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WORLD END はすぐそこに  作者: 一一
ギブ・アンド・テイク
7/25

ギブ・アンド・テイク 2

○ ○ ○


十分ほど雑談を続けていると、オーナーが注文の品を運んできた。

……この雑談の中でそつなく自然に仮面のこと聞こうと思ったけどなかなか聞けんなぁ

と思う穣。そして頼んだコーヒーを一口飲む。

対面のリベカは仮面を少し上げ、カップを口元へ運ぶ。だが一口飲むとすぐに仮面を元の位置に下ろしてしまう。

仮面の下がギリギリ見えず心の中で悔しがる少年。彼女はそれを読み取ったかのように微笑を浮かべる、もちろん仮面のせいで見られてないが。

そして彼女は気持ちを切り替えるように足を組みなおし


「そろそろ本題に入りましょうか」


と話を切り出す。少年はここに来た理由を思い出し、姿勢を正す。そして


「僕から質問いいですか?」


と真剣な表情で確認の問いをする。ええいいわよ、と彼女が返し、穣は逸る思いを抑えつつゆっくりと


「とりあえず聞きたいことは主に二つ。あの男のことと、リベカさんのことです」


少々間をとり


「あの男は一体何者なんですか?僕の記憶だと、なんて言うか……魔法みたいな感じで剣を出したみたいに見えて!あと、それに瞬間移動でリベカさんに突っ込んだように見えたんですけど…………すみません。僕、変なこと言ってますよね?」


リベカの反応を窺い見ながら質問する。

あの男が剣を出現させた魔法、そして瞬間移動。この“人間離れ”した行動をできるというのはどんな人間なのか?

そもそも昨日の出来事は全て本当にあったことなのか?

少年自身の混乱していた記憶の中で勝手に脚色されたものではないのか?

そういったことを確かめようとしての質問だ。彼女はそうねぇ、と少し考え


「世間的に言えば殺人鬼、人の皮をかぶった悪魔と言ったところかしら?」


はぶらかすような返答に思わず怪訝な顔をする少年。彼女は弁明するように


「別にふざけてるわけじゃないわよ。ただホントのことを一気に説明してもあなた理解しにくいだろうし信じられないと思うわ。

だから今は言わないでおくわ、穣くんが聞き入れやすい情態の時に順を追って話すから……

とりあえずは、ある計画を実行するために人殺しをしていたヤツとでも思ってくれればいいわ、あとあの男がやってた゛手品゛の種も今度教えてあげるから」


それから、と言葉を続け


「あいつはまだどこかに隠れている。恐らくはこの町の周辺、もしかしたら今も近くにいるかもしれないわね」

語り終え窓のほうを見る仮面の彼女。


穣も目を細め、彼女と同じほうを見る。

あの男が今も近くでうろついているかもしれないと思うと、少年は激しい不安を覚える。

あの男が少年を追ってきた理由が、ただの殺人行為をするためではなく、殺人現場の目撃者を排除するというものなら少年の身は今も危ない状態だと言える。だが


「大丈夫よ、そのうち捕まるから」


彼女がコーヒーカップを手に取りつつ言う。あまりにも自信に満ちたその言葉は、まるで゛もう知っているような゛口ぶりだ。

気休めのようにも聞こえるリベカの言葉に少年は戸惑うが、やがて安心感が生まれ不安が薄らいでいくのを感じる。

彼女が不安の源である、あの男を倒すほどの力を有しているのが大きな理由だろう。


そして彼女の返答を思い返し


……”手品”って言い方してたけど、僕の言ってることを否定してなかった。つまり昨日のことは錯乱状態の僕が妄想を見てたんじゃなくてホントにあったって思っていいんだよな


気持ちの楽になった穣は背もたれに寄りかかり、体をほぐす。そしてアメリカンコーヒーで一服した後


「二つ目の質問いいですか?」


正面の彼女はカフェラテを飲みつつ、コクコクと頷く。それを確認し


「リベカさんって何者なんですか?」


一つ目の質問とはちがう、興味津々という顔でリベカに尋ねる少年。

彼女も彼女で殺人犯の男と並ぶイレギュラーな存在だ。

だが穣は剣を素手で止めたように見えた、など具体的な事は質問に含めない。さきほどの返答と同じように本当のことは言ってくれないと思ったのだ。

彼女はカップを置き、すぐさま仮面を元の位置に戻し


「詳しくは言えないから、またふざけたような言い方になっちゃうけれど。

簡単に言うとこの世界を存続させるために暗躍し、この世界の進む方向を導いている………………なんていうのかしら?」


「いや、僕に聞かれても」


「まあ、簡単に言えば正義の味方、正確にはヒーロー活動してる人の補助をしてるってところかしらね」


笑みの声で語る彼女。そして


「この世界が悪い方向に進みそうなら正しい道へ誘導したり、すでに悪い方向に進んでいるなら道を正す手助けをしてあげてるのよ」


語り終えた彼女は足を組みなおし少年をじっと見つめる。

今の話を聞きどう反応するか、それを観察してるのだ。普通ならば、情報開示の少なく、ヒーローとか言ってしまっているこんな話信じられるわけがないだろう。そういう反応を示されると彼女も思っていた。

だが少年は予想に反する、真摯な態度でその話に聞き入っているのだ。

それを見た彼女は仮面の下で驚きの表情をつくる。


……もしかして信じてくれてるの!?


少年は手を口元に置き、考える仕草をする。そして一分ほど後、ゆっくりと口を開き


「詳しくはわからないけど大変そうですね……。あともう一つ質問、リベカさんのやっているその活動っていうのは、リベカさんが中心になってやってるんですか?それともリベカさんは組織内の一メンバーとしてやってることですか?」


少年が考察の末、問いまで返してくることに彼女はまたも驚く。そしてそれをそのまま口にする。


「あなた、私の話信じてくれるの……?」


「え?そりゃなかなか信じにくい話だと思いますけど信じますよ」


何故?という彼女の問いに、穣は


「もし仮に今、リベカさんが僕に嘘を教えようとしているとしますね。

そういう場合、相手に自分の話を信じさせなければいけないから自分の信頼度が下がるようなことは絶対しないですよね。

でもリベカさんの話は教えられる情報がほとんどないものすごい怪しい話です。騙そうとするならもうちょっと話しますよね」


一息。饒舌になる少年は言葉を続ける。


「あとその変な仮面で顔を隠してる時点で信頼してくれっていうほうが無理です。

そもそも一学生の僕を騙す理由、メリットが見当たらないですしね。……簡単に言うと怪しすぎて逆に怪しめないって感じですかね、でもそういうのを狙っての裏の裏をかいたっていう可能性も無くは無いですけど」


上辺だけの理由を並べる、そして笑顔で正面の彼女へ


「リベカさんは命の恩人ですから。信じるのは当然ですよ」


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