えてどんなに煩い環境でも寝れる特技があるのですよ」


「それは立派な特技だとは思いますが……」


「そうしたら早朝に叩き起こされて今に至ります」


「結局何も解らないという事ですか……」


「まあ予想は出来ますよ。大方、昨日の出来事を無かった事にするには如何すればいい? → 物理的に殺っちゃう? → いや流石にそれは不味いか……。なら精神的に殺るか? → そうだ! 色々な事で忙しくなれば過去の出来事を上書きできるかも? → 良し! ならば何かイベントを考えよう! 等と考えたのでしょう」


 物騒な方向に考えが行かなくて良かったと喜ぶべきなのか?


「ハイそこ! おしゃべりしてないでこちらの話を聞きなさい!」


 フェリスさんが私とエリーゼさんを指さして注意してきたので、仕方なく会話を止めてフェリスさんに注目する。

 全員が注目した事を確認するとフェリスさんは笑顔で説明を始めた。


「今日は昨日手に入れた新しい武器の性能確認を予定していた人が多いと思うけど……」


 そう。昨日の夕食時にロイ君が倉庫で発見した武器の事を話題に出した際、シェルファニールさんが欲しい物があれば何でも持って行けと許可を出してくれた。

 高志さん、フェリスさん、エリーゼさん、マリーさんは既に高位の武器を持っているしロゼッタはこれから作成する事になるので私とロイ君、アデリシアの三名が武器を貰う事になったのだ。

 夕食後、私達は倉庫に行き各々武器を選んだ。

 ただ問題が一つあり、シェルファニールさんはこの倉庫に関して殆ど関心を持っていなかった為、そこにある武器がどんな性能を持っているかを全く知らなかったのだ。

 

「感覚で選べば良いんじゃないか? 能力なんて使っていればそのうち解るさ」


 との高志さんの言葉もあり、私達は見た目や印象などで自分の好みの武器をそれぞれ選んだ。

 そして、フェリスさんの言うように今日は武器を得たそれぞれがその性能を確かめようとは考えていたのだが……。


「それには実戦が一番手っ取り早い確認方法だと思うの」


「まあ、一理あるな」


 フェリスさんの言葉に高志さんが頷く。


「でしょ? ならこの周囲の魔獣を相手に戦う事になると思うんだけど」


「ああ、そうなるな」


「……瘴気熊って案外美味しいわよね?」


「いきなりだな。でもあれは美味いっていうか、見た目を考えたらマジで食えるんだ? って言う感じだと思うが……。まあ案外美味いと言えなくもないか……」


「でしょ? 瘴気に覆われてヤバそうな見た目なのに食べてみると案外美味しいっていう意外性って驚きよね?」


「まあそうだな」


「この辺りってもう人間なんか未到達地域だし、きっと私達が知らない魔獣や魔物が沢山いると思うの」


「なんか結論が読めたよ……」


「だから武器の能力確認の為に狩りをして、折角だから未知の食材を探して、どうせならその食材を使った料理で勝負をしましょう!」


「その為に全員を叩き起こしたのか……」


 ニコニコ笑顔のフェリスさんに対して高志さんは呆れた顔でそう呟く。


「でも確かに武器の能力を確認するにはちょうどいいですね」


 ロイ君が新たに手に入れた黒い槍を眺めながら言う。私もそれにつられて新しく手に入れた細身のサーベルを眺める。ロイ君の槍も私のサーベルも不思議な魔力を帯びているがその能力は全く解らない。ただ感覚でこの武器が気になったので選んだだけだが、不思議と気に入ってはいた。


「そうですわね。朝早く叩き起こされた事はともかく、武器の能力確認の為に狩りに行くと言う案は賛成ですわ」


 アデリシアも刀身まで真黒なダガーを振り回しながら言う。


「私も別段それで構いませんが」


 もう目も覚めてしまったし……。


「まてまて、確かに理屈は解るが危険じゃないのか? 性能の解らない武器をいきなり実戦で使うとか……」


「危険は当然あるけど、必要な危険を冒さない冒険者なんて二流止まりよ?」


 フェリスさんのその言葉に高志さんがグッと言葉を詰まらせる。

 さらりと私も冒険者に含まれてしまっているが……、まあいいか……。


「いや、そうだな。確かにその通り俺が弱気過ぎたかも知れないな。皆が良いなら反対はしないが、勝負ってのはどうするつもりなんだ?」


「うふふっ。では賛成多数という事で第一回! 新しく手に入れた武器の能力を確認するついでに魔の森で狩りをしてどうせならそれを料理して対決しよう大会の開催を宣言しまーす! まずは審査員を紹介します。審査員はこのお二人、武器作成の為に今回の大会に参加出来ないシェルファニールとロゼッタでーす!」


 そう言ってフェリスさんが右手を広げ静かに成り行きを見守っていた二人を紹介する。


「ふむ。まあ我の屋敷の周辺なら厄介な物もおるまい。あまり遠くに行かぬように、あと日が暮れる前には帰って来るのじゃぞ」


 発言がお母さんみたいだな……。


「なんだか嫌な予感しかしないんですが……、帰ってもいいですか?」


 ロゼッタはとても嫌そうな顔でそう言う。だが主催者は残念な事に全く聞く耳を持っていないようだ。


「そして今回の勝負は二組に分かれて行います。一組目はエリーゼ、マリー、リベリアの三名です。そしてもう一組は私と高志、アデリシア、ロイの四名、この二組で争います」


「成程。確かに戦力的にはその分け方が一番良いですね」


 私のチームは火力こそ弱い物のエリーゼさんという強力な攻撃役とマリーさんという強力な回復、防御役がいるので人数不足は十分に補われている。逆にあちらのチームはフェリスさんという圧倒的な火力はあるが個々の戦力では劣っている点もあるのでチーム分けに不公平はないように思う。


「ルールは簡単! この二組が別れて森に入り食材となりそうな魔獣を狩り、この屋敷に戻って調理をし審査員のお二人に食べて頂き判定をしてもらいます。時間は日が暮れるまで。それまでに調理を終えている事が条件です。以上で説明を終わりますが、質問などはありますか?」


 フェリスさんの問いかけに皆が無言で答える。

 ルール自体は単純で解り易いので特に問題は無いだろう。


「それでは……、勝負開始!」

 

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