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適性検査2

町の東方。

中心街を通る広めの道がある。

アスファルトで舗装され、等間隔で街灯が白の光を発している。右を見ても左を見てもその光は真っ直に規則正しく地面を照らし、この道路が直線で遠くまで続いている事がわかる。

道沿いにはファミレスなどの食事処や色々な系統の専門店、オフィスビルなどもあり、多くの建物が立ち並んでいる。

だが時刻は午前二時前。深夜営業や二十四時間営業の店を除けば全ての店が閉まっている。

見えるのは街灯とわずかに営業している店の光、それと信号などだ。しかし


ーーーーッ!!


一発の轟音、それを始めとして光が消え出す。遠くの方から順を追い街灯が、店の明かりが、信号が消えていく。やがて全ての人工の光が失われる。

だが辺りは完全な闇にはならず少なからず周りの様子を知ることができる。ぼんやりと辺りを照らすのは、空にある円の形を崩し始めた月と夜空を覆う満天の星たちだ。


○ ○ ○


明かりを無くした深夜二時過ぎの相楽美町。

この町で一番と二番目に大きな道路が交わる交差点がある。

この場所は先程あった轟音の発信源だ。周辺を観れば交差点にあった信号機並びに電柱は全て倒れている。また街灯や木々なども例外ではなく、交差点近くの建物にも一筋の斬り跡がある。

鋭利な切り口、元々そういった形ではないかと思うほど綺麗に斬られている。


この交差点から見て少し奥にあるかろうじて立っている電柱、そこの千切れた電線から火花がこぼれる。一瞬辺りを照らし、一つの影が映し出される。

交差点の中央、そこに一人の男の姿がある。身長は百八十は超えているだろう、ガッチリした体型で、闇夜に溶け込むような黒を基調とした服装だ。

そしてその男の手には一本の剣が握られている。

長さは三メートル超、男の身長を明らかに超えている。だが男はまるでプラスチック製のバットを扱うように軽々しく振って遊ぶ。

色は銀、諸刃であり、刃の幅はそれほど細くはないのだがその規格外の長さをしている刀身のためすらっとした印象を与えている。また柄や柄頭、鍔には細かな装飾が施されている。

また男が剣を遊ぶように軽く振るう。月明かりを反射させ輝くたび、装飾がそして剣の輪郭が揺れ、ぼやけ、儚い残像を宙に残す。

よく見れば装飾は揺らぎながらその模様を変えていく。まるで形が定まっていないようだ。振られ動かされるだけで形が変わってしまう、とても弱い物のように見えてしまう。

だがそんな評価はこの剣に相応しくない。なぜならあの轟音、並びに信号や電柱などが切り倒されたのはこの剣によってなのだから。

男は剣の刃先を天に向け、形が変わっていく様子を眺めながら


「さすが極東だな、“デュランダル”の概念がまったく定まらねぇ。この辺の国はキリスト教が国教じゃねぇからしょうがないっちゃあしょうがないんだけどな」


一人呟き、刃先を地面へ降ろす。


「信仰心が少ないっていうよりは色々な考え……教理が混ざり合ってるって感じだな、似た形した他の宗教の剣のイメージも流れ込んできてるしなぁ」


この国、土地、そして持っている剣の評価を述べる男。

それからおもむろに、下を向く剣を軽く起こし、空を薙ぎ払う。

空気を裂く音がし、風が起こる。

残像が宙に映る。

黄緑色の残滓が月明かりによって輝き、剣の軌道を鮮やかに飾る。

ゆらゆらと揺れながら漂い、そして夜の闇へ溶け込んでいく。

剣の方を見れば残滓と同じ色に輝いている。

またも形が揺れ、ぼやけ、さらには黄緑色の剣の欠片が零れる。

それを見、黒で身を固める男は苦笑。


「気ぃ緩めたらすぐ脆くなっちまう……やっぱ信仰心の絶対量は少ないか。

まあ相手も状況は同じなんだし、それに刀身の長さはいつもより長くなってる……こんなでけぇ片手剣ってのも変だが、リーチが広いってのは悪くねぇな」


いつもと違う剣の形、大きさに対し面白味を覚える。


突然、男が目を見開き、ゆっくりと口元に歪んだ笑みをつくる。

来たな、と一言。

今まで向いていた方から見て右へ視線を、続けて体を向ける。

男は三メートルの片手剣を楽しげに振り、右手から左手へ左手から右手へ投げて遊ぶ。

その視線の先には何かが動いているのが見て取れる。目を凝らさなければ判らない程の遠くに。

だが男はそれらが何なのか解っている様子だ。はしゃいでいる子どものようにソワソワしながらその場で待っている。早く来いと言わんばかりに。

遠くで蠢いていたように見えたものが段々と近づいて来る。人だ、複数の人影が見える。人間では出せないはずのスピード、一歩で十数メートルを移動する跳躍のような走りでこちらへ向かって来ている。

男は見開いた目、歪んだ笑みを変えず一周その場で回転する。周りを確認したのだ。


「ざっと五、六くらいか……囮役としてはもう少し集めたいねぇ。一発派手にやりますかっ!」


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