邪魔だよ!
「さぁ、痺れなさい!」
姫華のその言葉が合図だったようだ。突如、番人の頭上から凄く大きい雷が一個落ちてきた。
だが、それを浴びても鎧には傷一つつかなかった。
「流石に、その鎧にはダメージが通らないようね」
そう言って攻撃を休めた姫華さんに再び俊敏な動きで剣を振り下ろす番人。しかし、
「だから、効かないわよ」
その剣は今度は、姫華と番人の中間あたりで阻まれた。
そして、俺は行動を開始。
今度は俺は普通にジャンプする。だが、助走を付けたとは言えたかが人間のジャンプだ。そこまでは飛ばない。しかし、
「エクスプロージョン!」
直後に足元に爆発を発生させる。その勢いをもって、再び番人の首元へ躍り出て、
「喰らッ……!?」
大量に予備として買ってあった安い剣を穴へ突き入れようとすると、横から人影が飛んできた。
「風翔剣!!!!」
しかも、何故か俺に切っ先を向けているので攻撃しようとした剣で防御。
刀身に入る突き、俺の安物の剣はあっさり砕け散った。が、その突きは勢いを弱めることもなく俺の心臓に突き当たる寸前の宙空でとまった。
「くぅっ…!!」
俺の判断が間に合う時間でもなかったし、目の前の悔しそうな顔をしてるこいつを見るとどうやら意図的に止めたわけではないらしい。残ったのは、やはり…
「危なかったわね、如月君。一瞬で結界を展開できるようになるか、もしくは体の上に薄くてもいいから防御膜でも常時張れるようになりなさい」
姫華だ。ただ、あまりにも言ってることがめちゃくちゃである。なんだよ、結界を一瞬で展開って…。そもそも結界を展開できるのは魔法に熟練した奴くらいなもので普通はできねぇよ!
そんな思いを知ってか知らずか姫華は、
「あら、如月君は結界くらい展開できるのでしょう?」
と言ってきた。まぁ、できるけれども…時間かかんだよ!
「なに姫と親しげに話しているんだ、この愚か者っ!」
声の方を振り向く。そこには俺に剣を向けた人物がいた。正確には、ただの剣でなく、レイピアだったが。髪は茶色でオールバック、で上下赤のジャージを来ていた。なんつーか、あってないような…。
「誰だ、お前…」
俺は緊張感を保ちながら誰何を投げかける。すると、その男はフン、と鼻を鳴らして
「この私の名も知らぬか俗物め。私は『瞬光の隼』だ!弥生姫華様の近衛兵団第一番隊隊長だ!」
『瞬光の隼』、攻撃の速さ、移動速度の高さ、魔法の発動の速さ、全ての速さが一流という勇者らしい。名前は前に聞いたことがあって、さぞかし歴戦の雰囲気を醸しだす男なのだろうと思えば、まさかこんなのとは。
そういえば…こいつは近衛兵とか言ってたな。
「姫華…まさか、私兵を持ってるのか、十二師族なのに」
「そんなわけないでしょう。そこの男が勝手に名乗ってるだけよ」
姫華は言うまでもなく十二師族の直系である。そんなやつが軍隊でも率いれば、一国の軍隊に匹敵すること請け合いだ。だから、十二師族は無用な圧力を三国に与えないようにそういうものは作っていないのだ。
だから、俺はそこを疑ったのだがそれはどうやらこの男の妄想の類だったようだ。
「そんなっ!姫よ、我らのことをそこまで慮ってくださるとは…!」
相も変わらず姫華の近衛兵ということを否定しようとしない男に向かって、姫華は露骨に顔をしかめた。
その顔はあまり変わったようには見えないが、普段からあまり表情が変わらない彼女だ。その変化が分かるというのはやはりそれだけ付き合いが深いからだろう。
ただし、この男は恋は盲目とやらと同じように不都合なことを無視する傾向にあるのかもしれなかった。
ちなみに、こんな無駄話を繰り広げている間も俺とこの男と姫華は、番人の剣を避けたり避けたりしたり、姫華のみ魔法で反撃している。
「ダメね。こいつの剣は破壊できないわ」
しばらくすると姫華はそう言い放った。
「そうなると、あの剣にふれないようにしてあいつの首の穴に剣を投げ入れるしかないな」
「注意は私が引きつける」
「頼んだ!」
そういって飛び上がろうとした時にまたもや一つの影が妨げる!
「ちょっと、待てい!先ほどから姫と親しげに話しおって、この下郎め!その罪万死に値するわっ!」
そして、剣を構える『瞬光の隼』。
だが、こちらが構え終わる前に切りかかって来た。
「のわっ!?」
相手からの袈裟斬りを咄嗟にガードする。…成功した、と思った次の瞬間には二の太刀が足を狙う。
避けきれずに少し切られるが思ったほど衝撃はなかった。…なるほど、一撃一撃が軽いからこそ攻撃が早いのか。
だが、そのことさえ分かれば対処は簡単だ。
再び袈裟斬りを繰り出してくる相手に自分から飛び込む。
「何っ!?」
俺の体に切られた感触が痛みはほとんどない。すり傷程度だ。
そして、俺は相手に密着し相手の後ろから風をぶつけ、逃げられないようにする。同時に左手の掌底を腹に喰らわせ…更に
「エクスプロージョン!」
左の掌を始点として爆発を発生させる。
「ぐぼぁっ!?」
至近距離からの爆発と掌底を喰らいしかも背後からは風が吹き付け逃げない中挟み撃ちにされそのまま気絶する。
「邪魔だよ!」
こっちに倒れて来そうになったため、今度は峰で横に打ち払う。…なんか若干ビリビリって音したのは恐らく姫華だろう。こわいな。
気絶してなんの抵抗も出来ない相手はそのまま銃弾のように飛んでいく。
そして、俺は
「エクスプロージョン!」
再び足に爆風をあて、そらへ跳ぶ。爆風といえど、もちろん殺傷性はないよう、ただの強い風程度に調整してある。目的地は番人の首の穴!
だが、俺の声に反応したのか、番人がこちらを向く。同時に俺のいる方向へ、水平切りをしてきた。
姫華が雷を再び放つがそれに番人は気を取られることなく俺の方向を向いたまま。
俺はその、兜の中の眼を睨もうとしたが、無理だった。その時やっと、気づいたが兜の中はただの空洞、闇が広がっているだけだった。
だが、万事が窮したわけではない。
番人の、俺の体を再起不能なまでに破壊するであろう水平切りが迫る。だが、俺は追突直前に、
「エクスプロージョン!」
再度爆風を発生させる。発動位置は俺の真下。爆風の煽りを受けて、俺は空へ。
「エクスプロージョン!」
今度は上に行った後、俺の背中の後ろで爆風を発生させる。背中に浴びた爆風が推進力となり、真っ直ぐと番人の顔めがけて飛んでいく。
兜の鍬形を掴み、肩へと落ち、そして、首の後ろにある穴へ剣を突き刺す。
剣が硬いものに当たったようなガリッという音が聞こえた時に、番人は動きを止めた。
そして、頭から少しずつ塵になって散って行った。…って、あれ?嘘だろ?
当然、肩の上にいた俺は急に塵と化した番人の肩が受け止めてくれるはずもなく塵に塗れながら落ちていった。
あまりのことに呆然としながら。
だが、その後に俺を迎えたのは、なんとも言えない浮遊感。
またしても、姫華に助けられたのだった。
どうも作者です。最近は小春日和、だなんて言葉も似合わねークソアチー天候ですが、皆様いかがでしょう?私は毎日花粉に鼻をヤられ、ズッコンバ…ゴホンゴホン、くしゃみや目の痛みが襲う散々な毎日を送っています、去年は特になかったのを思い出すと、私もついに世間の言う花粉症とやらにかかってしまったようで、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いと言いますか、植物根絶を願う寸前まで至っております。ええ、ええ。
まぁ、そんな話は置いといて。
今回の話で防衛準備編はお開きになります。というか、海斗君達の時間軸で三ヶ月も準備編というのは些かおかしいかと思いますして、こんかいの終焉と。
まぁ、終焉といえど、この物語が終わるわけじゃないんですがね。
次話からは、勇者大会編。海斗くんや、龍牙くん。それに、優香ちゃんなどのメインキャラから、実質名前しか出てないような十ニ師族の代表たちも出てきます。…うん、いくらキャラを考えなきゃいけないのかね。
では、来週もまた、よろしくお願いします!




