プロローグ:目覚めるとパンイチ
目が覚めると俺はパンツ一枚で首輪に繋がれていた。
周りは薄暗い牢屋で、同じ格好の人間や゛人間らしき゛男が何人かいた。
らしき男を見て俺は即座にここが異世界だと理解した。
そう、そいつには獣のような耳としっぽがあったからだ。
「ついに俺の番が来たか!」
思わず声に出してしまい、周囲の目がこちらを向いた。
ゴホン……。と少し咳払いをし黙り込むと周囲の男たちもすぐに興味を失ったのか、こちらから視線を外した。
まあ、人の事を気にしていられる状況じゃないよな……。
俺は深呼吸して気持ちを落ち着かせると、改めて自分や周りの状況を観察する事にした。
持ち物
・パンツ一枚
自分の状況
・首輪を付けられて牢屋に入れられている
周りの状況
・同じくパンツ(らしきもの)一枚で首輪を付けられて同じ牢屋に入れられている
予想
・奴隷か囚人
いやいや、ちょっとまて、おかしいだろ。
昨今流行の小説とかだと、王様とか貴族だかが
「待っていたぞ勇者よ」
とか、美人のお姫様が
「待っていました、勇者さま」
とか、美人の神様が
「勇者にしてやろう」
とかそういうのがデフォだろ。パンイチで首輪とかそれあかんやつやろ。
「そ、そうだ、能力を確認しよう」
どんな状況でも力さえあればなんとかなる。
俺は今まで読んだファンタジー小説の知識を総動員して、自分の中にどんな能力があるかを必死に探した。
結論
・なんの能力もない
何時間も必死に探した。
何も現れないのに、長時間召喚魔法を必死に唱える俺を見て、周りの連中が可哀そうな人を見る目を向けるのにも耐えて頑張ったが、何も起こらなかった。
というか、この世界の言葉すらわからん……。
俺の奇行を気の毒に思ったのか、隣の獣人が声を掛けてきたが何を言っているのか解らなかった。
こちらの言葉も通じていないらしく、しばらくして何も話しかけて来なくなった。
夢にまで見た異世界に来れたという喜びはなくなり、徐々に絶望感が心に広がってきた。
俺……、これからどうなるんだろう……。