思わぬ遭遇
「なんか…新鮮だよな…」
久々にクエストに来た俺はそう呟いた。というか、一回前のクエストはドラゴン退治になったし、その前のもドラゴン退治だったということを考えると、二度ある事は三度あるということわざを思い出しそ…いや、何も考えるな、俺。
「は?新鮮ってなにがよ?」
そんな新鮮な雰囲気を味わってる俺の隣で冷ややかな目線をくれるのは俺と同じ貴族で勇者の天音さん。
それに俺は答える。
「いや、まぁ、な」
「もったいぶらなくてもいいじゃない。気になるでしょ」
「いや、もったいぶる内容じゃないしな…」
「気になるって言ってるの、分かららないかしら?」
「いや、実はかくかくしかじかで…」
半ばというか、完全に強制的にクエスト経験が三回(まともなのは最初に優香と行った一回)ということを告げると天音さんの目は更に冷たくなった。
「あんた、Aランクなのにまともなクエスト経験ないの?そんなんでよくAランクになれたわね?賄賂?」
いや、没落してた如月家にそんなコネあるわけな…とか突っ込もうとした時にある人物の顔が頭に浮かんだ。赤い髪の俺の友人。王族のリュウ。
「そ、そんなの没落してた如月にあるわけ、な、ないじゃん?」
若干声が震えつつそう返すのが精一杯だった。
が、俺の言葉は最もなものなので、それもそうね、と言ってこの話はしまいとなった。
…良かったぜ、気づかれなくって。と、ホッとしている俺はクエストについての話をすることを決めた。
「つーか、俺の話なんてどうでもいいだろ?あと、俺、クエストについて全く聞いてないんだが?」
そう、俺は何も聞いていないのだ。いや、これだと語弊があるな。俺が聞いてないのではなく、俺が聞かされていないのだ。
「あら?言わなかったかしら?」
「お前が付き合えっていうから、まあいいが、って答えたけど結局なんなのか聞かされてねぇんだよ」
「簡単よ、ゴブリン討伐」
「ふーん、ゴブリン討伐…ん?」
え、今こいつなんて言いやがった?
「あなた得意でしょ?」
「いや、得意じゃねーよ!」
ゴブリン討伐だと!?もうやだよ、あんなの相手にすんの!臭いし疲れるし!!という感じのことを遠回しに言うと
「うっさいわね、そもそも十二師族なんだから腹括りなさい」
「ぐ…ぐ…ぅ…」
と、返されなさった。…それを言われたら弱い。俺たち十二師族は、世界の平和を守っているからこそ現在の地位があるのだから。親父あたりはどうでもいいとか言いそうだが、それだけで済むなら話は簡単だ。
もし、如月家が本当に没落すればどうなるか?如月家の治める土地が攻め込まれたり反乱分子が暴れ回ったりして俺の生まれたり育った街はぐちゃぐちゃになってしまうのだ。
ちなみに、反乱分子とは、王族制度を反対する賊の集団である。俺が思うにあいつらは上に誰かが立つってのが気に入らないんだろうな。その組織の指針としても『リーダーはいない、皆同胞』らしいしな。
まぁ、何はともあれ家の話を持ち込まれた以上、途中退場という手段は使えない。あと、使えるとすれば俺がいかに楽をしてしまうか…だが
と、チラリとそこで天音さんを盗み見る。長い金髪を結び、それを左右に揺らし(つまりツインテール。腰まで届くほど長い)、胸も揺らしつつ進む彼女。スラリと伸びる手足は頬ずりしたいほどに…おっと、語り過ぎたか。
まぁ、とにかく美少女の彼女にばかり無理をさせて俺が楽するというのはたとえ天が許しても俺が許さない。万が一負傷しようものなら、ファンに殺される。
…どうやら、逃避の手段は全て失われたようだ。
「何見てんのよ?」
「あぁ、すまん見惚れてた」
「なっ!?何言ってんのよ、あんたは!?」
少しふざけてみただけなのにキレられた。…ぐすん
顔を赤らめて睨んでくる天音さんに少し…ほんの少し可愛いと思わされた…そういうことにしてとこう。
「…あれ?」
そのまま暫く歩いてると天音さんが立ち止まる。目の前の光景をみて呆然としているようだった。
そこで俺も天音さんの視線を辿ってみたが、なんの変哲もない丘が広がるだけだった。
「どうした?なんかあったか?」
「ない…のよ」
その時、ポツリと天音さんの口から言葉が出てきた。だが、少し小さくて俺には聞こえなかったので、もう一度聞いてみた。
「すまん、聞こえなかった。もう一回言ってくれ」
「ないのよ…」
「ないって何が?自宅の庭の植物にでも水あげ忘れたか?」
彼女の鬼気迫る表情に嫌な予感が起こり、俺はついつい茶化した。
のだが、天音さんはそれに答えることなく今みていた方向に走って行った。
だが、その沈黙こそが返答と思えた俺は、世界とまではいかなくとも俺たちの側に相当の危機が迫っていると考えて彼女を追った。
しばらく走り、天音さんが呆然と立ち尽くす場所へとたどり着く。そこは想像をはるかに超える光景が広がっていた。
「…んだ、こりゃあ…」
そこにはただただ巨大なクレーターが広がっていた。
「…ここにはね、街とか村とかはないけれども森林があったのよ」
「森林…だって?」
そんな馬鹿な…と、俺は頭を振る。遠目にみても立っている木なんて微塵にも見えないし、間近なクレーターのところでさえ土などに木が巻き込まれたりした形跡はない。
だが、そんなのはどうでもいい。重要なのは一体…
「一体…何物がこんなことを…」
「…俺はこんなの出来るの古龍以外には知らねぇよ…」
古龍種。ドラゴンの中でも別枠として扱われる種。
通常、ドラゴンの中で最も強いのは?という問いがあるとしよう。
その場合、戦闘経験のある者ならレッドドラゴンと答えるだろう。レッドドラゴンのドラゴンブレスや、その爪の力、凶暴性全てにおいて他のドラゴンを上回るのだ。
なら、最強の生物とは?と聞かれるとしよう。その場合の回答は、古龍。
なぜ古龍がドラゴン種に入らないかと言えば、それは彼らの特殊性における。
彼らは言葉を解することが出来るのだ。その上で、知恵も高く、魔法をも行使する。さらに、そこに爪やドラゴンブレスも加わるためドラゴンとは別枠となるのだ。
俺も冗談ぽく言おうとしたが、顔が引きつりそれは叶わなかった。
その時突然、俺たちを巨大な影が覆った。
「…冗談じゃないわよ。あんなの聴いてないわ」
「ハハ…流石にこれは…出来過ぎだろ」
果たして俺らを影で覆った、飛行生物は
「もし、聞こう。汝らはヒト、であるな?」
まごうことなき古龍種だった。
来週はNEW GAME LIFEの方を更新します。よろしくお願いします。




