勇者大会の開幕
勇者大会…それは、年に一度、勇者が己の武を見せつける大会であり、豪華景品も出る勇者たちに大人気の大会である。
ルールは、
・試合形式はトーナメント
・殺傷能力A以上の魔法は使えない
・相手を殺すことは禁止
・試合相手以外に故意に危害を加えないこと
・以上に該当しなければ自由
というのが要約したところだ。
尚、この大会はかなり経済を動かすものである。人気選手のブロマイドが飛ぶように売れるし、会場近くでは多数の屋台が出てきたりする。勇者だけでなく色々な人々にとっても無視できないものなのだ。
閑話休題。
試合形式はトーナメント。トーナメントには32人分枠がある(各ランク毎に32人であり、参加者は合計96名である)。うち、16名は招待枠と言って話題性のある勇者などを大会側が招待する枠である。海斗や龍牙、優香はここに当たる。
そして、残りの16名はエントリー枠。参加希望者が申し込みをして抽選で選ばれる枠だ。抽選であるため公平である。
そして、この32名が初めて顔を合わせるのが大会の一日目である。それまでは誰が参加するのか知らない者も多い。ただ、話題性のある勇者が選ばれるという点においては招待枠は予想しやすくもある。
そして、この日…6月15日、大会一日目には試合は行われない。
あるのは、開会式、及びトーナメントの抽選である。
トーナメントの抽選は、32人の勇者が抽選によっていつ戦うのかということを決めるものである。
無論初戦の相手によって作戦を立てることは大切であるし、他の選手の試合を見て、自分と戦う相手の技術を見極めることも大切だ。
だから、一日目はある意味決勝戦より大事な意味合いを持つ。どれだけ自身の実力を隠し、どれだけ相手の実力を測れるか、という点において。
…と、声高々に言えれば格好がつくのだが、あいにく、というか今日の俺はいささか万全というわけではない。
なぜなら…今の俺の姿はさながら…
「まったく、今の君はさながら放浪者のようじゃないか」
と、会場の外で偶然再会したリュウは言っていた。
全身は泥にまみれ、服も汚れボロボロとなっている俺を見れば多分皆そう言うんだろう。
なんでこんな姿になったのかはおいおい話そうかな。だが、それは今じゃない。
まぁ、ある意味こんなボロっちい奴がかの『真紅の殺戮者』であるということを見抜く慧眼の持ち主はそうそういないだろうから、実力を隠すという意味では成功しているのだが。
「レディース、ェアーンド、ジェントルメェン!」
ざわざわしていた会場にその声は響き渡った。その声が響いたあとに、会場はシーンと静まり返った。
声の主に皆注目する。声の主がいたのはステージの上だった。そこにいたのは赤いスーツを着た派手派手な男だった。
「こんにちは、皆さん!私は今大会で司会を務めさせていただく、職業『司会者』の朝霧話洲です!本日は勇者大会に参加頂きありがとうございます!」
「ん…?どっかで見たことあるような?」
俺がボソッと呟くと横からリュウが答える。
「なに言ってるのさ。あの人は数々のイベントや大会で司会をする人じゃないか。冬のマラソン大会も彼が司会をやってるよ」
そ、そうか…。そんな有名な人なのか。
「勇者大会一日目と言えば抽選会!皆さん準備はよろしいですかー?」
「「「おぉ〜!!」」」
「それではAランクのエントリーNo.1の方から順々にお願いします!」
「カイト、エントリーNoは?」
「俺は16番…リュウは?」
「6番だね…なら、また後で会おうか」
「とりあえず初戦で当たらないことを祈るぜ」
そう言って俺とリュウは列に並ぶために別れた。
ふむ…しかし、32人しかいないのだから並ぶ必要はないと思うんだが、それでも並ぶ。それが何故かこの場のしきたり…というか暗黙のルールというやつだ。
そうして、暫く待とうとすると不意に後ろの方から殺意を察知した。
チラリと振り返るとそこには先日、俺が番人を倒した時に結構邪魔してくれた『瞬光の隼』がいた。五人くらい後ろの方だ。俺が16番なのであいつはおそらくエントリー枠だろう。
ちなみに、抽選の順番は1〜16が招待枠で17〜32がエントリー枠に振り分けられている。つまり、俺の前にいるのは全員招待枠の人間で後ろはエントリー枠だ。
ちなみに、招待枠だエントリー枠だと言ってるがこの二者に戦力などの差はほとんどない。あるのは世間的な知名度くらいだろう。ちなみに、エントリー枠の勇者がこの大会で優勝し名声を得た結果次の年は招待枠として参加したという事例は過去にも結構ある。
名を上げると良いことは勇者大会に参加しやすいということと、クエストが指名で入りやすいということだ。つまり、仕事を探しに行かずとも仕事が入って来ることだな。
「エントリーNo.16番の方〜」
っと、ボーッとしていたら俺の出番が来たらしい。
「はい!」
返事を返してステージに上がる。目の前には手を入れる穴を開けてある箱だけが置いてあった。闇魔法を使い、中を覗き込めないようにしている。
ゆっくりと手を伸ばして箱の中に入れる……よし、急に噛みつかれるとかそういうのはないようだ。すぐに紙が重なり合う感触を得てその中から一枚を選び取る。
「番号は…っと」
なんと、一番だった。トーナメント第一戦目。番号を確認してそれに名前を書き、係員に渡す。
そして、並ぶ列の近くにいたリュウの方に歩いていく。
「何番だった?」
リュウの質問にすぐ答えを返す。
「一番。ついてないよなあ…お前は?」
「僕は三十二番…最後だよ。ある意味最初の方が羨ましいよ」
「そうか?どうしてだ?」
「スパッと戦って終われるだろう?」
「なるほどな」
確かに最初ならモヤモヤ悩む時間が少なくて済みそうだ。
「さて!ようやく全ての人間がくじを引き終わりました!トーナメントは一番と二番、三番と四番…という風に連番同士が戦いますのでよろしくお願いします!それでは、いよいよトーナメント表の発表です!読み上げます!
Aランクのトーナメント表は…
一番『真紅の殺戮者』!
二番『瞬光の隼』!
三番『破砕の騎士』!
四番『白き槍』!
五番『悪魔の下僕』!
六番『青髪の熊』!
七番『哀愁漂う中年』!
八番『鯖剣士』!
九番『穴モグラ』!
十番『獅子王』!
十一番『黒の魔法使い』!
十二番『紳士の赤』!
十三番『毛玉遊び』!
十四番『陸歩く魚』!
十五番『断罪魔人』!
十六番『人魂の覇者』!
十七番『倦怠期の親父』!
十八番『進撃の虎』!
十九番『切り裂き怪人』!
二十番『連弾の狩人』!
二十一番『貫く細剣』!
二十二番『永遠の子守唄』!
二十三番『死神の落とし子』!
二十四番『岩砕き』!
二十五番『突進する牛』!
二十六番『運命選者』!
二十七番『七回転んで八回立たず』!
二十八番『鈍足な大砲』!
二十九番『燃焼鬼』!
三十番『紙の手』!
三十一番『暗黒の仮面』!
三十二番『紅水の貴公子』!
続いてBランク!
一番……」
その後の言葉は聞いていなかった。しかし、寄りにもよって一人目が…『瞬光の隼』とは、因縁を感じずにはいられない俺だった。
どうも、作者です。いよいよ勇者大会なるイベントが開催されました!初日は対戦発表しかしないもようです!尚、勇者名はほとんど勢いで考えたものがほとんどなので後々出てくる奴がいるかは作者には分かりません。
ではではでは、来週もよろしくお願いします!




