勇者の魔法
「さて、魔法の使い方は分かりますよね?」
「あ、あぁ。もちろん。呪文を唱えることだけだしな…」
少し俺は狼狽していた。先ほど見た雷がかなり衝撃的だったからだ。それと、集中して呪文を唱えないとかなり酷い目にあうから。雷なんて浴びた日にはもう生存なんて絶望的だ。一応言っておくと俺は雷が苦手とかいうわけではない。念のため断っておく。
「では、まずは火をおこしてください」
手のひらを上に向けて俺は呪文を唱えた。
「ファイア」
ぽっと俺の手のひらの上に小さな火が灯った。
「はい、よくできました」
「これくらい初級だよ…」
その初級にビクビクしていたのは俺だが。
「次はですね、炎をお願いします」
「了解。デリート」
まずは火を消した。そして、今度も手のひらを上に向けて、
「フレイム」
ボォォォっと次は炎が生まれた。勢いも火よりすごいが、何より…熱い。暫く炎を観察する姫川さん。このままだと消せない。…やばい、本当に熱い。
「では、消してください」
「で、デリート」
熱さに気を取られて一瞬反応が遅れたが炎は普通に消えた。はふぅ、熱かった。
「ふむふむ、炎の色が良かったですよ、完全燃焼です。不完全燃焼だと力を扱えていない証拠ですからね」
「へぇ、そういうのがあるんだ」
「はい。水なら純水、風なら心地よい風、土なら栄養素の高い土を出せたなら完璧ですよ」
「なるほど、それで相手の力量を見極めることができると」
と、俺が言うと姫川さんは少し困った顔で
「あまり、人と戦う機会なんてあってはならないんですけどね…」
と言った。そうは言うが、実のところそういう機会は結構あるのだ。勇者の仕事内容の一つには、はぐれの逮捕と言ったものがある。
世間に背いたり、悪事に手を染めた勇者を逮捕しに行くのだが、大方奴らは力を使いたいが為に道を踏み外した奴ばかりなので大抵武力を以っての鎮圧となるわけだ。
つまり、この力量を見極めることができる方法は対人戦に役に立つというわけだ。
「そういえば、無唱魔法というものがあります」
「無唱魔法?」
これまた初めて聞く単語だ。
「無唱魔法とは、文字通り唱えない魔法です。先ほど如月さんは魔法を使うなら、呪文を唱えるだけと言いましたが実は唱えなくても使えるのです」
「へ、へぇ…そうなんだ」
「ですが、これは危険なことなんですよ」
「え?そうなの?」
「はい。唱えないので、魔法の発動は心の中のイメージに依る物なのですが、まず確たるイメージを持っていないと魔法の制御がうまく行きませんし、違う魔法が発動してしまう可能性もあります。その結果命を落とした勇者や騎士は数え切れないほどいるそうです」
「なるほど」
勉強する時に、声を出して読むとよく覚えるというのと同じ理屈かな。
「ですから、無唱魔法は基本的にA級ランクしか存在を教えられていません」
ほうほう、なるほど。って…
「あれ?俺に教えてよかったの?」
「あ…」
固まる姫川さん。この反応は間違いなく駄目な反応だな。
「え〜っと、駄目ですので口外はしないでくださいね?」
「もし、言ったら?」
興味本位で聞いてみると、
「私が困ります」
うん、つまり俺も困るわけだ。絶対に言わないことにしよう。
「えーと、話を続けるとこれは危険なことなのでA級ランクの勇者でもなかなか使う人はいません」
「…そういえば、なぜその話を?」
「私はできるからです」
えっへんと胸を張る姫川さん。その大きな大きなお胸はお揺れになり、俺の心臓をかなり痛烈に刺激する。全く、俺の心臓はいつ強靭になるのだろうか。
一月四日更新!




