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<ガイア>列伝  作者: 樹実源峰
防衛準備編
47/69

テストの結果

「…ふむ、まぁ上出来ね」


その姫華の呟きはしかしながら俺たちの耳に入ることはなかった。なぜなら…


「グル…ルォォォォォ!!」


「チッ、まだ生きてやがる!?」


「…やっぱり、卵を産んだばかりのドラゴンはしぶといな…」


トドメを刺したと思われたドラゴンはまだ死んではいなかったのだ。その口は大きく大きく開けられている。


瀕死の状態だからできる渾身のファイアブレスを放とうとしていた。ドラゴンが倒れた時に気を抜いたその面々は全く応じることができず迎えるのは死…と思われた時、


パチンという指を鳴らしたような音とともに、そのドラゴンの頭が爆散した。


俺たちは思わず後ろを見ると、果たしてその攻撃の主は姫華だった。


「今回は相手が悪かったけれども、まぁ普通にそこらに転がってるようなドラゴンならある程度は倒せるみたいね。とりあえず、合格かしら」


この時、俺たちの心は一つになっていた。…幾ら何でも出鱈目過ぎるだろ、と。


散々化け物呼ばわりされていた姫華だったが、流石に弱ってるとはいえドラゴンの頭を一撃で粉砕するところまで強いとは思わなかった。


だから、今しがた見たものが全く信じられないという面持ちでまじまじと姫華を見ていると、その本人は


「じゃあ、洞窟の探索は終わったから帰りましょうか」


と言ってまた指をパチンとやる。


その姫華の後ろのドラゴンもまた頭がない状態で倒れる。…一秒ほど前まではまだピンピンであったのにもかかわらず。


それを当たり前にこなす姫華をまるで化け物のように感じながら俺たち四人は帰途についた。


そして、街に帰ったあとに無事クエストは終了とされ、報酬を受け取ったあと、俺、リュウ、優香の三人はやっと解放された。


「……あー、ドラゴン倒すのキツかったぞ…」


市庁から出て、海斗はそう呟いた。というか、愚痴った。


「うん、本当だね。空もすっかり暗くなってるよ」


リュウが俺の言葉に賛同し、見上げると空はもうすっかり暗くなっていた。


「今日は、帰るのはやめた方がいいですね」


優香もすっかり眠たいといった顔で応じる。そのくらいの緊張感と死への恐怖を感じながら戦ったのだ。


「…まったく、今日はすっきり寝られそうな気がするぜ」


「じゃあ、今日も昨日と同じく宿を借りることにしようか。今から、他の宿を探すのは大変だからね」


「早くベッドに入って寝たいです…」


そんな戦いに疲れた彼らは昨日と同じ宿に泊まる決心をしたのだが…


「ごめんねぇ、個室はもう空いてないけど家族用の部屋なら空いてるわよ?」


そう言って宿で迎えたのはこの道30年になるとかいう『麻溝亭』の看板女将の浅原百合さん。若々しい外見が特徴で、控えめに見ても20年しか見えない…。


ちなみに、そのことを龍牙が言った時は『やぁねえ、煽てても何も出ないわよ』と照れつつ…この店の名物である焼き鳥を十串サービスでくれた。


「家族用の部屋?どういう部屋の構成なんですか?」


単純に気になっただけなのか、優香がそう質問をする。


「四人用の部屋で、ベッドが四つあるだけよ。まぁ、部屋の広さは個室よりは大きいわね」


なるほど。まぁ、四つもベッドがあるくせに個室より狭かったら酷いよな。


「あ、じゃあそれで三人泊まります」


「「は!?」」


思わず声を揃えてしまった俺とリュウはそのことを互いに咎める余裕もなく、優香の方を見るが時すでに遅しで、女将は優香に鍵を渡してしまった……。


更に時間は過ぎて夜。優香が街の中央にある温泉へ入りに行ってる間に俺はリュウと向かい合っていた。


「おい、リュウ」


「なんだい海斗?」


「昼間のアレについて教えて欲しい」


「魔剣解放のことかい?」


「そうだ」


俺は更なる力を得るために魔剣解放を極めようと思っていた。


今日の戦いはたまたま巡り合わせが良くて勝ったものだと俺は思っている。


リュウがもし、リュウでなければドラゴンの堅い鱗は剥がせずに攻撃を当てることはできなかっただろうし、優香が優香でなければあのファイアブレスを無視できる戦いはできなかった。


だが、俺に関して言えば何もない。俺の代わりが誰であったとしてもある程度の腕前の奴なら構わなかっただろう。


そういった諸々の思いから俺は切実に力を求めた。


そして、それに対したリュウの答えはこうだった。


「駄目だ」


それは俺の予想を遥かに裏切ったもので一瞬思考が止まった。


「なんで?」


そう聞き返すのがやっとだった。


「まず、第一に剣との対話…これはもう一人の自分と戦うこと。さらに、第二にその準備は師匠しかできないからだよ」


「なんだ…そういうことかよ…。師匠しかできないのか…」


「師匠には勇者になってから会ってないんだろ?」


「あれは、確か最後に三月に特訓して以来だから約二ヶ月ってとこかな」


「久々に会って来なよ、師匠も会いたがってると思うよ?」


「あぁ、そうだな…」


ここで魔剣の話は一旦終わった。そして無駄話が始まったところで優香が帰ってきたので、男二人仲良く(と、優香に言われた)温泉へと出かけた。

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