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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ヘブンズワールド関連

ヘブンズワールドーヴォルグ編ー

この小説は

タイトルの通りヘブンズワールドと繋がりがあります

予めご了承くださいませ

「これが……私の役目なのですね」

「うおっ!!」


 俺は光に包まれた














 俺の名前は重陰 茂雄

 おもかげ しげお

 と読む


 俺は内気な性格なせいかよく虐められていた


「ギャハハ、こいつの顔見てくれよお!!」

「きんも~」

「もっとボコボコにして面白い顔にしようぜえ」

「さんせえええい」

「お前ら止めんか!!」

「おい! 剣人だぞ逃げろ!!」


 そんな俺を良く庇ってくれるが

 神使 剣人

 かみつか けんと

 と読む

 喧嘩が強い


 彼は俺のことを友達だと思っているが

 俺はそう思わない


 内気で内向的でブサイクで虐められる俺

 明るく元気でイケメンで友達が多い彼

 俺は彼が憎かった


 彼は俺にないものを全て持っている

 それが許せなかった


「茂雄」

「茂雄君何読んでるの?」


 彼は休み時間によく俺に話しかけてくる

 となりにはクラスのアイドル的存在な

 姫神 治癒子がいる

 彼女はひめかみ ちゆこ

 と読む

 彼女と剣人は良く一緒にいる

 恋人同士かとも言われているが

 彼ら自身はただの友達だと否定している


「”なぜモテないのか!?”っていう本」

「そんな本読むなってモテなくなっちゃうよ」


 モテてるお前に言われたくない


「それより茂雄、土日暇?」

「何」

「俺と治癒子と三人でボウリングに行かないか?」

「別にいいけど」


 それじゃあ土曜の朝10時駅前集合な

 彼はそう言い残して去っていった


「茂雄君は頑張ればモテると思うわよ」


 治癒子は俺を励ましてくれる

 俺は彼女が好きだ

 だけど俺は臆病で言い出せずにいる

 ブサイクだしな


「その本、私も読んでみていい?」


 治癒子が唐突に聞いてきた

 そんなのとは無縁な彼女だ

 だけど俺は知っている

 気遣ってくれてるのだ


 彼もそうだった

 俺はなぜかこの二人に気遣われている

 俺はそれが嫌だった

 惨めな気がしたからだ


「いいけど」


 俺は彼女に本を貸した


「ありがと! 明日には返すね」


 そう言い残して彼女は去っていった


 何で俺なんかに構ってくれるんだろう

 不思議だった

 二人とも人あたりも良く美形で人気があるのだ

 そんな二人が俺を相手にすることがおかしい

 俺に固執してると言ってもいいくらいだ


 帰り際


「おいぶたお」


 三名のいじめっ子たちから俺は呼び止められた

 いじめっ子たちからの俺のあだ名は”ぶたお”だ

 俺の顔になぞらえているのだろう


「何ですか?」

「お前、いい加減治癒子さんから離れてくれないか?」


 別に俺は彼女に近づいた覚えはない


「彼女から来るんです」


 俺は正直に答えた


「はあお前なんか相手にするわけないだろ!」


 俺もそう思う


「あまり調子乗ってるともっと酷い顔にしてやるぞ」


 いじめっ子の一人が指をポキポキと鳴らす


「おい、お前らやめろ!」

「やべ、また剣人だ逃げろ!!」

「ったく何であいつまた現れるんだよ」


 いつもこうだ


「大丈夫か? 茂雄」


 彼、いややつは正義のヒーローの如く俺の前に現れる

 そして俺を憐れむような目で見てくる


「どこか怪我してないか?」


 俺はやつが嫌いだ


「おい聞いてるか?」


 嫌いだ


「聞いてるか?」


 嫌いだ


「おい!」


 嫌いだ


「おい!!」

「はっ!」


 俺は我に返った


「大丈夫か茂雄、あいつらに何か嫌なこと言われたか」

「別にそうでもないけど」

「そうか……なら良かった」

「……」

「一緒に帰ろうぜ」

「いいけど」


 余談だがやつの家は俺の帰り道と同じ方向にある

 さっきの件といい都合が良すぎる


 帰り道

 やつは俺にいろいろ話しかけてきた

 他愛もない話だ

 俺はそれを聞き流す


 俺の家に辿りついた


「何か困ったことがあったら俺に言えよ! 助けるから」


 だから正義のヒーローずらするなっての!


「うん」


 俺は自分の家の中に入った












 俺はよく同じ夢を見る


「ヴォルグ、僕と君は友達じゃないか!」


 俺は彼の体に大剣を刺す


 こんな夢ばかりだ

 正直何度も見せられてうんざりする

 それに彼、剣人と面影が似てるのだ


「またか」


 俺はそう思いながら目覚める












 土曜日

 俺と剣人と治癒子の三人で

 ボウリング場に行く


「やっほーストライク!!」

「剣人はいつもストライクよね!!ずるいい!何か裏技でも使ってるんじゃないの?」

「大丈夫コツを掴めば誰でもできるよ、な!茂雄」


 ストライクを1個も取れない俺にそんなこと言われても


「う、うん」


 俺は適当に返事をする


「ここをこうだ」

「こう?」

「違う! ここをこうだ!!」

「こう?」

「だから違うって!」

「もう! 何よ!!」


 彼らの会話はまるでバカップルみたいだった

 このままでは愛しの治癒子を彼に取られてしまう

 俺は危機感を感じた

 前にも話したが俺は治癒子のことが好きなのだ



「それじゃあ治癒子またな」

「ええ、また」


 俺たちはボウリングを終え治癒子と別れる

 俺はボウリングの時間を長く感じた

 彼の治癒子への熱心な指導のせいでもあるかもしれない

 でもそれだけじゃないのだ

 俺だけ取り残された感じがして嫌だったのだ



 俺たちはいつもどおり一緒に帰る

 いつもどおり剣人が俺に話しかけてくる

 俺はいつもどおり相槌をうつ


 そんな日常だった








 ある日


 事件が起きた


 俺はいつもどおり机で本を呼んでいた


「よっ! 茂雄! 今度は何読んでるんだ?」


 剣人が下から本のタイトルを覗き込んだ

 その途端


「何! 読んでるんだ!!」


 俺の読んでいた本を取り上げ破り捨てた


「自殺の本を読むなんてお前何考えてるんだ!!」


 周りの視線が俺たちへ集まる

 俺が読んでいた本は

 ”自殺したいあなたへ”というタイトルだった

 これは悪い本じゃない寧ろ自殺から助けてくれる本だ


「困ったことがあったら俺に言えと言っただろう」


 彼は俺が自殺しようとしてると勘違いしてるようだ


「俺たち友達だろ?」


 その言葉と共に俺はある言葉を思い出していた


「ヴォルグ、僕と君は友達じゃないか!」


 俺はこの時決意した

 こいつを殺そうと

 理由? そんなの決まってるじゃないか

 俺を惨めな目に合わせた上に

 大切な本を破り捨てられたのだ


 帰り際

 俺はカッターナイフを隠しもった


「茂雄一緒に帰ろうぜ」

「……」

「さっきはごめん言いすぎた?」

「……」

「でも自殺はやめろよな」

「……」

「困ったときは俺に相談して、友達なんだから」

「剣人」


 俺は剣人を抱きしめた


「どうしたんだ? 急に? 俺の言葉に感動でもしたのか?」

「違うよ」


 そう言って俺は剣人のうなじをカッターナイフで深く斬りつける


「し……げ……お……?」

「さようなら、剣人」


 彼は血しぶきをあげて倒れこむ


「きゃあああああああああああ」


 周りから悲鳴が聞こえていた

 皆が逃げ出している

 その中で一人だけ俺に近づく人がいた

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


 治癒子だ


「どうして彼を殺したの?」


 その言葉を聞いたとたん俺は心の奥底から感情が溢れ出していた


「俺はこいつが憎かった」

「どうして?」

「いつも俺の前に現れては正義のヒーローづらしてさ」

「……」

「いつも俺の邪魔をしてくる」

「……」

「俺はこいつにずっと勝てなかった」

「……」

「こいつとはライバルだった」

「……」

「だけどこいつは言うんだ」

「……」

「ヴォルグ、僕と君は友達じゃないかって」

「……」

「俺はこいつが憎い!憎くてしょうがない!!」


 俺は思い出していた

 俺とマルスは騎士学校の同期だった


 俺は騎士学校で二位の実力を誇っていた

 でも一位は取れなかった

 一位はいつもマルスだった


 俺は必死に彼に追いつこうと努力した

 でも彼を超えることは出来なかった

 彼は余裕ぶっていた


「マルス、今度は負けねえ、俺とお前はライバルだからな」

「何言ってるんだ? ヴォルグ、僕と君は友達じゃないか」


 そうだ

 いつもそうだ

 あいつはそうやって俺を馬鹿にした


「馬鹿にしてはいないわ」


 治癒子がそう言った


「彼はあなたを本当の友達として見てた」

「……」

「なのにあなたは彼を殺した、今もね」

「あいつを殺して何が悪い!! 命令だったんだ!!! ボルス様のな」

「あなたは上の命令ならなんでも聞くの?」

「それの何が悪い! 当たり前じゃないか」

「彼はそうじゃなかったわ」


 確かにそうだ

 彼は自分の好みの命令じゃないと引き受けてくれなかった

 彼の好む命令はいつも人を殺さない命令ばかりだった


「彼は世界の平和のために戦ってきた、あなたはどうなの?」

「俺は……」

「あなたはただ命令を聞く機械なの?」


 その言葉が痛く胸に突き刺さった

 確かに俺は機械だった

 残虐な命令でも当たり前のように引き受けていた


「ヴォルグ、いい加減目を覚ましなさい」

「……」

「彼、私の前では言っていたのよ、いいライバルだって自慢していた」

「そんな!?」


 俺は愕然とした

 俺は気づかなかったのだ

 マルスの本当の気持ちに


「彼ともう一度会いたい」

「でも、彼は死んだわ」

「頼む!!もう一度合わせてくれ!!!」


 俺は治癒子、いやキュアリス様に懇願した


「そこまで言うなら」


 急に俺の意識が飛んだ


「ボルスの命令が本当に正しいかどうか自分で確かめて」






















「はっ!」


 俺は正気に戻った

 夢でも見ていたのか?


「キュアリス・ヒーリングを始末しろ」

「じ、実の娘をですか?」

「あんな化物、私の娘なはずがない」


 気がついた

 あれは夢じゃない、夢じゃないのだ

 夢にしては出来すぎている


「お言葉ですがボルス様」

「なんだね」

「キュアリス様は人々を癒し、この国を豊かにしてくれてます」

「それがどうした?」

「そんなキュアリス様を殺すなど滅相もありません」

「何だと!!? お前はわしの命令に逆らうきか」

「うっ!!」


 言うんだ!

 言うんだ俺!

 今ここで言わないとダメだ!!

 俺がただの機械じゃないことを証明してみせるんだ!!


「俺は……俺が正しいと思った命令に従います」

「きぃいさまあああああああ!!!」


 ボルス様が叫び声を上げる


「おい!! あやつを引っ捕えて拷問室へ案内しろ」

「分かりました」


 俺は騎士たちに取り押さえられる

 俺は騎士隊長

 だがボルス様の命令に逆らった以上

 俺のそんな地位は無意味となる


「ぎゃああああああああ」


 俺は拷問され続けた


「今ならまだ許してやろう、どうするかね?」


 ボルスが俺に訪ねてきた

 悪魔の囁きだ


「俺は……俺の意思を曲げるつもりはありません」

「ふんぬっ!」

「ぎゃあああああああああああああ」


 俺はボルスから剣で斬りつけられる

 体中から血がドロドロと流れていった


「もういい、止めをさすか!!」


 ボルスが俺にそう言った瞬間


 拷問室のドアがバタンと開いた


「なにやつ?」

「キュアリス様に言われて来た、ボルス様、例えあなたが相手でも僕は容赦しない!!」


 マルスが駆けつけてきた


「マルス……お前に会いたかった」

「ヴォルグ、僕こそ悪かった……僕は君をライバルとして見ていなかったんだね」

「おい、やつを始末しろ」


 しかし、周りの騎士たちはたじろいだ

 彼の実力を知ってるからだ


「何をしている!早く始末せんか、それともなんだ? お前たちもこいつのようになりたいのか!?」


 騎士たちは仕方なくマルスに立ち向かう

 しかし、マルスは剣で高速に空を斬り衝撃波で騎士たちを吹き飛ばした


「な……な……」


 ボルスが動揺する


「ボルス、彼は僕のいいライバルであり、友人だ、もし彼を殺すというのなら僕はあなたを殺すだろう」

「わ……わ……分かったよ」


 ボルスはしょんぼりとした様子で

 手から剣を離した

 剣が音を立てて落ちる


 そして俺を縛った鎖が外される


「マルス!! 生きててくれて良かった!!!」

「ヴォルグ、君こそ間に合ってよかったよ!!!」


 俺たちは握手を交わす

 友情と熱情がこもった熱い握手だ
















 あれから


 俺はボルス様の護衛騎士隊長を辞退し

 キュアリス様の護衛騎士になった


 剣と剣が交じり合う


「くそっ!! また負けた!!!」

「フフフ、甘いよヴォルグ」

「もう一度勝負だ!!!」


 俺はマルスに勝つために

 暇な時間を探しては今日も勝負を挑む


 彼には相変わらず勝てない

 でもいいのだ

 俺たちは誰よりも熱い友情で繋がっているのだから













「ヴォルグ、改心してくださったのね」

「ええ」


 僕とキュアリスは王宮の庭のテーブルで

 お茶を飲みながら会話していた


「まさかヴォルグが自分からボルスさんの護衛騎士隊長を辞退して私の護衛につくなんて思いませんでしたわ」

「彼もいろいろ考えることがあるんでしょうね」

「それにしても最近ヴォルグとあなただけで任務をこなすことが多いですね」

「ええ、彼もあれから結構上達していますからね」

「マルス!! ここにいたのか!!!」


 僕たちに近づく人物がいる

 ヴォルグだ


「街に盗賊が結集して攻め込んでいる! お前の力を貸してくれ!!」

「分かった、それでは行ってきますキュアリス様」

「いってらっしゃいませ、二人ともご武運を祈ってます」


 こうして僕たちは今日も二人で任務をこなす


「この任務が終わったらまた勝負な」

「はいはい」


 いづれヴォルグは僕を追い越すかもしれない

 僕も負けないようにしないとね

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