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<ガイア>列伝  作者: 樹実源峰
勇者大会編
59/69

優香の試合

「お待たせしました!四回戦目、四試合目の開幕です!まずは、『美少女勇者ビューティ・ブレイバー』さんの入場です!」


大喝采を浴びながら優香は会場入りを果たした。その美しい笑みに心臓を撃ち抜かれた男たちは歓声を上げ、女性は感嘆のため息を漏らした。


海斗の時を上回る会場の熱気に思わず、自分に向けられたものでないものを自覚していながら海斗はたじろいだ。


「やっぱ、違うよな…」


海斗はそう、声を漏らして会場を見渡す。当然のように満員状態。どころか、通路にまで立っている人たちもいるくらいだ。


しかも、海斗の場合は一部に海斗に敵意の視線を向けているものがいたのに、この場にはいないのだった。


「なんつーか、すげえな…」


先ほどから感心しっぱなしだなぁと思いながらようやく海斗は試合会場へ目を向けた。


リュウに聞いた話だと、去年の試合は魔法だけで完封したらしい。どのような魔法が飛び出してくるか楽しみだと思った。




「続いて、その相手を紹介します!その一撃は天の裁きとも言われる女勇者!『天上の裁き手(ゴッド・ジャッジ)』!」


その名前が紹介された時には優香は既に気分を入れ替えていた。先ほどまでの優香が嘘のように明るい顔つきは一変、戦いに赴く戦士のように険しかった。…会場の人々にとってはそれすらも美しく、ため息をまねいたが。


先ほどは『天音以外には負ける気はしない』と言い切った優香だったが、だからと言って気を抜くわけではない。


むしろ、相手は今大会の優勝候補とすら目される『天上の裁き手』。気を抜くに越したことはない。


とは言うものの、観客から見ると彼女の姿はまるで、天音以外は眼中に無いとばかりの格好だった。


彼女が身に纏っていたものは黒を基調としたドレス。あたかもこれから舞踏会に赴こうといった服である。


どう見ても、近接には不利だ。だが、だからこそ一部の観客だけは理解できた。そう、優香は魔法だけで試合を制するつもりなのだと。


だが、Cランクの時ならまだしも、Aランクである。たとえ、相手が近接格闘を主要とする『天上の裁き手』だとしても、遠距離攻撃への対抗策くらい練ってある。


だから、優香を除くその場の人間は全て、どちらが勝つのか分からなかった。


そして、定位置についた裁き手は、空中に生じた波紋に手を突き入れ中から大鎚を取り出した。取り出した後に重力に従って下ろすと、ドォン、と物凄い音がして大鎚は地面に落下するように地面についた。


この武器が、裁き手の武器である『天の大鎚』。大の男でも五人がかりでようやく持ち上げられる代物である。当然彼女は魔法による補助により振り回している。


「では、今から『美少女勇者』と『天上の裁き手』との試合を始めます!」


そうアナウンスがかかった時に、裁き手は腰を低くした。すぐに近づき一撃を加える気なのだろう。


「3!」


だが、優香は動かなかった。


「2!」


ただ、手のひらを相手に見せるように真っ直ぐ相手に向かって手を伸ばしたのだった。


「1!」


そして、この時観客たちは初めて気付いた。彼女はなんの得物も持ってないことに。そう、小刀すらも!


「開始!」


ドンッ、と軽い爆発音がして一気に裁き手が風に乗ったように前進する。狙いはもちろん優香だった。


だが、優香は手を出したまま何もしない。…と思った瞬間


「…!エクスプロージョン!」


裁き手が突如横へ、爆発の推進力を使ってまでして跳んだ。


その瞬間、優香の目の前一メートルから先ほどまで裁き手がいたあたりまでの位置に槍が降ってきた。


あくまで直線上にいたために横に避けたため、裁き手は助かった。


落ちてきた槍たちはすぐに形状を失い水へと戻った。


「出ましたっ!魔法の早撃ち!しかも水の槍です!」


話州さんがやや興奮気味に話す中、会場は盛り上がったりせず静かに見守る。


そして、攻撃をよけた裁き手は動きを止めることなく直進し、遂に優香の目の前に至った。


「ハァァァァァァッ!」


そして、裁き手はその大鎚を振るう。天の一撃とも称される一撃は優香の細身に吸い込まれるように…。誰もが気絶どころか勇者生命自体が危ないんじゃないかと思ったその時、その大鎚は優香の体をすり抜けた。


「えっ!?」


裁き手は驚きの声を上げつつ大鎚を思いっきり振ったせいで死に体になったまま優香を探す。


果たして優香は、目の前にいた。いや、正確には違う。優香の姿が目の前にあった。よく見るとその優香は陽炎のように揺らめいていて…


「…陽炎…だって?」


裁き手はそう口にした瞬間に、その裁き手を中心とする半径5mの魔法陣が形成された。


「マナ・コール・アイス・キャッスル!」


後ろより声が聞こえた、と裁き手が知覚した瞬間には足が凍りつつあった。振り払おうするのも普通なら可能。5mなどという距離は裁き手にとっては一歩にも等しい。だが、動けない。まだ、大鎚を振るった余韻が体を支配しているからだ。


「こうなったら…」


裁き手は大鎚を持った手を離す。そして、


「エクスプロージョン!」


飛んで行った大鎚を爆発により飛んでいく方向を変更する。すなわち、後ろにいるはずの優香に向かって大鎚は飛んでった。


だが、幸か不幸か、真後ろを狙ったために彼女には見えなかったのだった。


後ろにいる優香の姿もまた、陽炎のように揺らめいていることに。


そのまま大鎚は、優香の姿をした陽炎をすり抜けて観客席へ。


観客たちからは悲鳴が上がり我先にとばかりに皆が動こうとするために渋滞が起こった。


「マナ・コール・メテオ!」


凛としたその声が会場に響くと同時に、空から炎を纏った石が落ちてきた。


それはそのまま飛んでいる大鎚を直撃し、大鎚を地面に抑え付ける。


そして、その時にはすでに魔法陣上に、綺麗な氷城が形成されていて、その最上部に優香はいた。


そのドレスとあいまって、優香はさながら氷の女王のように城に君臨していた。


「試合終了です!勝者は、『美少女勇者』!」


アナウンスのあとに一瞬間が空き、その後に膨大な数の拍手と歓声が会場を埋め尽くした。

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