一日だけの休息
「ふわぁ…あぁ…ねみぃ…」
リュウの釈然としない試合が終わった次の日。この日は選手たちにとって休息の日である。
一回戦が終わるごとに、選手達を平等に休ませるために一日休ませる。
選手たちが試合を盛り上げてくれるようにとの配慮だ。
まぁ、無論選手たちがのんびりのんびり休むわけではないが。
とある選手は体を鍛えたり、とある選手は一日を寝て過ごしたり、とある選手はリラックスしていたり、とある選手は他の選手を研究したりと様々に過ごす。
そして、この一日を利用して優香とリュウはそれぞれエステと本探しに出かけてしまった。丸一日いないらしい。
そういうわけで暇な俺は、なんかいいクエストないものかとギルドに来ていた。
ギルドには、回復薬やら毒薬といった消耗品から、剣や盾といった簡単な武器まである。
そして、一番のポイントは人々のクエストがここに集まると言う点だ。つまり、勇者にとっては仕事の宝庫というわけだ。
その依頼は多岐にわたり、敵性生物の排除や、ゴブリン討伐、普通に荷物運びなどなど。
ただし、共通点があるとすればそれは、強い生物やらなんやらが、立ちふさがるがために勇者にしかできない仕事ばかりというわけだ。その分報酬も高め。
何をしなくても勇者にはランクにあった給料がもらえるが、正直それだけじゃあ足りないためこうして出稼ぎしないと、いけないわけだ。
まぁ、とはいえ俺の場合は、ギ・ガー討伐や姫華との番人狩りの報酬のおかげで財布は大変潤っているのだが、貯金は多いに越したことはないとしてやって来た。
だが、俺はここで純然たる事実に気づいた。
そう、自分でクエスト受けたことがないという事実に!
いや、正確に言うと、ギルドで自分でクエストを受けるのが初めてなのだ。
厳島校長のクエストは自分で受けたものだがギルドを通してないしな。
最初の優香と行ったあのドラゴンが出てきた例のクエストは優香が受けてたものだしな。
そんなこんなでクエスト掲示板という、クエストの情報とかが載ってる掲示板を眺めていると
「あら?あんた何してんの?優香ちゃんは?」
後ろから声をかけられた。振り向くとそこにいたのは、そう。巷で有名な『美少女勇者』と肩を並べるもう一人の美少女『霜の女王』こと霜月天音。
万人に分け隔てなく優しく、誰にでも好かれる性格である。金髪の髪も綺麗だしな。
だが、どうもそれは仮面だったらしく俺の前だと普通の女の子のようになってしまうらしい。いや、正確に言うと、十二師族所縁の者には、かな?
今日はどうやらお忍び(?)で来てるらしくサングラスを着用している。しかしながら、今日の服は背中が大胆に開いているタイプのあれで、しかもホットパンツ着用というこのセクシーさは一体どうしたものか。本当に忍ぶ気あんのか?
「優香ならいねぇよ、エステに行くとかなんとか言ってたぜ」
まぁ、別に嫌いってわけでもないので(外見的には好みだ)無難にそう返した。
…む?そういえばよく見れば優香の方が胸のサイズ上かな?ワンランクくらい。
とか余計なことを考えていると半眼で睨まれた。胸を手で隠すようにする仕草付きで。ただし、言わせてもらえばそれは逆に大きい胸を強調しているから余計目を引く結果になるんだよな…。
「いつまで胸見てんのよ。…ったく、それじゃあ昨日の『紅水の貴公子』はどこよ?」
尚も胸を抑えるものだからその大きい胸が…ゲフンゲフン。
「あいつはあいつで調べ物があるってさ」
それを聞いてふーんと言った後に数秒後、
「あんたさては暇人?」
と言ってきた。
「言うな、俺も考えまいとしていたところだったんだよ…。つか、そう言うお前はどうなんだよ?暇なんじゃねぇのか?」
その時、若干『ギクリッ』という擬音が聞こえたような気がした。
「わ、私?い、いや別に暇じゃないわよ…?」
若干気まずげな空気が流れ出した。まずい、まずいぞ、これは。
「あのさっ」
「あのねっ」
……まさか、言葉も重なるとは。更に気まずい。
「あー、そっちから」
「そっちからいいわよ」
………また、なのか?
「じゃあ、俺から」
「じゃあ、私から…」
開いた口が塞がらない、というよりも閉じた口が開かないかな?ええい、こうなったら!
「じゃんけんで決めるぞ!さーいしょはグー!じゃんっけん、パー!」
「パー!」
引き分けだとぉ!?
「あいこでチョキ!」
「チョキ!」
…え、ぇぇぇぇえ!?
と、そんな感じにあいこの手が十数回繰り返されたあと。
「あいこで…パー!」
「グー!…うっ、負けたわ…」
「ふははは、俺のパーは最強、最強なのだ!」
…おっと、じゃんけんで勝ち誇ってる場合じゃない。
「…あれ?なんでじゃんけんしてたんだっけ?」
そう、問題はなんでじゃんけんしてたかだ。じゃんけんの勝ち負けはこの際どうでもいい。
「…じゃあ、私から話すわ」
…あ、そうかどっちから要件話すかって話だったな。
ふぁさっ、とその金髪をかきあげたあと、じゃんけんに負けたなんて嘘のような毅然とした態度でこう言った。
「あなた、付き合いなさい」
一瞬で世界が止まる感覚とともに俺は思った。
あれ?なんか前にもあった気がすると。
カイト「…まぁ、さすがに結末まで一緒、なんてこたぁないよな?」
天音「つべこべ言わずにさっさときなさい」
カイト「ウィっす」
と、いうわけで今回はこちらの更新です。来週の更新は『NEW LIFE GAME』の方です。よろしくお願いします!




