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<ガイア>列伝  作者: 樹実源峰
勇者大会編
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勇者大会第一戦目

「ぬぐぉっ!?」


六月十六日、勇者大会二日目…つまり、俺の試合の日、俺は会場の熱気にいきなり気圧された。


会場に入る前から熱気がすごいんだもの…。昨日の新聞には


『正体不明だった「真紅の殺戮者ヴァーミリオン・スローター」の試合は一日目!』


と大大的に広告してあったからかなあ…。ちなみに、<ガイア>全土で人気の『毎日ニュース』という新聞には、優香目線の俺をかなりこき下ろした感じの記事が書かれていて、『毎日ニュース』と同じくらいの知名度を誇る『明日へ』という名の新聞には、逆にまだ見ぬ俺への想像の記事が書かれていた。


後者によると俺は大剣を扱う2mを優に越える大男なのだそうだ。…んなわけないだろ…。


さて…。そろそろ試合開始の時刻だ。集中しようか。


そう思って俺が選手控え室で待っていると、突如外から爆音が鳴り響いた。…いや、爆音と言っても襲撃されたわけではない。試合の準備ができたという合図の爆竹だった。


「さぁ、皆さん!始まりました、勇者大会!記念すべき一戦目になんと、話題沸騰中のあの勇者が戦います!二ヶ月前の『天職授与式』にて、勇者になったばかりであるにも関わらず、ゴブリンの部隊を壊滅させ、番人も一体倒してAランクへとあっという間に駆け上がった新人にして強者!『真紅の殺戮者ヴァーミリオン・スローター』!登場です!」


わぁぁぁぁぁぁ!!と湧き上がる歓声に気圧されつつ、ついに会場に入る。すると、なんと一戦目にしては珍しく全席埋まっていた。


通常、全席埋まるのは実力者ばかりが残る後半からであり、前半のしかも一戦目からこんなに混むのはとても珍しいのだ。その事実に若干誇らしげになりつつも、真剣に観客席を見回す。


…憎々しげな視線を感じ、その方向に目を向けると、黒服で統一した集団がいた。…恐らく、優香の熱烈過ぎて笑えないファン達だろう。恐らく勇者以外の人間が混じっているんだろうが…物凄い殺気である。


「続きまして、その『真紅の殺戮者ヴァーミリオン・スローター』と相対するのは、前年度ベスト4まで勝ち抜いた折り紙付きの実力者、『瞬光の隼(ファスト・ファルコン)』!」


瞬間、会場の熱気が静まった。ただ、一人の男の殺気によって。


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」


物騒な言葉を繰り返しての入場だった。愛も変わらずダボダボなジャージに身を包んだ実力者の勇者。…たぶん、今回は前回見たいに油断されてないだろうから本気でかからないとやばいだろう。


「えーと、瞬光の隼(ファスト・ファルコン)さん、殺害は禁止なんですけど…聞いてますかね?…まぁ、いいや。ごほん…」


よくねーよ、司会者…。俺はそう心の中でツッコミを入れた。


「さぁ、いよいよ試合開始です!たとえ恨みつらみあれど、戦いによってすべてを決めるのが勇者。その勝負を見守りましょう。構えて!」


構えてと、言われた瞬間俺とやつは思い思いの格好をした。


俺は、どうやっても対応できるようにだらんと剣をさげて、奴はいきなり突っ込む気なのか剣を真っ直ぐこちらへ向けている。…本気で殺る気か、あいつ?


「3」


カウントが始まると同時に思考をリセット。目の前の戦いだけに集中する。


「2」


相手に動きはない。…つまり、刃は向けたまま。


「1」


不意に嫌な予感がした。奴の殺気が急に強まったのだった。


「開始!」


その合図を聞いた次の瞬間、俺は奴の姿を見ながら右に跳んだ。そして、俺の脇を吹き抜ける一陣の風。同時に感じる頬への痛み……恐らくかすり傷。


「薔薇の剣 二の型 虎狩り!」


即座に後ろを振り向き、袈裟斬りを放つ俺。そこに、奴がいたが、それは相手の剣によって防がれた。


「おぉぉぉっと!いきなり高度な戦闘が展開されています!一瞬で距離を詰めるどころか後ろに回り込んだ『瞬光の隼(ファスト・ファルコン)』!を『真紅の殺戮者ヴァーミリオン・スローター』は見切っていたぁ!」


いやいや、それは買いかぶりすぎだ。実際俺は動きが見えなかった。ただ、風が後ろへ吹いていたからそれに賭けただけだったが…どうやら賭けには勝ったようだ。


しかし、俺とて認識を改めなければならない。今の奴のスピードは番人討伐を邪魔して来てくれた時とは全く違うくらいに速い。以前とは、別人と考えた方が良さそうだ。


「薔薇の剣 三の型 獅子狩り!」


蹴りを入れて相手を話した直後に俺は下から切り上げる。しかし、それも剣によって防がれてしまった。…前よりも剣が速い。


「ファイアーネット」


剣を止められた時に俺の後ろに炎の網が精製された。


「マナ・コール、ウォーター・キャノン!」


俺はそれに向かって水の大砲で一撃を放つ…どうやら強固にねったようであまり穴が空かなかった。


「ウォーター・スキン!」

続けて俺は全身に水を纏う。そして、そのまま炎の網へ飛び込む。思えば、網に飛び込むなんてどうかしてる。予想通り炎の網が絡もうとしてくるが、その時にもうひとつ魔法を使った。


右手に握る骸斬丸に力を込める。…すると、柄に埋め込んであった紫の宝玉が光を放ち始めた。


「スプラッシュ!」


マナ・コールなしの魔法の詠唱、それは普通なら、マナ・コールありの魔法よりも威力が低いのだが…


「っ!?」


炎の網が破れて、俺は間合いを取ることに成功した。


見れば、奴は驚いたような顔をしている。


「一体どういうことだ!?マナ・コールの詠唱なしなのに!?…まさか、その剣は魔剣か!?」


おっと…やっぱりというかなんというか、こいつは優秀なようだ。魔剣の存在自体あまり知られたものではない。そもそも、一口に魔剣と言えどその能力は千差万別である。


伸びる魔剣だったり、光線を放つ魔剣なんてものもあるらしい。


それだから、魔剣であるかどうかなんて本人にしか分からない。…まぁ、まれに魔剣であることを自覚しない所有者もいるわけだが。


「ほんじゃあ、次はこっちから行くぜ」


再び骸斬丸に力を込める。


ここからが本番だ。

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