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第百十二話:少女達の悩み

「ねえ、ロゼッタ」


「何?」


「フェリスさんって……、綺麗な人よね……」


「そうね」


「はぁ……、そうよね……」


 アディは溜息をつくとバタリと腰掛けていたベッドに仰向けに倒れ込んだ。

 

 フェリス・オーモンド。

 ローゼリア王国の貴族で、しかも、あのオーモンド一族の一人。美しい容姿もさる事ながら、彼女からは何と言うか言葉に出来ないオーラのような物が溢れ出ている。


「ねえ、ロゼッタ」


「……何?」


「シェルファニールさんって……、綺麗な人よね……」


「そうね」


「はぁ……、そうよね……」


 またアディは溜息を一つつく。

 

 魔人シェルファニール。

 人を超越した種族。容姿、スタイル、強さと全てが完璧で、しかも人と違い老いる事が無く、その美しさは永遠に保たれるという反則級の女性……。


「……何であんな二人が先生みたいな冴えない男を……」


「その答えはアディ自身がよく解ってると思うけど?」


「…………」


 私の言葉にアディは言葉を詰まらせるとその場でうぅーと唸りだす。

 

「何であんなとんでもないのが二人も現れるのよ……」

 

「そうね。同情するわ」


 私は素っ気無く答える。

 

「ロゼッタ冷たい……」 


 私の対応に不平を言うアディ。

 

 ……まったく。そんなアディに片思いしている男もいれば、その男に片思いしているわたしもいるのだ。それを思えば相手をしてあげているだけ私は十分に優しい方だと思う。


「はぁ……。勝てる気がしないわ……」


 そんな私の気も知らず、アディは相変わらずブツブツと弱気な発言を繰り返している。


「アディ……。確かにあの二人は強敵だけど、そこまで気後れする程では無いと思う。特に最近のアディは可愛くなったと思うし、年齢を考えればまだまだ伸びしろもある」


「そ、そう? ホントに?」


 私の発言に途端に気を良くするアディ。

 私としては此処で弱気になってしまわれては都合が悪い。我ながら下種な発想だが、自身の恋の為にもアディには頑張って貰わなければ困るのだ。

 もっともこの言葉自体に嘘は無い。確かにあの二人にはある種特別なオーラの様な物があるが、それを除けば容姿、スタイルとも十分勝負のステージに乗っている。


「本当に羨ましい……」


「えっ? 何か言った?」


「何でも無いわ……」


 私は小さく溜息を一つつく。アディの相手も強敵かも知れないが、私の相手も強敵なのだ。

 特にロイは私の事をアディとの仲を取り持つ協力者と言う風にとらえている節がある。別段そんな事を言った覚えは無いのだが、何故か二人しか居ない時などには今のアディのように私に対してアディの事を色々と話してくる。


 ……いや……。そう言えば、最近のロイはあまりアディの事を話さなくなったかな? その代りに先生の事をよく話題にするようになったような……。


 ……だっ、大丈夫か?


 まて。落ち着こうロゼッタ。そんな事はあり得ない。まさか……、そんな……。

 

 ライバルが同性なら少なくとも勝負のステージには乗れる。だが、もし……。


「如何したのロゼッタ? 急に顔色が悪くなったけど?」


「なっ、何でも無い。ちょっと考え過ぎただけ」


 心配げに問いかけてくるアディに私は手を振りながら大丈夫とアピールする。

 我ながらどうかしている。そんな事は無い……はずだ……。


 そんな私を心配げに見つめてくるアディを見て私はふと思った事を口にする。


「アディは変わったわ。本当に」


「そ、そう?」


「ええ。昔のアディはもっと冷たい目をしていたわ。血にしか興味を持ってなかったし。最近のアディは優しくなったし、何より血を見たいって言わなくなった」


「そ、それは……。約束したし……」


「その約束を守ってる時点でもう昔のアディとは違うわ」


「それを言ったらロゼッタだって」


「……そう……かも知れないわね……」


 アディの指摘に私は頷く。

 そう。今の私はかつての様に魔法に固執していない。憧れは今でもあるが……。


「銃……。気に入っているのね?」


「……そうね。それもある……」


 銃を気に入っている事もあるが、何より私は銃で皆の役に立てる事が嬉しいのだ。

 

「私もアディも、ロイだってこの旅で変わったわ」


「そうね……。その旅ももうすぐ終わってしまうのね……」


「寂しいけど、リベリアさんの為にも早く終わらせてあげないとね」


「……うん。そうね。それに、この旅が終わっても、また新しい冒険に出ればいいんだものね。先生について行って良いって言って貰えたし」


 そう言って嬉しそうに微笑むアディ。

 そうか……。アディは先生について行くのか……。ロイは如何するんだろう……。そして私は……。


 コンコン!


 そう考えていると、扉をノックする音が聞こえてきた。

 私は立ち上がり扉を開けると、そこにはロイとリベリアさんが立っていた。


「実は少し相談があるんだけど、入ってもいいかな?」


 その言葉に私が頷くと、ロイとリベリアさんが部屋へと入ってくる。

 

 相談とはなんだろう?


 今後の事は後日考えよう。まだ時間はあるのだから……。

 

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