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<ガイア>列伝  作者: 樹実源峰
勇者大会編
56/69

観客席にて

勇者大会は、自分の試合が終わったら終わり…ではない(・・・・)


それは、観客席の様子を見れば分かるだろう。


「うっわ…勇者多いな…」


「当たり前じゃない?」


試合が終わって観客席へ来た海斗を迎えたのはリュウとたくさんの観客たちだった。ただし、観客のみなさんは冷たい目線で…まるで神の仇を見るがごとき目線で海斗を見ていた。


こいつらはひょっとして…


「ひょっとしなくても、優香さんのファンだろうね」


俺の気持ちを代弁するかのようにリュウは答えた。うん、まあよくあることだ。


「そういえば、優香は?」


と、俺が優香の所在を聞くと


「あぁ、それなら…」


と言いつつリュウが隣に座っている…こんなに暑いのにフードまでかぶってる人を見た。


「え?まさか、え?」


リュウの言葉の意味することが少し受け入れ難かったために俺は戸惑った。


俺の知ってる限り、優香はこういう顔を隠すようなタイプは苦手だったはずだ。昔に誘拐された時のことでも関係があるんだろうか?


「…とりあえず、俺はどこに座れば?」


と聞くと、リュウが席を一個横にずれて(荷物で場所取りをしていたようだ。みんなはしないように!)、指差した場所は優香とリュウの間だった。…つまり、真ん中。


特に反論もせず座る。…というか、なんだこの状況は?なんで、一平民の俺が、王子と王女に挟まれる形になるんだよ⁇


「君は平民じゃなくて、貴族の中の貴族の最上級貴族である十二師族の如月海斗じゃないか」


と、隣からリュウが言ってくるがだからと言ってなんだ?貴族が王族に挟まれるってなんだよ?


とか、思ってると優香から(フードかぶったままの)袖を掴まれた。


そっちに目を向けると、ちょうどフードのしたから覗いていた優香と目があった。…なんだ、なんか照れ臭いぞ?


「まぁ、ほどほどにな、カイト。イチャイチャしてて周りに気付かれたら終わりだぞ?」


と、隣からリュウが囃し立てるように言うが…ががががが、ちょっと待て!?


「い、イチャイチャ!?誰ガッ…ふがっ」


大声でツッコミを入れようとしたら優香が後ろから俺の口を押さえていた。


「き、気づかれますよ!」


小声で優香が注意して来た。


ぐ…それは困るんだがそれ以上に困る状況なのだが…優香が口を抑えるために体を結構近づけてくるため…その、なんだ…ふよんとする塊が俺の背中に…。


「カイト、どうしたんだい?まるで背中に優香の胸でも当てられてるような顔をして?」


そのとき、リュウが何食わぬ顔でわざとらしく尋ねると慌てて優香が体を離した…あぁ、柔らかき胸よ…。


「さぁ!二回戦の開幕です!今回は『破砕の騎士(クラッシュ・ナイト)』と『白の槍(ホワイト・ランサー)』の試合です!」


司会の声が会場全体に轟いた。それを聞いてすぐに俺は目を会場へ向けた。


どうゆうふうに初撃を決めるか、それを見るために。


「では、試合開始!」


だが、試合が始まった瞬間、バババンという、音が聞こえたと思ったら『白の槍』が膝をついていた。その首に剣を突きつける『破砕の騎士』。もはや、勝利は明確だった。


「…え、えーと、勝者『破砕の騎士』!」


あまりにも早すぎて思わず審判すら判定を出し忘れるほどだった。


たぶん、会場にはほとんど今の動きを終えたものはいないだろう。横を見ると、リュウは頷いてみせた…真剣な表情で。驚いたのはその横の優香さんも頷いていたことだ。


二人ともわかっていたのか…。


何があったのか、というと


まず、一発目の爆発音は騎士の後ろで起きた爆発のものだった。その爆発により、騎士は一瞬で『白の槍』へ肉迫する。


続いて二回目の爆発を槍の内側に発生させる。…通常なら、抗魔法術式が掘られているはずなのに、あっさりと魔法が発動し槍が砕けた。


そして、三回目の爆発の推進力で剣を当てて、ダメージを与える。


あまりの威力に食らった本人は恐らく意識を失ったのだろう。どさり、と膝をつく、そして騎士が剣を突きつける。


と、まぁこんな感じであった。


「『破砕の騎士』の得意技はゴブリンたちの体内を爆破して一撃で葬ること。…だけど、それじゃ殺さないというルールに反するからどうなるかと思ったら…まさか、ここまで素早く連撃できたとはね」


「やっぱ、招待枠で参加しているだけはあるのか…」


実は、三年前にこの勇者は新聞の一面を飾ったことがある。


圧倒的な破壊で。


場所は『闇の領域』と人間の国の境界線のところ。


夥しい血がながれ、恐ろしい数のクレーターが開けられたようだが、それをすべて彼一人がやってのけたのだった。


だから、俺とリュウとかは力で押し切るタイプかと思っていたのだが


「まさか、ここまで技巧派にもなれるなんてね…驚いたよ」


「しかも、力でも押し切れそうだな。技巧派で力任せとか洒落にならねぇ」


その試合を見たところで俺とリュウと優香は席を立った。


「じゃあ、次は優香の試合だね」


リュウは激励を飛ばしつつ、女性勇者の会場へ向かう。


「一戦前から会場待機か…それはきついよな…」


俺はそう言いながら会場へ向かう。


「まぁ、あれだ。パートナー同士優勝しようじゃないか」


そう締めくくって優香を待合室へ見送る。


「おいおい、カイト。優勝は無理だろ?」


だが、優香を送った後にリュウは挑発するように言った。


「は?なんで?」


俺はその言葉をそのまま受け取り、つまり裏に隠されている意図を読まずに受け取り、尋ね返した。だが、


「僕が優勝するからさ」


と、リュウが言ったことで分かった。つまり、俺はこいつを倒さなきゃいけないのだ。今まで数える程しか勝ったことのないこいつに。


「いや、ならますます優勝だな。お前を今度こそ倒して俺が優勝する」


だから敢えてここで宣戦布告をした。次こそは勝つという意思を込めて。

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